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既に大器

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第二章

「あ奴をな」
「そうでしょうか」
「いつもおかしな身なりで街で奇矯な振る舞いをされ」
「身分の低い者達と交わる」
「そうした方でも」
「お主達は暫し見るのだ」
 こうも言うのだった。
「よいな、さすればわかるであろう」
「吉法師様を」
「そうすべきですか」
「我等は」
「今は」
「そうじゃ、よくな」
 こう言ってだった。
 信秀は家臣達を下がらせた、そのうえで密かに吉法師を見ると。
 密かに唸った、それで彼に直接聞きもした。
「熱田によく行っておるな」
「あの地での商い、特に港のそれが富になっておりますし」
 吉法師は父に答えた。
「天下のことだけでなく明や南蛮の話もです」
「聞けるからか」
「堺の者も来ておりまする」
 熱田にはというのだ。
「そして博多からも」
「商人が来ておるからか」
「よく行って」
 そうしてというのだ。
「そしてです」
「商いでの富を見てか」
「そしてです」
 そのうえでというのだ。
「天下や他の国の話をです」
「聞いておるな」
「そうしております、そして鉄砲も」 
 この武器もというのだ。
「仕入れて」
「そうしてか」
「戦に使おうと考えています」
「鉄砲もか」
「それも多く」
「あの港から仕入れるか」
「出来れば先は鉄砲鍛冶を迎え入れ」
 そうしてというのだ。
「鉄砲を造らせようとです」
「考えておるか」
「はい、そして」
 そのうえでというのだ。
「実は槍もです」
「長くしておるな」
「長ければそれだけ先に届くので」
 敵にというのだ。
「その様にしようと考えています」
「短い方が扱いやすくないか」
「それは慣れればいいこと、百姓の家の次男三男を兵にし」
 そうしてというのだ。
「あの者達に畑仕事をさせず」
「鍛錬をさせてか」
「使わせます、またその者達を刈り入れ時以外も戦に出します」
「刈り入れ時に戦をするか」
「はい」
 そうするというのだ。
「これより」
「そして田畑のことかか」
「長男達に戦のことを気にせずさせます」
「そうしていくか」
「これからは」
「わかった、それとであるが」
 信秀はさらに問うた。 
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