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我が子を抱いて

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第三章

「私は何があっても守り抜きます」
「しかしです」 
 城即ち街の顔役の一人が強い声で語る梁紅玉に問うた。
「貴女は今は」
「子を産んだばかりで、ですね」 
 梁紅玉もわかっていてこう返した。
「その子を今も抱いています」
「それで、です」
 彼女が左手に抱いている赤子も見つつ話した。
「果たして」
「安心するのです、むしろ我が子がいるからこそ」
 梁紅玉は毅然として答えた。
「そうであればこそです」
「それで、ですか」
「はい、貴方達と城だけでなく我が子を守ることも思い」 
 そうしてというのだ。
「そのうえで、です」
「戦えるからですか」
「尚よしです、ではです」
「これよりですね」
「私は何があっても戦い抜きます」 
 剣を抜き告げた、そうしてだった。
 梁紅玉は城壁に移りそこで兵達を指揮し叱咤激励し自ら戦った、賊達は数を頼りに攻てくるがその彼等にだった。
 冷静に対し弓矢を放ち煮えたぎった油を浴びせてだった。
 退けていった、そして夜にはだった。
 我が子を背負ってだ、兵達に告げた。
「これより門を開けてです」
「夜襲ですか」
「それを仕掛けるのですか」
「そうするのですか」
「敵は昼に攻めて疲れていてです」
 そうしていてというのだ。
「休んでいますね」
「はい、そうしています」
「城壁の上から見てもそうです」
「そうしています」
「そこをです」 
 疲れて休んでいる即ち寝ている時をというのだ。
「衝くのです」
「そうしますか」
「これより」
「そうされるのですね」
「そして打撃を与えます」
 その様にするというのだ。
「よいですね」
「はい、ですが」
 士官の一人がここでどうかという顔で言った。
「奥方様は今は」
「子を産んだばかりで、ですね」
「そのお子を背負われていますが」
「この位の子には親がいつも寄り添わなければなりません」
 親そして母の顔も見せた。
「だからこそです」
「背負われていますね」
「そうです、そしてです」
 そのうえでというのだ。
「戦います」
「そうですか、そうされますか」
「昼と同じです、そして」
「奥方様自ら剣を手にされ」
「敵を攻めます、よいですね」
「そうされるのですね」
「そして敵に一撃を与えます」 
 昼の戦で疲れている彼等にというのだ、こう言ってだった。
 梁紅玉は自ら先頭に立ち我が子を背負って馬に乗り剣を手にしてだった。
 寝ている敵に切り込んだ、そうして寝込みを襲われ驚いている彼等をだった。
 遮二無二に攻めて自らも剣で斬ってだった。
 強い一撃を浴びせた、それはこの夜だけでなく。
 敵が城を攻めても梁紅玉の見事な采配と兵の高い士気に退けられて疲れていると常に門を開いてうって出て直接攻めた、それを繰り返すとだった。
 数を頼りにしていた賊達も遂に音を上げた。
「これは駄目だ」
「攻め落とせないぞ」
「幾ら何でも強過ぎる」
「敵の兵は少ないが強い」
「その将のあの女もだ」
 梁紅玉のことも話した。 
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