| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

ドリトル先生とめでたい幽霊

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第十一幕その十二

「そして大阪から離れたら」
「織田作さんとしてはですね」
「あかんわ、そやから東京で死んだ時どないなるって思った」 
 その街でお亡くなりになった時はというのです。
「大阪で死にたかったのに。けどな」
「大阪に戻してもらって」
「そこで葬式してもらってお墓も建ててもらってな」
「よかったですね」
「ほっとしたわ」
 その時はというのです。
「ほんまよかったわ」
「そして今はですね」
「ここにおってな」
 大阪にというのです。
「楽しくやってる、もう絶対にや」
「大阪から離れないですね」
「そや、何があっても私は大阪におって」
「大阪の人と一緒に暮らされますね」
「そうするで」
 こう言うのでした。
「ほんま他の場所は考えられんわ」
「そうですね、僕も織田作さんはです」
「大阪のモンって思うな」
「はい」
 先生は笑顔で答えました。
「まことに」
「そこが太宰さんや安吾さんとちゃうねん」
「大阪に全てがありますね」
「そやからここにずっとおってな」
「書いてこられましたね」
「そや、それにな」
 織田作さんはさらに言いました。
「今はかみさんも一緒やし」
「奥さんもですか」
「そや、死に別れた時は悲しかったけど」
 それでもというのです。
「今はな」
「ご一緒で」
「楽しくやってるで、えらい騒ぎになって結婚出来たし」
「そうらしいですね」
「あの時はな」
「大変でしたね」
「かみさん喫茶店の女中さんやったけどな」
 奥さんのことを温かい目でお話しました。
「ハイデルベルグ、京都の」
「クラシックの音楽が流れるお店でしたね」
「えらいハイカラな店でそこにおってな」
「借金でお店のご主人の、でしたね」
「それやったが友達が手伝ってくれて」
 そうしてというのです。
「梯子使って二階から連れ出してな」
「夜にですね」
「それでその日から一緒に暮らして」
 そうしてというのです。
「結婚してん」
「そうでしたね」
「執筆してる間お茶出したり漢字調べてくれて」
「今もですね」
「一緒に暮らしてるわ、かみさんのこともっと話してええか」
「はい、お願いします」
「そう言ってくれるんやったらな」
 織田作さんは先生の返事にさらに笑顔になりました、そうしてです。
 お話をはじめました、コーヒーと紅茶の香りがその場を包むその中で。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧