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どんどんよくなる犬

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第一章

                どんどんよくなる犬
 ふわりを見てだ、今の飼い主もっと言えば家族である洋介は明るい笑顔になってそのうえで両親に話した。
「愛嬌があるよな」
「そうだな」
「何時見てもね」
「それに優しくて大人しくてな」
 家の中でふわりと遊びながら話した。
「のどかでな」
「しかも人懐っこくてな」
「本当にいい娘ね」
「こんないい娘いないぞ」
 洋介はこうまで言った。
「他にな」
「俺もそう思う」 
 父の文太が優しい笑顔で言ってきた。
「ふわりみたいないい娘は他にいないぞ」
「そうだよな」
「それもどんどんよくなっているな」
 父はこうも言った。
「そうだな」
「そうだな」 
 息子も父の言葉に頷いた。
「言われてみれば」
「そうだな」
「うちに来た時もいい娘だったけれどな」
「今はだな」
「あの時よりもな」
 さらにというのだ。
「いい娘だよな」
「そうなっていっているな」
「注意したらな」
 それでというのだ。
「すぐにやらなくなってな」
「こんないい娘でもやっぱりおいたはするからね」
 母の百合子も言ってきた。
「だからね」
「ああ、たまにだけれどな」
「その都度注意しているけれど」
「それで注意したらな」
 それでというのだ。
「すぐにな」
「注意したことしなくなってね」
「その分よくなっていってるよな」
「どんどんね」
 まさにと言うのだった。
「この娘はね」
「そうだよな」
「そうした意味でもいい娘だ」
 父はまた言った。
「ふわりはな」
「そうだよな」
「人間も犬も完璧じゃなくてな」
 そうしてというのだ。
「完成されないけれどそれだけにな」
「よくなっていくんだな」 
 洋介は父の話を聞いて言った。
「そうなんだな」
「そうだ、完璧でも完全でもないからな」
 それだけにというのだ。
「よくなっていくんだ」
「それで終わりじゃないんだな」
「だからふわりもな」
「どんどんよくなっていってるんだな」
「そうだ」
「ワンワン」 
 父は自分に顔を向けて鳴いたふわりを見て話した、見れば今も黒い瞳はつぶらで白目が見えない程に大きい。小さな尻尾をぴこぴこと振っている。 
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