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ドリトル先生とめでたい幽霊

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第十幕その七

「なれる方が凄かったんだ」
「それで志賀直哉は兵隊さんになったんだ」
「徴兵に合格して」
「体格がよくて健康で」
「しかも品行方正だったんだね」
「すぐに耳が悪いからって除隊させられたけれどね」
 それでもというのです。
「その時の写真が結構残ってるよ」
「身分の高い武士の家の人で学習院みたいなところも出ていて」
「兵隊さんにもなっている」
「それで東京で育った」
「本当に織田作さんと違うね」
「実際にお家は裕福だったしね」 
 先生は志賀直哉のことをさらにお話していきます。
「強さが文学に出ていると言われてるよ」
「じゃあ全然違うね」
「織田作さんとはね」
「織田作さんの作品って強い人出ないね、聞いてると」
「悪いこともしたり彷徨ったり」
「そうしているから」
「完全に個性が違ったから」 
 だからだというのです。
「本質的にね」
「合わなかったんだね」
「織田作さんと志賀直哉は」
「そうだったんだね」
「そのこともあったし織田作さんも既存の文学に限界があると見ていて」 
 そうしてというのです。
「それでね」
「織田作さんも既存の文学を批判して」
「それで志賀直哉も批判して」
「そのうえで書いていたんだね」
「そうだよ、坂口安吾は生来の反発心やアウトロー的なところが強くて」 
 この人はそうで、というのです。
「太宰は芥川が背景にあったけれどね」
「確か太宰も凄いお金持ちの家だよね」
「青森の津軽の方のね」
「そうだったよね」
「この人も」
「そう、そのことも大きいし文学ではね」
 先生は皆にまさにとお話しました。
「お師匠さんにあたる井伏鱒二のこともあったけれど」
「芥川なんだ」
「その人の影響が大きいんだ」
「何といっても」
「太宰にとっては絶対の人だったんだ」
 芥川という人はというのです。
「それでそのことからもね」
「志賀直哉を批判したんだ」
「芥川の文学があったから」
「太宰の中に」
「太宰は芥川を終生敬愛していてね」
 そうしてというのです。
「批判をしたことはないよ」
「そこまでの存在だったんだね」
「太宰にとって芥川は」
「そこが織田作さんと違う」
「そうなのね」
「そうだよ、織田作さんはね」
 道頓堀を見つつ言うのでした。
「太宰とはまた違う」
「そうした無頼だね」
「同じ無頼派の作家でも」
「また違うんだね」
「そうだよ、そしてね」
 それでというのです。
「織田作さんはここも歩いていたんだね」
「この道頓堀も」
「自由軒やいずも屋から夫婦善哉に行くにはここを通るから」
「だからだね」
「ここを通っていたのよね」
「織田作さんも」
「かつてね、そのことを思いながら」
 そうしてというのです。 
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