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笑顔の妹は店頭に

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第三章

「客商売に最適だからね」
「それで、ですか」
「妹さんを採用されて」
「それでお店の前に立ってもらってですね」
「笑顔をお店の前で出してもらって」
「お客さんを引き寄せてもらってるんですね」
「そういうことよ、客商売はまず笑顔」
 これが第一だというのだ。
「そうでしょ」
「それは言うまでもないですね」
「それこそ」
「もう言うまでもないですね」
「本当に」
「そう、だからね」
 それ故にというのだ。
「これからも立ってもらうわ」
「お店の前に」
「そうしてもらいますね」
「それでお客さんの前に来てもらう」
「そうしますね」
「メイクやファッション、接客は教えていくわ」
 これからというのだ。
「少なくとも礼儀正しいし真面目だからね」
「勉強していきますね」
「そうしたことも」
「だからですね」
「問題ないですね」
「それなら身に着けてくれるから」
 そうしたことはというのだ。
「遅かれ早かれね、けれどね」
「何よりも大事なのは笑顔」
「妹さんはそれが素晴らしい」
「だから採用して」
「これからもですね」
「うちで働いてもらうわ」
 妹を見つつ話す、見ればだった。
 また客が晶紀の笑顔に引き寄せられ店に入った、玲奈達はその客にすぐに歩み寄って笑顔でどの服がいいかを尋ねた、そうして商品を買ってもらった。
 そうしているうちに晶紀はメイクやファッション、接客、それに店の他の仕事のスキルを玲奈に教えられて身に着けた。だが。
 玲奈はその晶紀に家で言うのだった。
「あんたの武器は何と言ってもよ」
「笑顔なの」
「そう、その笑顔はずっとね」
 それこそというのだ。
「持っていなさいね」
「そうしていったらいいのね」
「笑顔は武器よ」
 風呂上がりに妹に話した、妹は牛乳を飲んでいるが彼女はワインを飲んでいる。ビールよりも健康特に美容に気を使ってこの酒にしているのだ。
「客商売ではね」
「特になのね」
「そう、だからね」
「私の笑顔はなの」
「ずっと持っていなさい、私もあんたのその笑顔を知っているから」
 グラスでワイン、ロゼのそれをクラッカーとチーズを肴に飲みながら話した。
「誘って採用したしね」
「笑顔ってそんなにいいのね」
「そうよ、だからいいわね」
「これからもなのね」
「その笑顔を持っていてね、しかしそんなこと言ってる間に」
 今の妹を見てこうも言った。
「あんたも奇麗になってきたわね」
「そう?」
「大人になってきたわね」
 見ればそうなっていた、もう高校生から大人の雰囲気が宿ってきている。
「私達のお店は大人のファッションだからね」
「大人の雰囲気を持つべき?」
「そうよ、だからね」
 それ故にというのだ。
「いい感じよ、笑顔を忘れないで」
「大人の雰囲気はなのね」
「持っていってね」
「そうするわね」
 晶紀は玲奈の言葉に素直に頷いて微笑んだ、そのにこりとしたそのうえで引き寄せられる日光の様な笑顔を見てだった。
 玲奈はこの笑顔だと頷いた、そうしてその笑顔を出す妹と働き続けるのだった。


笑顔の妹は店頭に   完


                 2021・12・29 
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