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厳しい家から

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第三章

 肉と野菜をバランスよくそれも細かく調理している、盛り付けも見事だ。
「いつも凝ってるけれど」
「このこともですか」
「疲れている時とかはね」
 そうした時はというのだ。
「別にね」
「宜しいのですか」
「インスタントや冷凍食品でも、それに」
 貴也は楓風にさらに話した。
「お酒のおつまみも」
「それもですか」
「いつも飲む時に作ってくれるけれど」
「サラミを切ったりした位ですが」
「それ位僕がするから」
「お酒のおつまみは」
「うん、ピーナッツでも買うし」
 そうもしてというのだ。
「簡単にするから、絶対に作らないといけないとかは」
「ないですか」
「何でもかんでもしなければならないわね」
 こうしたことはというのだ。
「本当に一切ね」
「言われないですか」
「だからそんな堅苦しくなくていいよ」
「そうですか、では私がしたいなら」
「そうしていいよ」
 貴也は再び笑顔で答えた。
「あくまで君の自由にね」
「していいですか」
「うん、そうしたいならね」
「わかりました」
 楓風は貴也の言葉に頷いた、そしてだった。
 夫婦で暮らしていった、しかし。
 楓風はしっかりしたままだった、五時起きで真面目に掃除も料理もしてだった。 
 趣味も毎日していた、だが実家に帰った問いに両親に笑顔で語った。
「私は今とても自由です」
「そうか、自由か」
「そうなのね」
「何をしてもいい様な」
 そうしたというのだ。
「旦那様にしてもらっています」
「では幸せだな」
 父は娘に問うた、居間で親娘だが畏まって向かい合っている。
「そうなのだな」
「はい」 
 穏やかで気品があるが確かな笑顔での返事だった。
「まことに」
「そうか、自由でか」
「幸せです」
「貴也さんはそこまでいい方なのね」
 今度は母が問うた。
「そうなのね」
「私が何をしましても」
 家の中でというのだ。
「何も言われず叱られることも」
「ないのね」
「そうなのです」
「そうした方なのね」
「それどころかいつも褒めて下さいます」
 そうしてくれるというのだ。
「私が素晴らしい、出来た人だと」
「そうなのね」
「普通にしているだけでも」
 楓風にとってはだ。
「それでもです」
「そうなのね」
「はい」 
 こう言うのだった。
「ですから大変幸せにです」
「過ごしているのね」
「左様です」
「それは何よりだ、ではこれからもな」
 夫は妻にあらためて話した。 
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