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忍女の恋

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第六章

「だから居酒屋に私を案内してくれて」
「お酒飲んで」
「それで意を決してなのね」
「お酒の勢い借りてだったのね」
「そうみたい。私断わらないのに」 
 あい実はしみじみとした声で言った。
「絶対に」
「断わるはずないよね」
「店長さんが好きなのに」
「その筈ないわよね」
「だからお酒の力借りなくても」 
 それでもというのだ。
「告白してくれたら」
「もうよね」
「それでよね」
「頷いてたわよね」
「そうだったわよね」
「そうだったわ」
 実際にというのだ。
「本当にね、けれどそう言ったら私も」
「ずっとだったわね」
「もう怖くて怖くてね」
「告白出来なかったわね」
「そう思うとね」
「同じね。けれど告白してもらったから」
 だからだというのだ。
「もうね」
「最高の気分ね」
「あい実ちゃんにとっては」
「今それがお顔に出てるわ」
「とても嬉しそうよ」
「昨日あまりにも嬉しくて」
 そのあまり泣いてしまってというのだ。
「それで昨日ずっと寝られなかったけれど」
「そうよね」
「瞼泣いてから腫れてしかも如何にも寝不足のお顔だけれど」
「それでも満面の笑顔よ」
「にこにこしてね」
「幸せの絶頂にいる感じね」
「最高の気分よ」
 あい実は自分の気持ちをこの言葉で表現した。
「これ以上はないまでに」
「そうよね」
「それじゃあね」
「これからもね」
「幸せにね」
「今でも最高に幸せだけれど」
 友人達に顔を赤くさせて応えた。
「最高のさらにね」
「いくのね」
「幸せのさらに上に」
「そうするのね」
「ええ、そうなるわ」
 こう言うのだった、だが。
 ここでだ、あい実はこうも言った。
「けれど私もお酒飲んで言えるんだったら」
「そうすればよかった」
「そうよね」
「言われてみればね」
「ええ、後知恵になるけれど」
 それでもというのだ。
「そうすればよかったわね」
「まあそれはね」
「後出しね」
「だからね」
「それは言っても仕方ないことよ」
「そうね、もうそれは言っても仕方ないわね」
 あい実はそれはと頷いた、そうして友人達とさらに話していった。はじまった交際について。それは明るさに満ちたものだった。


忍女の恋   完


                  2021・4・12 
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