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歪んだ世界の中で

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第十七話 冬の入り口その七

「けれどここはこうなんだ」
「どうしてここのことわかったの?」
「先生に聞いたんだ。だから間違いないよ」
「そうなんだ。それじゃあ」
「そう。ここはこうでね」
 希望は千春の教科書にさらに書いていく。
「後はね」
「そこも?」
「そう、こうだって教えてもらったから」
「じゃあこの通りに書けば」
「問題ないよ。何しろ先生が言ってるからね
 その教えてテストに出す先生がならというのだ。
「だからそれじゃあね」
「うん、後は覚えるから」
 千春も笑顔で希望に答える。
「有り難う。これでテスト大丈夫だよ」
「二人でだ。一緒にね」
 希望もだ。笑顔で千春に言う。
「テストはいい成績で終わらせて」
「それで冬休みだよね」
「冬休み、楽しく過ごそうね」
「クリスマスだよね」
「クリスマスはイルミネーションに行って」
 目を細めさせてだ。希望は冬休み、その楽しい未来のことを話していく。
「それから。新しい年になったら」
「新年はどうするの?」
「神社にお参りに行こうよ」
「そうだよね。新しい年はね」
「行こう。神戸じゃないけれど住吉大社はどうかな」
 そこはどうかとだ。希望は千春に提案した。
「そこに行かない?」
「住吉?大阪の?」
「そう、そこはどうかな」
 こう千春に言うのだった。
「住吉はね」
「うん、千春あそこにも行ったことあるけれど」
「いい神社だよね」
「あそこはね。歴史があって」
「そうそう。広くて」
「色々な神様がいて」
「神様も多いよね」
 神社に祭られる神は一柱だけとは限らないのだ。
「だから新年はね」
「そこに二人で行って」
「新年を迎えよう。ただね」
「ただって?」
「僕達だけじゃないかもね」
 こうもだ。希望は言ったのだった。
「友井君も一緒かもね」
「あの人も?」
「友井君どうやら彼女ができたらしいんだ」
 希望だけでなくだ。彼もだというのだ。
「だから。四人で行くかも知れないよ」
「それもいいよね」
「いいんだ」
「うん、二人でいるのもいいけれど」
「四人もいいよね」
「友井さんと千春ってこれまで殆どお話してないけれど」
「あっ、そういえばそうだね」
 言われてだ。希望も気付いた。
「千春ちゃんと友井君はお互いにはまだ殆どだったね」
「だからね。一緒にね」
「お話もしてみたいんだ」
「凄くいい人だよね」
「そうだよ。とてもね」
「じゃあその友井さんと」
 千春は彼の名前も口に出した。
「一緒になのね」
「僕もね。思ってたんだ」
 嬉しい顔になってだ。希望は千春に彼のことを話した。
「友井君にも彼女がいたらってね」
「希望だけじゃなくて?」
「だってさ。あんないい人なんだよ」
 真人の人柄を見ての言葉だった。
「だったらね。やっぱりね」
「幸せになって欲しいから」
「彼女ができて幸せとは限らないけれど」
 これは一概に言えなかった。そうした相手がいても幸せと感じるか当然と感じるか不満に感じるかはそれぞれなのだ。だがそれでもだというのだ。
「友井君にはね」
「幸せになって欲しいから」
「彼にそうした人がいてくれたらって思ってたんだ」
「それでそうした人ができたのね」
「そうなんだ。僕はまだその人に会っていないけれど」
 それでもだと。希望は話していく。 
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