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地震雷火事

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第四章

「戦乱もね」
「怖くて」
「そう、もう国全体がボロボロになるから」
「戦争は怖いのね」
「正直欧州で一番怒って欲しくないわ」
 そこまでのものだとだ、カーチャは話した。
「もうね」
「ううん、戦争は私も嫌だけれど」
「日本で一番被害が出た戦争でそれ位よ」
 第二次世界大戦でもというのだ。
「確かに大変な数の人達が犠牲になったけれど」
「それでもなのね」
「同じ戦争でもソ連は一千万超えてるから」
「それは凄いわね」
 古奈美もその数には思わず息を呑んだ。
「無茶苦茶じゃない」
「ポーランドは人口の二割が犠牲になったっていうしね、ドイツも相当だったし。他の戦争も考えたら」
 欧州のそれをというのだ。
「もうね」
「戦争はとんでもないのね」
「そうよ、日本の侍同士の戦みたいに侍達だけでやって戦見物出来るなんてものじゃないし」
 これが日本の戦だった、戦があると戦になる場所の近くに住んでいる民達はその場と離れた見晴らしのいい場所に集まって弁当を食べながら見物していたのだ。
「十字軍とか傭兵とか侵略者だからね」
「逃げるしかないわね」
「逃げ遅れたらね」
「洒落にならないわね」
「それで街も村も容赦なく壊すから」
「ううん、地震や台風とどっちが怖いかしら」
 古奈美も話を聞いて思った。
「一体」
「そこはわからないけれど日本で戦争はしたくなくても怖いものっていったら」
「やっぱり地震雷火事ね」
 古奈美は即答した。
「それで台風津波洪水竜巻」
「確か親父もくるのよね」
「いや、人間よりも断然だから」
 古奈美の返事は冷静なものだった。
「災害は」
「そこに戦争は入らないわね」
「それはそうね」
「それが日本ね、確かにあらゆる災害が起こる国だけれど」 
 それでもというのだ。
「戦争が怖いものにないのはね」
「有り難いことね」
「そう思うわ、だからね」
 それでというのだ。
「日本はそのことは幸せよ」
「戦争が怖いものに入っていないことは」
「まだね、じゃああらためて勉強しましょう」 
 カーチャは古奈美に微笑んで言った。
「そうしましょう」
「そうそう、私達テスト勉強で来てるし」
 古奈美は言われてこのことを思い出した。
「それじゃあね」
「勉強しましょう、実は私ここがわからないけれど」
「ああ、そこはね」
 古奈美はカーチャが示した古典の授業の徒然草のある部分について話した、そうして二人でテスト勉強を行って。
 学校帰りの天気は大荒れで雷が鳴った、カーチャは少しびくりとなったが古奈美は平気で彼女に言った。
「大丈夫よ、バス停すぐそこだしそこからバスに乗るから」
「本当に平気ね」
「こんなのいつもだからね」 
 天気が荒れて雷が鳴ることも日本ではとだ、古奈美はカーチャに笑って話した。そうして至って平気な顔で彼女と共にバス停にまで向かった。そして一緒にバスに乗って帰った。雷は鳴っても彼女にとってはそれだけだった。


地震雷火事   完


                   2021・2・16 
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