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女性の住職

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第四章

「お寺の庭で遊んでいた子供達は」
「私の子供達です」
「住職さんのお孫さん達ですか」
「そうです」
「そうでしたか」
「いや、今はお坊さんでも家庭持てることは知ってましたけれど」 
 荒木もこのことは知っていた。
「ですが」
「それでもですか」
「まさか」
 信じられないといった顔で述べた。
「住職さんにご家族が」
「そうした気配は感じられませんでしたか」
「これまで一度も」
「そうですか。ですが母も僧籍にあり」
 それと共にというのだ。
「家庭もです」
「持っておられるんですね」
「そうです」
 まさにというのだ。
「母は時に優しく時に厳しい」
「そうした人ですか」
 荒木は家庭の主婦としての住職の話を聞いて述べた。
「住職さんは」
「それで公平な人です」
「やっぱりお坊さんなのね」
「そうですね、ですが家ではむしろ僧籍としてよりも」
 それよりもというのだ。
「妻そして母としてです」
「そうした人ですか」
「そうなのです」
「そうですか」
「いつも御仏の教えは忘れませんが」 
 そうした人だがというのだ。
「しかしです」
「それでもですか」
「家庭ではそうです」
 主婦としてそして母としての面が強いというのだ。
「その時は」
「あの、俺達住職さんは素晴らしいお坊さんとです」
 その様にとだ、荒木は若い僧侶、住職の息子である彼に答えた。
「思っていました」
「そうでしたか」
「ですがそうした一面もありますか」
「孫、私達の子供達にはかなり甘いです」
「そうなんですね」
「人は色々な面がありまして」
「住職さんはお母さんの一面もあるんですね」
「そうです」
 こう荒木に答えた。
「そうした人です」
「何ていうか意外ですが」
 藤原は若い僧侶まだ名前を聞いていない彼に述べた。
「言われてみると。今はお坊さんも結婚出来ますし」
「浄土真宗以外の宗派でもですね」
「それならですね」
「はい、必然的にです」
 結婚出来るならというのだ。
「男性は夫になり父になり」
「女の人だとですね」
「妻になり母になります」
「そういうことですね」
「左様です、ですから」
 それでというのだ。 
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