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若夫婦の喧嘩

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第二章

「ラーメン美味いね」
「うん、やっぱりラーメンは豚骨だよ」
「これが一番よ」
 二人共すぐに春樹に答えた。
「紅生姜も入れてね」
「替え玉もすすのよ」
「固さも調整してね。ただね」
 春樹はそっぽを向き合ったまま食べる二人にさらに言った。
「ソフトバンク負けたし二人共機嫌悪いみたいだしまだ何処か行く?」
「そうだな、次は飲むか」
「居酒屋行きましょう」
 二人は春樹に応えて次は居酒屋に行った、そこで鶏肉を肴にしこたま飲んだ。その最後にだった。
 新平はすっかり酔った顔で春樹に問うた、春樹はまだ高校生なので店では飲まず烏龍茶を楽しんでいる。
「春樹君、お茶漬けは海苔だね」
「何言ってるの、梅でしょ」
 友香はすぐに言った。
「それに決まってるじゃない」
「違う、海苔だよ」
 夫は妻に反論した。
「お茶漬けだったら」
「違うわよ、梅よ」
「海苔だよ」
「梅よ」
「何でそこで梅なのかな」
「海苔じゃないでしょ」
「まさかね」
 春樹は顔を戻して言い合う二人を見て言った。
「二人共それで喧嘩してたの」
「そうだよ、海苔じゃないとか言うから」
「梅は駄目だって言うからよ」
 二人はそれぞれ春樹に答えた。
「私も怒ったのよ」
「僕もそうしたんだよ」
「梅じゃないなんて邪道でしょ」
「海苔じゃないなんてどうかしてるよ」
「ここ福岡県なんだけれど」
 春樹は自分に言う二人にこのことから返した。
「それだったら決まってるじゃない」
「何なのかな」
「お茶漬けは何だっていうの?」
「明太子だよ」
 福岡名物のこれだというのだ。
「他にないよ、というかね」
「というか?」
「というかっていうと」
「どっちでもいいじゃない、僕確かにお茶漬けは明太子派だけれど」 
 それでもというのだ。
「どっちも食べるよ」
「海苔もか」
「梅もだよ」
「その時の好みでね。それでどっちもね」
 海苔も梅もというのだ。
「美味しいよ、というかお茶漬けの好みで喧嘩するなんて」 
「おかしいか」
「下らないっていうの」
「うん、じゃあ二人共今から交換したらいいよ」 
 それぞれの好みをというのだ。
「姉さんは海苔、義兄さんは梅をね」
「それぞれか」
「食べればいいの」
「そうしてみたらいいよ」
 こう二人に言うのだった。
「今から。それからまた言えばいいよ」
「春樹君が言うならな」
「それならね」
 若夫婦は酒で真っ赤になっている顔で応えた、そうしてだった。
 二人はそれぞれの贔屓のお茶漬けを交換したうえで食べた、すると。
「あっ、美味しい」
「こっちも」
 新平も友香も言った。
「海苔も」
「梅も」
「こちらもね」
「美味しいよ」
「そうだよ、僕確かに明太子派だけれど」
 春樹はその立場からお茶漬けを交換し合った二人に言った、見れば彼はその明太子のお茶漬けを食べている。 
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