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カナダガンの夫婦

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第三章

「これはな」
「ええ、ニューイングランドでもよね」
「思ったさ」
 地元でもというのだ。
「そうな、けれどな」
「このアトランタでもなのね」
「思ったよ、本当にな」
 それこそというのだ。
「人間は偉そうにしていても」
「あんなに強い絆なんてね」
「そうそう築けないからな」
 だからだというのだ。
「本当にな」
「凄いわね、けれどその待った介があって」
「もうすぐか」
「ロミオは退院出来るから」
 それでというのだ。
「あと少しよ」
「それはいいことだな」
 イリアはその話を聞いて笑顔になった、そして。
 退院した時にだった。
「クァッ」
「クァッ」
 カナダガンの夫婦は。
 お互いに顔を擦り合わせた、そうしてだった。 
 再会を喜んだ、イリヤはその彼等を見て笑顔で言った。
「名場面だな」
「そうですね」
 見ればキャサリンも笑顔だった。
「本当に」
「ロミオとジュリエットだとな」
「ええ、悲しい結末ですが」
「この二羽はな」
「幸せですね」
「何よりだよ、じゃあこの二羽のこれからの幸せを願って」
 イリヤはさらに言った。
「俺は帰るな」
「マサチューセッツにですね」
「そうするな」
「はい、それでは」
「またな」
 この時も笑顔でだった。
 イリヤは仕事を終えると彼の職場に帰った、すると。
 湖ではアーノルドがメリーと一緒にいた、相変わらず仲睦まじい彼等を見てイリヤはまた笑顔になった。


カナダガンの夫婦   完


                  2021・8・24 
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