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異生神妖魔学園

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異生神妖魔学園脱出劇

4時間目の世界史が終わり、昼休みに突入。食堂へ入った紺子はなぜかいつも以上に嬉しそうだ。


紺子「今日は午前授業だから早く帰れる♪」


そう言ってニコニコしながらきつねうどんの食券とトレイをカウンターに置く。


夏芽「紺子ちゃん、今日はいつも以上に嬉しそうだけど何かあったの?」

紺子「だって今日午前授業だもん、午後にゆっくりできる時間多くて最高なんだよ!」

ジャック「だからって寄り道とかするんじゃないよ。アタイら紺子ちゃんたちのこと心配してるからね。誘拐とか痴漢とか……」

紺子「お気遣いどうも。きつねうどんよろしく」

夏芽「はーい、きつねうどん一丁!」

ジャック「好物でも残したら覚悟することだよ」


紺子は昼休みになるといつもきつねうどんを頼む。残せばジャックの怒りを買うことになるが、残さず食べる紺子には関係なかった。


一生「俺も化け狸だからたぬきそば食べるけど、あいつ毎日きつねうどんばっかで飽きないのかな?」

辰美「確かに私もきつねうどん食べてるところしか見たことないですね。油揚げが入ってるから飽きないんじゃないでしょうか。去年『油揚げの布団で寝たい』って言ってましたし」

一生「そんなこと言ってたの!?すっかり忘れてた………ってそこまで油揚げ大好きだったんかい!?」


いなり寿司だけでは足りないと思ったのか、一海はいなり寿司としょうが焼きの食券を買った。


ジャック「今日はしょうが焼きも食べるのかい?」

一海「はい。よくよく考えれば、いなり寿司だけじゃ足りなかったんです。おかずもちゃんと食べようとしょうが焼きの食券を…」

ジャック「そりゃそうさ。あんた、いっつもいなり寿司だけだったし、栄養はちゃんと摂った方がいいってアタイらは心配してたんだよ?育ち盛りなんだからしっかり食べないと」

夏芽「牛乳もちゃんと飲みなさいね~。今日はサービスとしておばちゃんが牛乳配ってるからね~」

一海(牛乳?確か夏芽さんの種族…牛鬼だったよね。今日がサービスで配られてることは…………え!?まさかとは思うけど………夏芽さんの!?)


何かを察したような顔をし、みるみる青ざめていった。
一海は自分の顔色が夏芽とジャックに気づかれないようにカウンターを後にすると、紺子と龍華が座っているテーブルへ向かった。


一海「出雲姐ちゃん……龍華……」

龍華「ん?顔色青いけどどうしたんだ?」

紺子「あの変態マッチョマンの先生のパンツが頭から離れられないのか?」

一海「全然違うよ………出雲姐ちゃんと龍華って牛乳好き?」

紺子「好きだけど、それがどうかしたか?」

龍華「今日夏芽さんの牛乳サービスデーだったよな……ん?牛乳サービスデー?カズミン、お前まさか!?」


一海の真っ青な顔色で龍華は察したように驚愕する。


龍華「夏芽さん、毎月牛乳サービスデーってのやるんだけど………噂では『あの牛乳は夏芽さんから出てるんじゃないか?』って囁きがあるんだよ………」

紺子「龍華、まだそんな噂信じてるの?たかが噂じゃん。そんなことあるわけねぇだろ」

一海「種族牛鬼なんだよ?夏芽さん」

紺子「……………ウプ!?」


先ほどまでどこから牛乳がとれるのか想像していた紺子だったが、まだ何も食べていないにも関わらず顔色が悪くなり、吐き気を催してしまった。


一海「どうしたの出雲姐ちゃん!?」

龍華「おい、大丈夫か!?顔色悪いぞ!?」

紺子「あれがもし夏芽さんから出てきたのだったら………想像してたら皮膚に違和感が………」





数分後、きつねうどんを受け取った紺子。食欲はあったものの、食べている間始終顔色が悪く、目が死んでいた。
きつねうどんは食べ終えたが、牛乳だけは全く手つかずだった。紺子が飲めなかった牛乳は仁美がもらい、美味しく飲んでしまった。


紺子「ちょっと屋上行って涼んでくる」

龍華「早く戻ってこいよ?この後すぐ帰りのHRやるからな」

仁美「ねえジャックおばちゃ~ん。紺子が牛乳くれたけど、あれってお残しの分類にはならないの~?」

ジャック「夏芽ちゃんの牛乳は料理には入らないからいいんだよ。一番許せないのはアタイらが作った料理を残すこと。それだけさ」

夏芽「おばちゃんのだけ扱いひどくない!?」










やがて数十分経ち、2年教室にて。


ヴォイエヴォーテ「おい、誰か出雲がどこにいるか知っている者はいるか?」


昼休みが終わり、帰りのHRが始まろうとしていたが、空いている席を見たヴォイエヴォーテが生徒たちに問いかける。


龍華「あいつなら屋上で涼んでくるって言ってたけど……」

ヴォイエヴォーテ「何だ、屋上にいるのか」

ディーゴ「時間忘れて昼寝でもしてるんじゃないですかね?」

ヴォイエヴォーテ「ではなぜ起こしに行かない?これでは帰りのHRができないではないか」

ライエル「待ってたらよけい時間かかるし、今から起こしに行っても間に合わないし、もう紺子ちゃん抜きでやりましょうよ」


確かに時間の無駄だ。提案したライエルに全員うなずいた。


ヴォイエヴォーテ「ふむ……いいだろう。ではこれより、出雲抜きで帰りのHRを始める」

龍哉「全く、しょうがない奴だなぁ………終わったら起こしに行くか」

ヴォイエヴォーテ「そうしてくれ」










帰りのHRが行われた一方、屋上ではディーゴの言う通り、紺子はベンチの上で昼寝していた。
満腹感と涼しい風に当たっているうちに眠くなってしまったのだろう。


紺子「スゥー……スゥー……」


寝息と共に服という名の布に覆われていない腹が静かに上下に動く。
約10分後、扉が開き、龍哉と牙狼が寝ている紺子に近づいた。


龍哉「いたいた。気持ちよさそうに寝てんな…」

牙狼「寝顔はかわいいけど、お腹が無防備すぎるよ…」

龍哉「でも……すぐ起こした方がいいと思うんだけどなぁ………」

牙狼「いろいろあってかなり疲れてるのかもしれないよ?」


風邪を引くといけないと思った牙狼は優しそうな表情で自分のブレザーを紺子の体にかけた。


龍哉「これでお腹は大丈夫っすけど、やっぱり起きるまで見守るしかないっすかね……」

牙狼「時間かかるかもしれないけどそうするしかないよ」

紺子「ん………スゥー」


唇から少し声を漏らし、再び寝息を立てる紺子。目が覚めるまで寄り添っていようと思った龍哉と牙狼は優しく微笑んだ。
ところが………。


牙狼「何だろう………よくわかんないけど、僕も眠くなってきちゃった…………」

龍哉「白銀先輩……寝ちゃダメっす………」


紺子に寄り添っているうちに、急に強烈な眠気が襲ってきたのだ。
寝てはいけないと頭の中で念じることはできる。しかしどれだけ逆らっても眠気は容赦なく襲い、まぶたはどんどん重くなってくる。


龍哉(寝ちゃダメだ寝ちゃダメだ寝ちゃダメだ寝ちゃダメだ寝ちゃダメだ寝ちゃダメだ寝ちゃダメだ寝ちゃダメだ寝ちゃダメだ寝ちゃダメだ寝ちゃダメだ寝ちゃダメだ寝ちゃダメだ寝ちゃダメだ寝ちゃ―――――)


そう念じているうちに意識がどんどん遠退いていくのは牙狼も同じだった。
とうとう2人は眠気に耐えられなくなり、龍哉はスラブへ倒れ込むように、牙狼はベンチの上で座りながら寝てしまった。
3人は静かに寝息を立てる。ところが目が覚めた時、最悪な出来事に遭遇するとは知る由もなかった。










龍哉と牙狼が寝落ちしてから数時間後、先に目を覚ましたのは紺子だった。


紺子「ん………ふあああ……寝ちまったみたいだな………」


あくびと伸びをしながら呟いたが、なぜかスラブには龍哉が倒れ、隣には牙狼が座りながら寝ているではないか。


紺子「…あれ!?龍哉!?牙狼!?」


寝起きで頭が回らず、状況が全く理解できない紺子だったが、彼女の大声に龍哉と牙狼も目を覚ました。


牙狼「あれ……僕たち寝ちゃった?」

龍哉「寝てましたよ……俺もそうでしたけど」

紺子「え、ちょっとどういうこと!?何でお前らここにいんの!?」


寝起きなのは龍哉と牙狼も同じだった。
だが混乱する紺子とは対照的に、状況を頭の中で少しずつ整理。結果、帰りのHRが終わった後屋上にいる紺子を呼ぼうとしていたのを思い出した。
龍哉と牙狼はそのことを説明したが、紺子もようやく状況を飲み込めた。同時に呆れた表情になる。


紺子「起こすんなら起こしてくれよ。もう夕方じゃねぇか。午後から家でカズミンと最近買ったゲームしたかったのに」

牙狼「それは謝るけど、いろいろあってかなり疲れてるっぽかったから…」

龍哉「ああ。ヴォイエヴォーテ先生お前抜きで帰りのHRやったからな」

紺子「で、今何時?早く帰らないとカズミンに怒られるんだけど」


スマホで時間を確認する牙狼。16時56分である。


紺子「16時56分!?嘘だろ!?私たちそんな時間まで寝てたのかよ!17時には完全に戸締まりされて閉じ込められるじゃねぇか!」

龍哉「なんてこったい!俺までとばっちりだよ!白銀先輩、だからすぐ起こした方がいいかもしれないって言ったんすよ!?どうしてくれるんすか!」

牙狼「僕に文句言ってもしょうがないよ!ていうか紺子、すぐに教室戻って支度して玄関まで走らないと間に合わないよ!」

龍哉「帰る支度………?あっ!!」


帰る支度と聞いて、龍哉は何か思い出したように叫んだ。


龍哉「完全に忘れてた!!カバンを教室に置いたままだった!!」

紺子「こいつまでドジ踏んでやがる!?」

牙狼「と、とにかく!僕は玄関に行くからすぐ準備して!間に合わなかったら僕たちみんなここに閉じ込められちゃうから!」

龍哉「わかりました!行くぞ紺子!」

紺子「ああ!」


お前はカバン取りに行くだけだからいいよなと言いたかったが、グッと我慢。紺子と龍哉は2年教室、牙狼は毛布代わりに使ったブレザーを着ると玄関まで走っていった。





紺子「牙狼!」

龍哉「白銀先輩!」


帰り支度を終えた紺子と龍哉は牙狼が待つ玄関までまっしぐら。
玄関では牙狼が手を振っている。2人は到着すると、紺子が急いで扉を押し開けようとした。


紺子「あれっ…」

龍哉「どうした?」


扉に手をつけたまま黙っていたが、しばらくして口を開く。


紺子「………非常に残念なお知らせです。野人先生が作ったオートロックシステムなので17時になると自動的に鍵がかかります。よって朝になるまで開きません!完全に閉じ込められました!」

龍・牙「「な、何だってぇぇぇええぇえぇえぇええええぇぇぇぇええぇぇぇえええぇぇ!!?」」


誰もいない校内に龍哉と牙狼の絶叫が共鳴した。


紺子「最悪だー!!恐れてたことが現実になったぁぁぁぁ!!一晩中校舎で過ごさなきゃならねーじゃねーか!食べ物もないしどうすりゃいいんだよー!」

龍哉「空腹を我慢するしか策はないけど……死纏さんも気まぐれだし……今日死纏さんうろついてるかな?」

牙狼「だったら嬉しいけどね。騒いでたら何にもならないし、ここから出る方法考えてみない?」

紺子「は!?出る!?オートロックだぞお前!窓は違うから大丈夫かもしれないけど、外から鍵かけられないじゃん!そこから出たら泥棒が入ったって勘違いされるぞ!?」


紺子はもはや救いの道はないと絶望していたが、牙狼にある考えがひらめく。


牙狼「窓からはダメだってのはわかってるよ。どこかに非常口があったはず…」

紺子「非常口…?それだ!そこからだったらバレずに出れるかも!」

龍哉「ホントに大丈夫っすか!?『こんな時間に生徒がうろついてました』とか言われないっすよね!?」

牙狼「ないと信じたい。とにかく、非常口探してすぐにここから出よう!」





牙狼「………とは言ったものの、学園長室の地下にも隠されてるって………」

紺子「私も初めて知ったんだけど」


数分前、紺子たちは非常口をいくつか見つけていたものの、ドアが不思議な力により開けられることを拒否。そのドアは全てオートロックではなかったが、紺子がドアノブに手をかけた途端、電流が走ったのである。





紺子「アババババババババッ!?」





何度もドアノブに手をかけ、何度も感電した紺子。それを見ていた龍哉は藁にもすがる思いで学園長室を探ってみようとひらめいた。
そう、今紺子たちはなぜか学園長室の地下にもある非常口の前に立っていた。


龍哉「あの時メッチャ骨見えてたよな。尻尾モフモフなのに感電してる時、尻尾の骨細くて笑っちゃったよ」

紺子「うるせぇな。非常口なんて避難訓練ぐらいにしか使われねぇから知らなかったんだよ」

牙狼「何回も開けようとしたけど無理だったよね。これでもしまた感電したら笑えないけど」

龍哉「これが最後の頼みの綱ってことっすね………紺子、悪いけどまた開けてくれないか?」

紺子「また私!?もう嫌だ~…感電死しちゃう~……」


紺子は嫌々ドアノブに手をかけようとするが、恐怖で手が震え、思うように手を伸ばせない。


紺子(また電気走ったら私絶対死ぬよ?これはこれでもう笑えないよ?)

龍哉「何ためらってんだよ紺子」

牙狼「開けられないなら僕か龍哉が開けるよ?」

紺子「…………よろしく………………」


よほど怖かったのか、振り向いた紺子は涙目だった。仕方ないぜと龍哉はため息をつくと、牙狼と共に誰がドアを開けるかジャンケンをすることに。負けた方がドアを開けなければならない。


龍・牙「「最初はグー、ジャンケンポン!」」


龍哉はパー、牙狼はチョキを出した。龍哉がドアを開けることになった。


龍哉「俺かよ」


本当は龍哉も内心不安だった。恐る恐るドアノブに手をかけると………。


龍哉「………あれ?何も起きないぞ」

紺・牙「「え゛?」」


確かに龍哉には電流が走らず、紺子と牙狼は同時に首をかしげる。


紺子「電気走らないとかおかしいな……ちょっとそこどいて」


今度は何度も感電した紺子が手をかける。だが龍哉同様電流が走ることはなかった。


紺子「…ホントだ。マジで何でもない」

牙狼「嘘でしょ?どれ、僕も……」


続けて牙狼も手をかけてみた。やはり電流が走らない。


牙狼「ホントは龍哉が開けなきゃならないけど、僕が代わりに開けるか」

龍哉「すいません白銀先輩…俺の役目だったのに…」

牙狼「別に構わないよ。いい?開けるよ?」

紺子「うん」

龍哉「お願いします」


紺子と龍哉はうなずくと、牙狼はドアノブを回し、押し開けた。


牙狼「鍵がかかってない!?なんて不用心なんだ!」

紺子「地震とか火事とか起きたらいつでも逃げれるように開けてるんじゃね?」

龍哉「自分だけ助かろうとか最低かよ、あの学園長!?」

紺子「でもこの秘密の非常口は私たちにバレた。会ったら拷問にかけてでも問い詰めてやる」

龍哉「こいつまで学園長ボコボコにしようと考えてる!?」

牙狼「紺子、それはかわいそすぎるからやめてあげて?」










やがて3人が出た場所は校舎の裏側だった。


紺子「か~~っ!やっと出れた!これで一件落着だ!」


紺子は嬉しそうに言いながら背伸びした。龍哉と牙狼も喜び合ったが、牙狼があることを気にする。


牙狼「そういえば今日学園長見てないけど……どうしたんだろ」

龍哉「ユウジ先生から聞きましたけど秘術室でライオンに襲われてますよ」


龍哉がそう言った途端、突然3人の目の前にそのライオンに襲われているはずの辰蛇が現れる。


紺・龍・牙「「「学園長!!」」」

辰蛇「なんとか脱出できました」


その時、紺子の中の何かが切れた。
何度も感電した恨みか、尻尾を伸ばし、辰蛇の頭が見えなくなるほどぐるぐる巻きにした。


辰蛇「グムォ!?」


角とツインテールの黒髪が締めつける尻尾の下からはみ出る。


牙狼「紺子!?学園長の頭縛って何してるの!?」

紺子「私あのドアで感電しまくったからさ、絶対犯人学園長だなって」

龍哉「恨みありすぎだろ!」

辰蛇「む~~~~~~!!ん~~~~~~!!」ジタバタ


尻尾を引き離そうと必死に抵抗する辰蛇の表情はわからないが、苦しそうな顔だろうなと紺子は思った。
しばらくして尻尾の下から聞こえる辰蛇の懇願する声がだんだん泣き声に変わっていったが、紺子は決してやめることはなかった。 
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