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人間好きな馬達

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第一章

                人間好きな馬達
ドイツ北部フレンスブルクに住んでいるステファニー=アーソンはこの時フランクフルトまで旅行に来ていた、そして。
 観光を楽しむ中でフェッテンハイムに入ったが。  
 街の中を一頭だけで歩く白馬を見た、知的な顔立ちで見事な金髪と青い目と長身を持つ彼女はその馬を見て言った。
「脱走したのかしら」
「ああ、違うよ」
 丁度傍にいた出店、お菓子を売る店の親父が言って来た。
「あの馬は」
「そうなんですか」
「ああ、ウエルナー=ワイシェーデルさんのところの馬でな」
 飼い主の名前も言った。
「名前はジェニーっていうんだ」
「脱走はしていないですか」
「昔は飼い主さんが乗って一緒に散歩していたんだよ」
 その馬、ジェニーを見つつ話した。
「けれどワイシューデルさんが歳を取って」
「ああ、乗馬が出来なくなって」
「それでなんだよ」
 こうステファニーに話した。
「今じゃな」
「あの娘だけで」
「散歩をしているんだよ」
「そうですか」
「朝になるとワイシューデルさんが扉を開けて」
 そうしてというのだ。
「出てな」
「そうしてですか」
「ああしてなんだよ」
「散歩をしていますか」
「そうなんだよ」
 こう話した。
「ああして毎朝な」
「そうでしたか」
「大人しくて優しい娘だよ」
 親父は馬の性格のことも話した。
「だから近寄ってもな」
「何もないですか」
「むしろな」
 彼はさらに言った。
「野菜とかおやつをな」
「あげる人もいますか」
「人気者なんだよ」
 見れば近くを行く誰も馬を警戒していない、むしろ暖かい声で挨拶の言葉をかけている位である。そして馬も。
 普通に歩いている、親父はその光景を見つつさらに話した。
「あんたも近くに行けばいいさ」
「馬のですか」
「ああ、あんた馬に馴れてるよな」
 親父はステファニーに笑顔で言った。
「そうだろ」
「おわかりですか」
「確かにジェニーを見て驚いていたけれどな」
 それでもというのだ。 
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