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大学に来る猫

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第一章

            大学に来る猫
 中国の古都西安のある大学でだ。
 チャン=ユンファ黒髪をショートにした垂れ目で小柄な彼女は同級生で同じ学科に通うウエン=シャオリン黒髪を長く伸ばし自分より二センチ位高くはっきりとした目ですらりとしたスタイルの彼女の机を見て言った。
「あの」
「ちょっとね」
 シャオリンはユンファに難しい顔で応えた。
「この娘、バダンっていうけれど」
「ニャア」
 見ればシャオリンの机の中に薄いグレーと黒の虎模様のマンチカンがいる。丸々としていて大人しそうな顔だ。
「一歳で雄なの」
「あんたのお家の猫よね」
「私に凄く懐いてくれてるけれど」
 それでもとだ、シャオリンはユンファに話した。
「今日は特別にね」
「連れて来たの」
「勿論問題はあるってわかってるわ」
 猫を大学に連れて来ることはというのだ。
「それはね。けれどね」
「それでもなの」
「普段からだけれどこの子私に懐いてて」
 それでというのだ。
「今日はね」
「特になの」
「甘えて、これから大学に行く時も」
「ずっとなの」
「ひっついてきたし家族いるけれど皆その時いなくて」
「それでなのね」
「連れて来たの」 
 大学にそうしたというのだ。
「今日はね」
「そうだったのね」
「ええ、これだとね」
 シャオリンはこうも言った。
「イギリスに行く時に」
「ああ、チェスター大学に」
「どうなるか心配よ」
「家族の人達に頼む?」
「そうね、それしかないわね」
「それで今日はなのね」
「一日ね」 
 大学にいる間はというのだ。
「一緒よ、仕方ないわ」
「仕方ないっていう割には表情明るいわよ」
 ユンファはそう言うシャオリンの顔を見て言った。
「そこどうなの?」
「いや、家族だから」 
 シャオリンはまんざらでもないという顔でユンファに応えた。
「それに猫好きだしね」
「だからなのね」
「先生に見付からない様にしてるけれど」
「嫌でもないのね」
「ええ、ただ今日一日だけよ」
 バダンにも言った。
「いいわね」
「ニャア」
 わかっているのかいないのか、バダンはシャオリンに返事をした。そうしてこの日は大学に一緒にいた。食事は持って来たしトイレはバダンは家まで我慢した。 
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