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第三章

「楽しみにしておいてね」
「ああ、じゃあ全力でな」
「挑んで来いっていうのね」
「佐藤さんで迎え撃ってやる」
「藤浪さんも復調してきたし?」
「佐藤さんが打ってくれるとな」 
 それならというのだ。
「藤浪さんもな」
「投げやすいのね」
「だからな」
 それでというのだ。
「藤浪さんもやっとでな」
「それでなのね」
「そうだ」 
 まさにというのだ。
「今の阪神は無敵だ」
「それでカープにも勝てるっていうのね」
「絶対にだよ」
「毎年負け越していたのに」
「今年は違うぞ、全球団に勝ち越して」
 そうしてというのだ。
「そしてな」
「優勝するのね」
「それで日本一にもなるからな」
「昭和六十年以来の」
「三十六年振りだ、本当に楽しみだよ」
「お父さんもお母さんもまた子供の頃ね、というかね」
 千佳は兄の上を見上げての希望に満ちた顔を見つつジト目になって述べた。
「阪神ってそんなに日本一から遠ざかっているのね、ある意味凄いわ」
「そう言うカープは昭和五十九年以来だろ」
「いや、カープ三回日本一になってるから」 
 千佳は冷静に答えた。
「だからね」
「阪神は一回だからか」
「勝ってるわよ」 
 こう言うのだった。
「悪いけれどね」
「じゃあここから十連覇して大逆転だな」
「十連覇?大きく出たわね」
 千佳のジト目はさらに強いものになった。
「そこまで出来るって何よ」
「今の阪神なら出来るだよ」
「どうだか。ソフトバンクでもどうか」
 超巨大戦力と言われるこのチームでもというのだ。
「大谷翔平さん出たら負けたのに」
「だから阪神もか」
「どうだか。まあ今年も精々頑張ってね」
「精々か」
「私カープファンだから」
 それでというのだ。
「こう言うのよ。しかし三連覇しても」
「今のカープはか」
「ぱっとしないわね、けれどこうした時もあるわ」
 今度は達観した言葉を出した。
「そしてこうした時こそ頑張る」
「それが重要だよな」
「阪神だってそうでしょ」
「ずっと打たなかったからな」
 打線がというのは言うまでもない。
「だからな」
「実感してるわね」
「よくな、じゃあカープも頑張れ」
「また黄金時代築くわ」
「阪神に勝ってか」
「そうするわ」
「じゃあ受けて立つな」
「叩き潰してやるわよ」
「叩きのめしてやるからな」
 兄妹は睨み合いながら話した、だが。
 そこには嫌なものはなくあっさりしていた、それで寿はその言い合った千佳とあっさり別れてだった。
 そうして自分の部屋に戻って勉強した、勉強の間はラジオで阪神の試合を聴いた。この日も勝って彼はまた笑顔になったが。
「高校野球からか」
「地獄のロードね」
 翌朝の食事中に千佳は兄にこう返した。
「そこからよね」
「正念場はな」
「その時にどうかよ」
「やっぱりそうだよな」
「まあその時頑張ることね」
「そうだな」 
 妹の言葉に頷いた、そしてだった。
 彼は今は朝食を食べた、納豆のご飯は今はかなり美味かったが夏以降もこうした美味い朝食を食べたいと心から願った。


スラッガーが加入して   完


                    2021・5・29 
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