FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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ありえない現象
「あ・・・暑い・・・」
上陸したと同時に照りつける陽射しに思わず体が脱力しそうになる。なんだか陽射しがいつもよりも強い気がするのは、依頼にあった異常気象が関係しているのだろうか?
「うわっ・・・」
「ひどいですね、これ」
船から降りたと同時に辺りを見渡したルーシィさんとウェンディが思わず顔をしかめる。それもそのはず、今の街の様子を見たら誰だって困惑する。
ボロボロになっている建物や港だけでも悲惨なのに、舗装されていたと思われる道が崩れ、あらゆるところが砂漠地帯のようになってしまっている。
「あの船の震動は港が崩れちまってたからか」
「船底に残骸がぶつかってしまったみたいですね」
本来港だった場所も大きく壊れてしまっているせいで、降りれる位置まで船を寄せた際に海に沈んでいたその残骸に気が付かずにぶつかってしまっていたよう。お陰で船に傷が付いているけど、そこまで大きな損傷ではないみたいなので一安心。
「とりあえずどうするよ?」
「無事な人を探す~?」
「家はあるし、人はいるんじゃないかしら」
まず何をするべきかを話し合う。街がボロボロな原因はどう考えてもティオスと天海なんだけど、この異常気象はあの二人は関係ないだろうし。天海なんか魔法すら使えなかったしね。
「いや。まずはこの依頼を出したところにいこう」
「ここから近いの?」
「それは今から調べよう」
依頼書に目をやりながらそう言うエルザさん。事前にカミューニさんから渡されていたらしいこの国の地図を広げると、俺たちもそれを覗き込む。
「私たちが着いたのがこの港なんだから・・・」
「この依頼書の住所は・・・」
「あの・・・」
依頼書に書かれている地名を探していると後ろから不意に声をかけられる。それに反応して全員が振り向くと、そこにいた少女がビクッと体を震わせた。
「どうしたの?」
「俺たちに何か用?」
怖がっているのか俺とウェンディが近寄ろうとすると後退りする少女。向こうから声をかけてきたのにと思っていると、その後ろからゆっくりとおばあさんが歩いてくる。
「待ちなさい、リエ」
「おばあちゃん」
後ろから来た彼女に駆け寄る少女。おばあさんに抱き締められると、少女は彼女の後ろに隠れながらこちらを見ている。
「あなたたちはもしかしてフィオーレの・・・?」
「はい、依頼を受けてきた妖精の尻尾の魔導士です」
それを聞いて安心したのか、おばあさんはおぼつかない足取りでこちらへと近付いてくる。足が不自由なのか、フラフラしている彼女を見ていられなくて、こちらの方から急いで駆け寄る。
「大丈夫ですか?」
「無理すんなよ」
「すみません・・・なにぶん歳でね・・・」
よっぽど足が悪いのか立っているのもやっとなおばあさん。このままこの場で話をするのはよくないと思い、ナツさんがおばあさんを背負い、二人に案内されるがままに進んでいく。
「あそこがお二人の住まいで?」
「えぇ」
すぐ先に見える民家を指差しながら確認するエルザさん。わかっていたことだけど、あの家もかなりボロボロだ。周りの家に比べればまだマシだけどっていった感じかな?
「みーんなあそこにいるの!!」
「「みんな?」」
さっきまでの様子とは打って代わり、すっかり仲良くなって俺とウェンディの手を引っ張っているリエちゃん。満面の笑みでそう言う彼女に首をかしげると、建物の入口がわずかに開いたのがわかった。
「二人とも!!どこ行ってたんだ!!」
「大きい音がしたから見に行ってたの!!」
足音に気が付いた男の人が様子を見るために扉を開けたらしく、見覚えのある二人の姿を捉えたことで中から出てきたらしい。パッと見ナツさんやグレイさんくらいの年齢かな?リエちゃんのお兄ちゃんとかーーー
「「「「「!?」」」」」
そんなことを思っていたら、家の中から続々と出てくる人!!人!!人!!明らかに血の繋がりもないのではという人まで出てきて、何がなんだかわからない。
「みんな、フィオーレの魔導士の方たちだよ」
「えぇ!?ホント!!」
「やった!!これで助かる!!」
何人いるのだろうと呆気に取られている俺たちを他所に、おばあさんがその場にいる人たちに俺たちが何者なのかを説明してくれている。
「お待ちしてました!!これでこの国も助かる!!」
「この国で何が起きているんですか?」
ティオスと天海のせいで街が壊滅状態なのはわかるんだけど、この異常気象は明らかにおかしい。街の復興に励んでいるってカミューニさんは言ってたのに、全然その気配もないし。
「立ち話も何なのでぜひ中で……」
詳しい状況を聞くために中に入る俺たち。外観から予想はできていたけど、中もそんなに広くない。なんでこんなところにあれだけの人が入っていたのか、そこもすごく気になる。
「それで・・・一体何があったんだ?」
「復興に励んでるって聞いてたのに、全然そんな感じしねぇぞ?」
「ちょっとナツ!!」
俺たちの感じていたことはどうやらナツさんたちも同様に感じていたらしい。それを口に出せる辺りが彼らしいな・・・
「以前そちらの国にも攻め入った二人組にあらゆるものを破壊されたのは聞いていると思うんですが・・・我々も生き延びた者たちで国を再興しようと励んでいました」
「ですが、最近の異常気象のせいでそれができなくなっているのです」
「できないなんてことはないだろ?休みながらでも作業は少しずつやれるんじゃないのか?」
「ちょっとグレイさん・・・」
代表らしき二人の男性の言葉にグレイさんが尋ねるが、それをした後にヤバイっといった顔をする。フィオーレは奇跡的に助かったけど、その他の国では魔導士や傭兵といった中心にいた人たちが戦いで戦死してしまったと聞いている。
生き残った人たちにそういう人たちも残ってはいるだろうけど、大半は普通に暮らしてきた人たち・・・この暑さの中では作業効率も悪くなるだろうし、子供やお年寄りもいっぱいいる。さすがにその言い様はあんまりだ。
「おっしゃる通りです」
しかし、彼の言葉に対しこの人たちは怒ったような態度は見られない。予想外の反応に顔を見合わせていると、その理由について話し始めた。
「私たちもなんとか作業を続けていたのですが、本来ならあり得ないようなことが起きるようになってしまったんです」
「あり得ないようなこと?」
「はい。外の様子は覚えてますか?」
その問いに全員がうなずく。逆にあれだけ悲惨な状態になっていると、忘れたくても忘れられないくらいのインパクトがあるのはここだけの話だ。
「実は、あそこまでなってしまったのはこの異常気象のせいなんです」
「ティオスと天海に襲われたからじゃないんですか?」
「それもありますが、あそこまでひどい惨劇ではありませんでした。あの二人は殺戮に重きを置いていたようでしたし・・・」
嫌な記憶を引き出させてしまったようで、数人の顔が曇ったのがわかった。なんだか申し訳ない気持ちになっている俺を他所に、話は続いていく。
「それで、ありえないことって何なの?」
「なんであんなになっちゃったの~?」
「猫が喋ってるよ?」
「気にしちゃダメよ」
シャルルとセシリーが話し始めた途端ザワザワしだしたけど気にしない。男性も一瞬ギョッとしていたけど、咳払いをして気持ちを切り替えている。
「建物や道を舗装し直しても、翌日には割れたり粉々に崩れていたりするんです」
「誰かに壊されたとかでもないんですか?」
「交代で監視していましたが、そんなことはありませんでした。恐らく、この暑さに耐えきれないのかと・・・」
人の力ではなくあくまでも自然の力で起きたと言う破壊現象。確かにありえないようなことだが、現実に起きているなら仕方ない。ただ・・・
「でもそんな街に被害を及ぼすほどの暑さにいて、皆さん大丈夫なんですか?」
普通暑さで建物やコンクリートが壊れることなんてありえない。それが彼らの言う通り起きているのだとしたら人が生きていける環境とは到底思えない。もしかしたら皆さんが言わないだけで、かなりの被害者が出ているんじゃ・・・
「それがですね・・・今まで誰もこの異常気象で命を落とした者はいないんです」
「「「「「!?」」」」」
到底信じられないような回答に目を丸くする俺たち。ますます意味がわからなくなっている俺たちはただ唖然とすることしかできなかった。
後書き
いかがだったでしょうか?
少しずつストーリーも進んできました。
そろそろ更新も加速させていきたいですね。
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