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茶道は無口

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第三章

「慣れるまでずっと足が痺れていて」
「それを我慢していて」
「そうしていたの」
「子供の頃は」
「ずっと」
「足が痺れて辛い顔をしても」
 それでもというのだ。
「それはまだ軽いうちで」
「酷くなったら」
「その場合は表情も消える」
「毎日そうしていたから」
「だから」
「表情が消えて。痺れて辛いから」
 足がというのだ。
「言葉もなくなっていって」
「そうなったのか」
「何でそこまで無口と思ったら」
「そんな理由があったの」
「そう」
 やはりビールを飲みながら言う。
「お父さんもお母さんも同じ」
「毎日子供の頃から茶道の稽古をして」
「正座して足の痺れと戦っていて」
「そうしていて」
「その結果」
 まさにその為にというのだ。
「私は口数が少なくて」
「表情がない」
「そういう事情があったなんて」
「何ていうか」
「何かと思ったら」
「うちだけかも知れないけれど」
 奈央はこうも言った。
「ずっと正座していてそうなったのは」
「まあ家元のお家もそれぞれで」
「そうしたお家だけじゃないかも」
「茶道って騒がしいイメージないけれど」
「それでも」
「自分でもわかっているから」
 ビール、見れば一・八リットルの大ジョッキを無表情であけ続けている。そうしつつ言う奈央だった。
「無口で無表情は」
「そうなの」
「自分ではなのね」
「そうなのね」
「だから」
 それでというのだ。
「自覚はしているということで」
「それならいいけれど」
「別に社交性ないって訳じゃないし」
「普通にお付き合いはしてるし」
「それだとな」
「別にいいか」 
 クラスメイト達は口々に言った、そうして奈央と遊び続けたが。
 奈央が大ジョッキを空けてもう一つと言ったところであらためて言った。
「ひょっとして小林さんお酒強い?」
「若しかして」
「大ジョッキ一気に空けたけれど」
「若しかして」
「四杯はいけるから」
 その大ジョッキをというのだ。
「このサイズのビールは」
「それ普通に凄いし」
「かなり酒豪だから」
「もうそれこそ」
「そうなの。けれど」
 お代わりはすぐに来た、そしてそのビールもだった。 
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