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素直でない後輩

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第三章

「縁があって」
「それでなんだ」
「本当に何となくですよ」
「そうなんだ」
「それで私も仕方なく」
「そこで仕方なくなんだ」
「だって別に彼氏とか」
 顔をやや赤くさせてここでも視線を逸らした。
「欲しくなかったですし」
「なかった、だね」
「そうですよ」 
 鈴は自分の言葉が過去形であることにも気付かず言った。
「私は、けれど合コンに出て」
「あの時だね」
「それで今もです」
「何となくだね」
「会って」
 そしてというのだ。
「そうしてです」
「お話とかしてるんだ」
「私はその気がないですけれど」 
 顔を少し上にやって頬を赤くさせて目を閉じて言った。
「百貨店とかテーマパークとか」
「二人で行ってるんだ」
「喫茶店とか」
 そうした場所にというのだ。
「行ってます」
「そうなんだね」
「はい、それだけです」
「そうなんだね」
「本当にそれだけですから、別にまだキスとかホテルとか」
「僕何も言ってないよ」
 今度はもじもじとしだした鈴に突っ込みを入れた。
「今は」
「あっ、何でもないです」
 鈴も今回は気付いて否定した、それも慌てて。
「今の言葉は」
「そうなんだ、まあ兎に角だね」
「何となくです」
 鈴は必至の顔で言い切った。
「そうなってるだけです」
「成程ね、それで伊藤君いい子だね」
「そうですね、穏やかで優しくて」
「荒っぽいところはなくてね」
「いい人ですね」
 鈴はこのことは素直に言った。
「剣道部でも真面目で評判でしたね」
「そうだよ」
「一年生の中でも」
「剣道は中学生の時からしていてね」
「今初段ですね」
「そうだよ、今度二段取るそうだね」
「そうみたいですね」
 何気に彼から聞いたことを話した。
「頑張ってますね」
「成績は中の上でね」
「そこそこ位ですね」
「悪いところがないね」
「ちょっと鈍いところがあってくよくよもしますけれど」
「いい子だよね」
「はい、あと優柔不断な時もありますが」
 それでもというのだ。
「悪い人じゃないですね」
「そうだね」
「ですから」 
 それでとだ、鈴はさらに話した。
「何となくでも」
「そこでまた何となくなんだ」
「そうです」 
 あくまでこう言うのだった。 
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