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交番の猫の家族

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第一章

                交番の猫の家族
 その交番に毎日猫が来ていた、三毛猫の雌だった。
「野良猫ですよね」
「ああ、間違いないな」
 交番巡査の一番上の階級にある刑事部長の中年男性が若い巡査に答えた。
「その猫は」
「そうですよね」
 今交番の前で日向ぼっこをしながら丸くなって寝ている猫を見つつ話した。
「やっぱり」
「首輪してないしな、それで雌だな」
「そうですね」
「ああ、まあ事件ばかりでも気が滅入るしな」
「猫が近くにいてもですね」
「いいだろ、だから毎日な」
「はい、餌も水もあげて」
 そうしてとだ、若い巡査もいた。
「ここにいついても」
「いいだろ、ちゃんと勤務していたらな」
 それでというのだ。
「いいだろ」
「そうですね」
「ああ、それじゃあこれからもな」
「この猫をですね」
「面倒を見ていくな」
 部長はこう言ってだった。
 交番の警官達は猫の面倒を見つつ勤務を続けていた、その中で。
 猫、モーランと若い巡査が彼が観ていたドラマからヒントを得て名付けたその猫の腹が大きくなってきた。
 それでだ、部長は巡査に言った。
「子供出来たな」
「そうですね」
「子猫出来たらどうしようか」
「里親探します?」
「そうするか、モーランが子猫連れて来たらな」
 今は鋼板の中でくつろいでいる猫達を見て言った。
 暫く経ってモーランの腹はさらに大きくなった、そしてある日交番の中に入って来て警官達に鳴いて来た。
「ニャア~~」
「お願いがある感じですね」
「そうだな、これだけお腹が大きいと」
 それならとだ、部長はモーランのお腹を見て言った。
「もうな」
「産まれますか」
「産むなら安全な場所で産みたいな」
「だからこっちに来たんですか」
「俺達がいつも世話してるから信頼してくれてるか」
「だったら」
 それならとだ、巡査は部長に言った。
「場所はな」
「用意しますか」
「座布団を出す、そうしたらな」
「モーランは自分からですか」
「そこに行く、じゃあな」
 それでというのだ。 
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