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恵体シスター

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第四章

「まさにプロレスラー並のトレーニングしてるな」
「それに食う量凄いしな」
「大体五千カロリーは摂ってるんじゃねえか?」
「じゃあな」
「あの人本当に元プロレスラーか」
「これは下手に言い寄ってもな」
「力づくなんて絶対に無理だな」
 おかしなことを考える輩もいた、しかし。
 その話を聞いて誰もがそれは諦めた、そして告白する者もだ。
 アンジェラのその話を聞いていなかった、それまでは考えていた者も彼女がシスターであることに加えて元プロレスラーであることを聞いてだった。
 しなくなった、それでだった。
 アンジェラは神に仕え講義も行い運動もしていった、教会では普通に身体も動かしていたが非常に重いものもだ。
 軽々と持っていた、それで神父は彼女に言った。
「そのお力なら」
「何でしょうか」
「私は心配はしますが」 
 気付いていないアンジェラに話した。
「それでも安心出来ますね」
「どういうことでしょうか」
「申し上げたまでです、知らず知らずの誘惑は」
 アンジェラのそれもというのだ。
「備えた力によって打ち消されますね」
「キリスト教にそうした言葉はないですが」
「世の中の言葉です」
 神父はアンジェラに穏やかな笑顔で答えた。
「もっと言えば私が思った言葉です」
「神父様がですか」
「はい、これからも神にお仕えして」
 そしてというのだ。
「お身体を鍛えていって下さい」
「はい、そうしていきます」
「その様に、では」
「これからも神にお仕えしていきます」
「その貴女に神のご加護があらんことを」
 神父はアンジェラの為に祈りもした、その顔は暖かいもののままだった。
 後にアンジェラは日本でよき人と巡り合い結婚することになった、そして彼と幸せな家庭を築いた。だが夫も彼女のパワーには警戒して彼女を怒らせたりすることは避けた。彼女に備わっているものは信仰や恵まれた美貌に肢体だけではないことをわかっていたから。だがアンジェラだけはそのことに気付かないままだった。


恵体シスター   完


                   2020・11・15 
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