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生まれた時から知っている

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第一章

               生まれた時から知っている
 ベッカーはシェーン=コネリーにとって親友だった、ベッカーはアイリッシュハウンドの雄犬で十歳になっていた。
 しかしだった。
「もうなんだ」
「そうだ、もうベッカーは病気なんだ」
「助からないのよ」 
 シェーンの両親のロンとリサは我が子に沈痛な顔で話した、ベッカーは末期癌になってしまっていたのだ。
 茶色の毛の大きな犬だが今はとても苦しそうにしている、余命幾許もないことは最早明らかであった。
「だからね」
「もうな」
「安楽死をしてね」
「楽になって死ぬのよ」
「安楽死って何?」
 息子は両親に問うた、見れば親子三人共金髪である。目は父と息子は青で母のそれは緑となっている。
「それは」
「苦しまずに死ぬことだよ」
 父は息子にわかりやすく話した。
「それは」
「それじゃあベッカーは」
「そう、苦しまないでね」
 そうしてというのだ。
「死ねるんだ」
「ベッカー死んじゃうんだ」
「死ぬけれどだよ」
「苦しまないでなんだ」
「死ねるんだ」
「ベッカーが今凄く辛いのはわかるわね」
 母は息子に優しい声で話した。
「シェーンも」
「うん、凄く辛そうだよ」
 シェーンもわかった、ベッカーは今寝転んで息を荒くさせていた。それを見れば彼にもそのことはわかった。
「とてもね」
「けれどもう苦しまないでね」
「死ぬんだ」
「助からないから」
 末期癌故にというのだ。
「だからね」
「それじゃあ」
「最後まで一緒にいてあげましょう」
 母は息子にこうも話した。
「シェーンはベッカーのこと大好きでしょ」
「うん」 
 そうだとだ、息子は母に答えた。
「ぼくベッカー大好きだよ。友達で家族だから」
「そうよね、お友達で家族だったらね」
「最後まで一緒にいてあげないと駄目なんだ」
 父も話した。
「だからだよ」
「僕達最後の最後までなんだ」
「ベッカーが死ぬまでね」
 その時までとだ、また父は話した。
「一緒にいてあげるべきなんだ」
「それでだね」
「そう、一緒にだよ」
「最後までだね」
「これからそうするんだ」
「それじゃあ」
 シェーンは泣きそうな顔だったがそれでもだった。
 父の言葉に頷いた、そしてだった。 
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