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歪んだ世界の中で

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第七話 洋館の中でその十二

「素晴らしいです」
「素晴らしい、そこまで」
「上城君は原石だったんですよ」
 宝石のだ。それだというのだ。
「まだ磨かれていなかった。ですが」
「それがなんだ」
「そうです。磨かれてきていますから」
 それで変わってきたというのだ。そしてだ。
 ただ痩せて体力がついただけではないとだ。真人はさらに述べた。
「そしてそれはお顔やお身体だけでなくです」
「他にもあるかな」
「勉強をされてますよね」
「うん、最近は毎日夜にじっくりとね」
「成績も上がりますよ」
 それもだというのだ。今度は。
「勉強も継続ですから」
「それでなんだ」
「すぐに結果は出なくても」
 それでもだというのだ。
「あがってきます」
「じゃあ」
「もう夏休みの宿題は終わりました?」
「うん、これもね」
 このことについてはだ。真人に今言われてからだった。
 そのうえで気付いてだ。そして自分から言うのだった。
「この前終わったよ」
「もうですね」
「これまで夏休みぎりぎりまでしてたけれど」
 できなかったししなかったからだ。これは。
「それがね」
「今年はですね」
「うん、終わったよ」
 明るい笑顔でだ。希望は答えた。
「それで今は復習とか予習をしてるけれど」
「そちらはどうですか?」
「何か。最初はわからなかったけれど」
 それがだというのだ。
「わかってきたかな。少しずつだけれどね」
「そうなってきていますね」
「うん。本当に最初はね」
 どうだったかとだ。また言う希望だった。
「何もわからなかったけれど」
「毎日繰り返ししていると」
「わかってきたし覚えてきたよ」
 覚えてきた、そうなってきたというのだ。
「じゃあやっぱり」
「勉強も継続です」
「毎日予習と復習をしていたら」
「わかります。僕もそうしていますから」
「友井君は入院してても?」
「はい、しています」
 そうしているとだ。真人はにこりと笑って希望に答えた。
「少しずつですが」
「いや、少しずつでもさ」
 どうかとだ。希望は驚いた顔で答えるのだった。
「凄いよ。やっぱり友井君は凄いよ」
「凄いですか」
「うん、いつも思うことだけれどね」
「そう。僕を凄いと言ってくれるのは」
「それは?」
「遠井君だけですよ」
 微笑みでだ。希望に言ったのだった。
「僕にこう言ってくれるのは」
「そうなんだ」
「僕も。一人ですから」
「友井君も?」
「そうです。遠井君だけが友達なんですよ」
「僕だけって」
「僕も誰からも相手にされなかったんですよ」
 暗い顔になってだ。真人は話した。
「家でもそうなんですよ」
「そういえば友井君のお家は」
「父が。ああですから」
 寂しく。辛さを帯びさせた笑顔になってだ。真人は話した。
「家族はいつも大変で」
「おじさんそういえばもう」
「はい、家を出ました」
 こうだ。希望は辛い顔で希望に話した。 
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