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幸せが逃げて当然

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第二章

 明日はパートから帰って一旦家に戻ってから姉夫婦の家に行ってそのうえでタマを引き取ろうとした、だが。
 パートから帰ると家の玄関にだった。
「なっ・・・・・・」
「ニャア~~~・・・・・・」
 ケースに入れられたタマがいた、美里の家の玄関の前にぽつんと。そのタマをすぐに家の中に入れて。
 美里は姉に抗議すると姉は平然と言った。
「いらないからあんたにあげたのよ」
「あげたって捨てたんでしょ」
「違うわよ、あんた昨日私が殺処分しろって言ったら反対したでしょ」
「そんなの当然でしょ」
「それならって思ってあんたにあげたのよ」
 携帯の向こうでこう言ってきた。
「後は宜しくね」
「今から姉さんの家に行くつもりだったけれど」
「猫引き取りに?」
「そうだったけれど」
「じゃあ丁度いいわね、じゃあね」
 姉、茶色の癖のある髪の毛を短くしていて顔立ちは妹に似ているが遥かに人相の険しい怜保はここまで言って電話を切った、美里は怒り狂ったが。
 まずはタマをケースから出してだった。
 すぐにペットショップに行ってそこでトイレやご飯そういったものを入れる皿等を買って世話をはじめた。そのうえで。
 仕事から帰って来た夫に事情を話した、すると夫はこう言った。
「じゃあ今日からはね」
「タマはうちの娘ね」
「そうしよう」
「ええ、そうよね」
「あとタマは女の子でしかもお婆さんだから」
「猫で十五歳だとね」
 美里は今は自分達が座っているテーブルの傍に丸くなっているタマを見た、身体の上は濃い灰色で下は白の模様だ。
「もうね」
「お婆さんだね」
「ええ、だから大事にしないとね」
「飼うにしてもね」
「絶対にね」
「じゃあ家はバリアフリーを考えていこうか」
 夫は自分から提案した。
「そうしようか」
「もうある程度はしているしね」 
 妻は夫に確かな声で頷いて応えた。
「それをね」
「やっていこうね」
「元々はお父さんとお母さんを家に迎えること考えていたけれど」
 それでもとだ、妻は夫に話した。
「けれどね」
「もう、だね」
「お母さんもタマを殺処分しろって言ったから」
 だからだというのだ。
「もうね」
「一緒に住まないね」
「命を大事にしない人が他のことを大事にするかっていうと」
「命の価値を考えると」
「そうは思えないでしょ」
「絶対に信用出来ないだろうね」
「約束とか信頼も大事にしないでしょうし」
 だからだというのだ。
「もうね」
「絶対にだね」
「一緒に暮らせないから」
 もうこのことを確信したからだというのだ。
「お父さんはともかくね」
「お義母さんはだね」
「もういいわ」
 完全に縁を切った、そうした言葉だった。
「本当にね」
「そういうことだね」
「ええ、じゃあこれからは」
「タマと暮らしていこう」
 夫婦の考えは完全に定まった、こうしてだった。
 美里と洋太郎はタマと暮らしはじめた、タマは最初は家に馴染んでいなかったがそれが次第にだった。
 馴染んでいき暫くするとすっかり二人の家族になっていた。二人はタマと共に幸せに暮らす様になったが。 
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