魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~
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Saga21再起~One step of return~
†††Sideヴィータ†††
ルシルとアイリが殺されて、“T.C.”の幹部だったレオン、フォード、プリムス、アーサーも一緒に遺体で見つかった。そんでルシルとアイリを殺したと思しき“T.C.”のリーダーと、ひょっとしたら同じ場所に居たかもしれないガーデンベルグの行方は未だ知れず。
幹部はほぼ全滅。さらにルシルとアイリを殺したことで世論は一気に反“T.C.”に傾いた。そんなわけで“T.C.”は完全に雲隠れしちまったから、特務零課の協力することになったあたしらチーム海鳴はかなり暇をしてた。
「じゃあシフト通り八神家は本日午後から明後日午後まで休暇ね。・・・悪いね、せっかく協力してもらってるのに何もやる事なくて」
特務零課の副隊長だったルシルが死んじまって、代わりにルミナが部隊員のシフトを調整することになったわけだ。零課の正式メンバーは基本的に本局からは出られねぇけど、あくまで臨時部隊員なチーム海鳴は自宅に帰ることが許されてる。
「気にしなくていい。我々としても力を貸したいからここにいる」
「ええ。ルシル君とアイリちゃんを殺した、リーダーとガーデンベルグを捕まえるために私たちは参加したんだもの」
「そういうこった。今の退屈な時間は、リーダーとガーデンベルグ、それに構成員が活動を再開した時のための充電期間だって考えてんだからな」
オリジナルセインテストのクローンだったルシルやオーディン。現行のクローンが死んだ場合、それまでの歴代クローンの記憶や魔術、複製したものを引き継いだ新しいクローンが作られるって言ってたルシル。ソイツがガーデンベルグやリアンシェルトを斃せるかどうかは判んねぇし、いつ姿を見せるかも判んねぇんだから、あたし達が先にぶっ倒してもいいはずだ。つうか、殺る。あたしらの家族を殺し、はやての心を壊した奴らは絶対に許さねぇ・・・。
「問題はリーダーだよな。きっと、他の幹部たちと同じように古代の魔術師のクローンだろうけどさ」
「管理世界人の遺伝子データバンクと照合して、レオン達の遺伝子情報がどこの管理世界の遺伝子特徴にも当てはまらないらしいからな」
「管理外世界人である可能性は捨てきれないけど、ルシルやフォルセティ、ヴィヴィオっていう古い時代の人間のクローンは実在するからね。生まれ変わりよりクローンであると言った方がまだ信頼性があんだねこれが」
ルミナの言う通りだな。いくら生まれ変わりでもオリジナルと全部がそっくりなんて(シャルは例外中の例外だな)まずありえねぇからな。クローンって言われた方が納得しやすいってわけだ。
「まぁとにかく、頼りにしているからね。んじゃお疲れ」
ルミナやセレス達と「お疲れ~」って挨拶を交わしながらオフィスを出る。本部ビルから出るためにエスカレーターホールへ向かう途中、「あ、今から帰り?」って声を掛けてきたフェイトと、「お疲れさま~」って手を振るアリシアとバッタリ会ったから、あたしらも「お疲れさん」と返した。
「そういやさ。エリオとキャロ、どんな感じだ?」
「あー、うん。やっぱり落ち込んだままだよ」
「ルシルやアイリと最後に会ったのが、エリオとキャロ、スバルとティアナだからね」
「これからT.C.の追撃を行うって言っていたルシルとアイリに、無理にでも付いて行けばよかったって後悔してる」
「無理もないわね・・・。最後に逢って、そして話したのだから、余計に責任を感じちゃうわよね」
ルシルはセインテストの宿願のため近い内に死ぬ。それはみんな知ってて覚悟もしてた。けどさ、ルシルは“エグリゴリ”との最期の戦いに挑むときはちゃんと挨拶してからって言ってたのに、それを果たすことなく死んじまった。だから今のイレギュラーな状況はあたしらはもちろん、管理局を混乱させるには十分だった。
「エリオ達には、気にするな、としか言えんが・・・」
「うん、大丈夫。2人もそうだし、スバルとティアナももう子どもじゃないから、必ず立ち直ってくれるよ」
「ていうか、立ち直ってもらわないと困る。私たちだって立ち直ったんだから・・・。それよりも問題はそっちの方が大きいでしょ? はやて、もう2週間以上も家から出ないって話だし」
アリシアにそう言われたあたしら八神家は顔を見合わせて、シャマルが「どうすればいいかしら?」って溜息を吐いた。はやてはルシルの死で精神を病んで、今は休職中だ。葬式の時も車椅子でしか動けなくなっちまってたし、今は自分の部屋に引き籠ってる。
「主はやてが自力で立ち直るのを待つしかないのだろうが・・・」
「何か力になれないかな~・・・?」
「アインスとリインも、いつまでも休ませておくのもね」
「ルシルのバカが、逃げるような真似をしなけりゃまだ・・・」
あたしはルシルへの怒りで自分の左手の平に右拳を打ち付けた。誰も口にはしねぇけど、ルシルが招いた現状に怒りを覚えてる奴もいるはずだ。
「はやてを立ち直らせるにはやっぱり・・・目的が要ると思う」
「「「目的・・・」」」
あたしとシャマルとアギトが繰り返し、シグナムが「やはりか。しかし・・・」って唸ってからオフィスを見ると、あたし達もフェイトとアリシアもオフィスに振り向いた。
「シャルと、ミッドに居るトリシュは復讐の鬼として。私たちは・・・管理局員としての義務や、ルシルとアイリの無念を晴らすため」
「それは理解しているが、主はやてには・・・」
「難しいわ。はやてちゃんの人生そのものだった目的は、ルシル君と正式に結ばれて夫婦になること。それがいきなり根底から崩れて・・・」
「我らが主に復讐は不可能だ。お優しすぎる。ゆえに今、シャルやトリシュタンのように怒り狂ってはおらず、ご自身を責め続けていらっしゃるのだ」
「だけど、はやてにも何か目標を持ってもらわなきゃ・・・」
「本当に心が壊れちゃうぜ?」
(はやて・・・)
重い空気が流れたまま、休憩が終わるってことでフェイトとアリシアはオフィスに戻っていった。2人を見送った後は改めて本部ビルを出て、ミッド首都次元港往きの次元航行船に乗った。んで、首都次元港からはレールウェイで八神邸のある南部のステーションへ。そっからは全員が乗れるバンタイプのタクシーを拾って家まで直行だ。
「フォルセティはもう帰ってる頃かしら」
仕事であたしら家族が全員いないとき、フォルセティは基本シャルんちで世話になるよう頼んである。まぁフォルセティももう14歳だ、1人で留守番も出来るだろうけど今は難しい。理由は腹立つことに、最後の大隊の幹部のキュンナ、グレゴール、エーアスト(本名はアインスだが、うちのと被るから奴の使った偽名を使ってる)の3人が本局から完全に脱走したかもしれないってことで、再び狙われないかと局と聖王教会がピリついてるからだ。
「おそらくな。・・・フォルセティのためにも、酷だろうが主はやてに立ち直ってもらわなければ」
「だな」
タクシーの運転手への料金の支払いを済ませたシャマルの「お待たせ。さ、早く入りましょ」って言葉に頷いて、玄関のドアノブに手を掛けたあたしは1回だけ深呼吸。リインやアインスからは、はやてに関してのメールは来てねぇ。つまり現状変わらずってこった。だから元気な声か静かな声かで迷ったんだが・・・。
「よし。たっ、ただいま~・・・」
元気な声で挨拶をしようとしたけど気付けば静か~に声を出して、ドアもゆっくりと開けちまってた。そんなあたしに「何をしている。早く入れ」ってシグナムが急かしてきやがった。あたしの代わりにドアを開けたシグナムがあたしの体を押しながら玄関に入ろうとした。
「ちょっ、押すなよ! シグナ――え?」
シグナムに文句を言おうとしたけど、今まさにリビングに入ろうとしてる人物を見てあたしは目を見開いた。
「おかえり、ヴィータ、シグナム、シャマル、ザフィーラ、アギト」
「ルシル・・・!?」
†††Sideヴィータ⇒はやて†††
布団を頭まで被って、深い闇の中で小さなモニターを見続ける。映るってるのはルシルや私たちで、自宅の庭でバーベキューをやってる様子の映像や。
『ほらルシル、あーん♡』
『あ、あーん』
『わ、私も! ルシル君、あーん!』
『あーん』
『『美味しい?』』
『美味い』
私が考えてたあーんを、真っ先にアイリが実行したから負けじと私も実行したんやったな。そっからは私とアイリであーんを繰り返して、ルシル君を困らせて・・・。楽しそうやなぁ、ルシル君も、アイリも、私も、みんなも。モニターの中のみんなは笑顔で、ホンマに楽しそうや。
――T.C.がわざわざ本局に乗り込んでまで見た捜査資料。ルシル君が無理やり話を終わらせようとした何か。・・・このまま調べたら、何かが起こるってゆう気はしてる。そやけど私は・・・管理局員や――
そんで次は、機動六課の同窓会。当時の構成メンバーを集めはしたけどあんまり遠出は出来ひんってことで、ミッドと本局からも近い第5管理世界ファストラウムのリゾート諸島で開いた。いくつもある小さな島の1つを貸し切って、いくつもあるコテージで寝泊まりするってゆう内容や。
豪華なホテルで優雅に寝泊まりってゆうのも考えられたんやけど、料理の出来る子がたくさん居ったし、魚釣りや森の中で獲れる食べ物、それに食料持ち込みもOKやったから、思い出も多く残せるってことで、ホテル泊りは却下になったんやったな。
『ほら、フォルセティ。もうちょいやよ!』
『その調子だ。バタ足を続けるんだ』
水着姿の私とルシル君で、初めての海水浴とゆうことで泳げへんかったフォルセティに泳ぎ方を教える特訓の様子が映される。モニターに映る私の視線がこちら――撮影係を買って出たアインスに向いて笑顔を浮かべた。
少しカメラが私から外れて、沖の方に向けられた。水上バイクを運転するヴァイス陸曹と、牽引されてるバナナボートに乗るヴィータ、アイリ、アリサちゃん、アリシアちゃんが映った。
次は近くのなのはちゃんとフェイトちゃん。2人は私やルシル君と同様、泳げへんヴィヴィオに泳ぎの練習をさせてる。私の視線とアインスのカメラがそっちにも向いて、なのはちゃん達が笑顔を向けてくれた。
機動六課の同窓会ってゆうことで恋敵のシャルちゃんとトリシュは居らへんし、アイリも遊びに夢中。ルシル君と夫婦っぽいことが出来て大満足やったな。
――あくまで状況証拠に過ぎひん。黒のテスタメントが実はステアちゃんとルシル君の2人組やってことも考えられる。もしかしたら、ひょっとすると、あるいは・・・――
毎日毎日、私は思い出の中に閉じこもる。解ってる、こんな生活を続けてたらアカンてことくらいは。そやけど・・・。
――これまでの当たり前の日常を失うかもしれへん、そんな恐怖が今の私を襲ってた――
「なん・・・で・・・」
あの時、どうして私は踏み止まらへんかったんや。予感はしてたんや、何かが終わるって。それやのに私はルシル君が隠そうとしてた秘密を暴いた。ルシル君がかつて神父服を着てたって事実を知ってたのは私だけで、それを黙ってればルシル君は局から逃げず、“T.C.”からの呼び出しにもアイリとの2人だけで向かおうとせえへんかったかもしれへん。
――はやて。このような形での別れは俺にとっても辛いが・・・さようならだ――
モニターに映る私とルシル君は幸せそうに笑ってる。それはもう二度と叶わぬ夢。また目から涙が溢れ出てきて、「う・・ぅ・・うぅ・・・」嗚咽も漏れだす。胸の内に渦巻くのは悲嘆と後悔。私の選択の所為でルシル君とアイリは殺された。2人の遺体は最後まで見られへんかったけど、シグナム、ヴィータ、シャマル、ザフィーラ、アインス達の様子から酷いものやったってことは判った。
「ごめ・・・さい・・・」
視覚や聴覚を封じるかのように布団の中で丸まって、両膝の間に顔を埋める。このまま深い眠りに着きたい、そう思うた時、コンコンコンとドアをノックする音が聞こえてきた。アインスかリインがいつも通りに食事を持って来たんやろうけど、今は食べたない・・・。
「アイン――」
「はやて」
「っ!!?」
私を呼ぶ声に目を見開く。そんなわけあらへん。だって「ルシル君・・・?」は死んだんや。そう、思い出に引き籠り過ぎて幻聴が聞こえただけ。そう思うてるのに私はベッドから降りて、よろよろとドアの方へと向かう。
「はやて。開けるよ?」
「っ!」
ガチャッとドアノブが回って、ゆっくりと開いてくドアの向こうには、「ルシル君・・・」が立ってた。夢か幻か判らへんけど、部屋に入って来たルシル君に歩み寄ろうとした。
「ぁ・・・!」
「か――はやて!」
床のカーペットの盛り上がりに躓いて転びそうになった時、ルシル君が「ほら、足元注意だぞ」って抱き止めてくれた。私は「ご、ごめんな!」って謝りながらも胸から顔を離すことなくピッタリと頬を当てて、その優しい鼓動、温もり、香りを実感する。
「ごめんな、ごめんな・・・」
「それは何に対しての、謝罪なんだ?」
ルシル君が私の背中に両腕を回してきてくれたから、私も腕をルシル君の背中に回してギュッと抱きしめた。
「私は・・・私が、余計なことをしたから・・・! ルシル君とアイリは・・・!」
「大丈夫、大丈夫だから。はやてが気にすることじゃない。それに、俺はここに居る」
そう言ってルシル君は私の頭を撫でてくれた。いつもの気持ちの良い撫で方や。私は嬉しさの反面辛くなってきて、「ごめんな・・・ごめん・・・ごめん」って謝り続ける。今わたしが抱きしめてるルシル君は夢でも幻でもあらへん。そやからホンマは解ってる・・・。ルシル君やないってことは・・・。
――こんな形ではやてと別れないといけないことに本当に申し訳なく思っている。はやて、もし俺が居なくなったことで、そして死んだしまったことで責任を感じるようであれば、それは違う、絶対に違うと言うよ。別れは突然だったが必然なんだ。確かに形としては最悪かもしれないが、自白したのは俺で、逃げたのも俺自身。責任はすべて俺にある。だからはやて、自分を責めないでほしい――
ごめんな、ルシル君。無理やった・・・。やっぱり自分を責めてまうよ。
――はやて。こんな俺に好意を抱いてくれてありがとう。みんなを騙して、嘘を吐き続けた俺には勿体なさすぎる女性だった。今でも君と初めて出会った日を鮮明に思い出せる。初めて会った俺を家族として招き入れてくれたことはもちろん、20年近く一緒に過ごせたことは、俺にとって最大の幸福だった――
私もや。ルシル君との出会ってあの日は、今でも宝物みたいに大事な思い出。そんで一緒に過ごしせたことも幸せやった。
――俺への想いを断ち切れ、新しい恋を見つけろ、なんて言わない。ただ、幸せになってほしい。歩くロストロギアなんて言われているが、君はどこにでもいる普通の女性だ。俺が死んだことでしばらくは立ち直れないかもしれない・・・かな? でも大丈夫だと信じている。シグナム達がいるし、成長してさらに強く優しくなったフォルセティもいるからな。きっと君を支えてくれる。
最後に。はやて。君に最大限の感謝を。今まで俺に幸せをくれて、ありがとう――
「ホンマにごめんな・・・」
「いいんだよ、はやて。俺はずっと一緒だから。泣かなくたっていい」
自分に対する情けなさと、この子の優しさにまた涙が溢れ出てくる。ルシル君の肩越しをチラリと見れば、不安そうに私たちを見てるアインス達の姿が。これはアインス達の考えたことやろか、それともこの子の考えたことやろか・・・。もしそうなら母親失格過ぎや。いやもう手遅れレベルか・・・。
「こんな情けない母親でごめんな、フォルセティ」
ルシル君の、ううんフォルセティの頭を胸に抱いてギュッと抱きしめる。フォルセティはハッとしたけどすぐに「何のことか判らないが・・・」って、ルシル君のフリをし続けようとした。今のフォルセティは、ルシル君の服を着たり香水も使ってたり、変身魔法なんか身長もルシル君の157㎝に合わせてる。フォルセティ、成長期に入って今は165㎝はあるからな。あっという間に追い越されてしもた。
「もうええんよ、フォルセティ。ルシル君の真似をせえへんでも。私のこと、支えようとしてくれたんやね?」
「・・・母さん」
「うん。ごめんな。息子にこんな真似をさせて、ホンマに母親失格や」
「そんなことないよ。・・・母さんが、どれだけ父さんを大切に想っていたか知ってるから。だから落ち込んでも仕方ないよ」
「それでも、子どもにこんな父親の真似をさせるような醜態を晒した。変身魔法も解除してええよ」
私がそう言うとフォルセティは「ちょっと待ってて。父さんの服破けちゃうから着替えてくる」って涙声でそう言って、私の部屋から出て行った。その間、私は「みんなも、ごめんな。心配、迷惑をかけた」って頭を下げて謝った。
「「はやてちゃん!」」
「「はやてー!」」
シャマルとリインとヴィータとアギトが勢いよくハグしてきてくれたから、「ホンマにごめん!」って抱き止めた。シグナムは「おかえりなさい、主はやて」って、そんでアインスも「復帰お待ちしていました」って微笑んでくれた。狼形態のザフィーラは私の側で伏せたから、「ザフィーラもごめんな」って頭を撫でる。
「情けない主でごめんやった。そやけど、私はもう立ち上がらなアカンよな。これ以上引き籠ってたらルシル君、それにアイリにも笑われてまう」
ホンマはまだ引きずってるルシル君とアイリの死。それでももう夢から覚めへんと。辛くても悲しくても、ルシル君とアイリの果たせへんかった使命を果たす。それを私の務めとしたい。私をハグしたまま離れへんヴィータ達をよしよしって撫でてると、「母さん」ってフォルセティが戻って来た。
「おいで、フォルセティ。無理をさせてごめんやったな」
「ううん。無理じゃないよ。これは僕にとっての一か八かの賭けだったんだ。僕が父さんのフリをして母さんがどんな反応をするか。父さんとして母さんが受け入れた時、僕は一生フォルセティとしてじゃなくて父さん――ルシリオンとして生きていこうって思ってた。だけど母さんはやっぱり強いよ。ちゃんと立ち直ってくれた!」
そう言うて袖で涙を拭うフォルセティが愛おしく抱きしめたくなったから「ほら、おいで」って呼ぶんやけど、「僕、もう小さな子どもじゃないからもう1回は無理」って首を横に振った。
「シグナム、アインス」
「「はい、主はやて」」
「ちょっ!? シグナムお姉ちゃん、アインスお姉ちゃん!?」
フォルセティの腕をそれぞれシグナムとアインスが抱き止めて、私のところに連行してきてくれた。ヴィータ達がニヤニヤしながら離れて、「母さんずるい!」ってフォルセティは抵抗する。そやけどシグナムが「腰が入っていないぞ。それでは簡単に移動させられる」ってお説教。
「お姉ちゃん達2人がかりでどのみち無理!」
「はい、フォルセティ~♪」
腕を広げてフォルセティを迎えようとしてたら、私たちの携帯端末がメールを受信したことを知らせるコール音を一斉に流した。収まると同時に今度は通信コールが入ったから、「はい。八神です」って応じた。
『え、はやて!? もう大丈夫なの!?』
「うん、アリサちゃん。ご心配とご迷惑をおかけして申しわ――」
『待って、はやて! 今すぐに出れる!? T.C.が活動を再開したわ!』
活動を再開ってゆうことに引っ掛かりを覚えたけど、私が夢に閉じ籠ってる間は活動してへんかったんやろか。とにかく、“T.C.”が動き出したんなら「了解! 八神家、出撃します!」や。
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