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大雨の後で

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第二章

「しっかりと食べてね」
「飲むのね」
「そうしなさいね、それでお昼はね」
 ここでもこの時のことを話した。
「お外に出たら駄目よ」
「そうなのね」
「そうよ」
「じゃあ今日はもうお外に出たら駄目なの?」
「いえ、雨が降った後はいいわ」
「雨が降ったらなの」
「その後でね」
 娘に微笑んで話した。
「お母さんと一緒に出ましょう」
「お母さんとなの」
「ええ、そうしましょう」
「雨が降ったらなの」
「そうよ、その時にね」
「雨が降ったらって」
「降った時にわかるわ」
 その時にというのだ。
「だからそれまではね」
「宿題していればいいのね」
「そうよ、宿題は今のうちにやっておけば」
 学校のそれも塾のそれもというのだ、麻里佳は成績もそれなりにいいのでこのことも安心している。心配なのは運動神経が悪くてよく転んだりすることだ。
「後で楽になるわよ」
「宿題が残らないから?」
「夏休みが終わるまでにやっておかないと」
 さもないと、というのだ。
「やってなかったのって先生に怒られるわよ」
「それは嫌ね」
「じゃあね」
「今のうちになのね」
「やっていって」
 そしてというのだ、まだ夏休みがはじまって少しだがあえてこう話した。
「楽になりましょう」
「それじゃあ」
 麻里佳はここでも母の言葉に素直に頷いた、そうしてだった。
 自分の部屋で宿題にかかった、明菜はそんな娘を見ながら微笑んでいた。そうして自分は洗濯ものを家の中に入れて。
 完全に乾いているものは畳んでまだのものは家の中で室内干しにしていた、すると。
 三時半を過ぎた頃にだった、もうその時には明菜は洗濯ものを畳むことから一休みしてキッチンで読書に入っていたが。
 雨が降ってきた、最初はぽつぽつとだったが。
 すぐに土砂降りになった、外は一面豪雨の世界となり激しい雨音が場を支配した。麻里佳はその雨を見て言った。
「大雨ね」
「夕立よ」
「夕立?」
「夕方に降る雨で夏に多くて」
 つまり今の季節にとだ、母は娘に話した。
「それでこうして凄い勢いで降るの」
「そうなの」
「正確に言うと夕立には少し早いかしら」
 時間的にはというのだ。
「まだね、けれどね」
「それでもなの」
「そう言っていいわね、ゲリラ豪雨と言ってもいいわね」
「ゲリラ豪雨?」
「突然降るこうした雨よ」
「そうなの」
「けれど少し時間が経ったら」
 激しい雨、それが降っていてもというのだ。
「止むわよ」
「そうなの」
「強い雨でも」
 それでもというのだ。
「止むわ、だからね」
「それでなの」
「少し待っていてね」
「そうしたら止むの」
「ええ、そうなるわ」
 こう言ってだった、明菜は娘と共にその土砂降りの雨を見た。雨は窓の外で激しい音を立てて降り続けていたが。 
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