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歪んだ世界の中で

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第二話 二人のはじまりその六

「だからね。希望は心配しなくていいの」
「お金のことは」
「そう、他のことも」
「他のこと?」
「心配しなくていいの」
 それはだとだ。千春はここでも言うのだった。
「だから二人でね」
「楽しくなんだね」
「そう、一緒にいよう」
 こう希望に言ってだ。そうしてだった。
 二人は商店街の中を歩いていった。そうしてだ。
 夕方、夜に近くなるまで共にいてだ。夜になってだ。
 千春はだ。こう希望に言ってきたのだ。
「ねえ、もう夜ね」
「そうだね。何か急に夜になったけれど」
「じゃあ。今日は」
 ここでだ。残念そうな顔になってだ。そのうえでだ。
 千春は希望にだ。こう言って来た。
「さようなら」
「うん、じゃあ」
「また明日会おうね」
 それはだ。明日にだというのだった。
「明日またね」
「じゃあ送るよ」
 自然にだ。希望は千春にこう申し出た。
「家までね」
「あっ、大丈夫だから」
「大丈夫って。夜道は危ないよ」
 それは神戸でも同じだ。夜はよからぬ者が多く出て来る時だからだ。
 それでだ。彼は申し出たのだ。しかしだった。
 千春は至って何でもない様子でだ。こう述べたのだった。
「気持ちだけでいいから」
「けれど夜は」
「だって。すぐに戻れるから」
 だからこそ平気だと述べる千春だった。
「希望は何も心配しなくていいの」
「けれどそれは」
「じゃあどうするの?」
「家、何処なのかな」
 どうしてもという口調でだ。希望は千春に申し出た。
 身体がいささか前に出ている。そのうえでの申し出だった。
 その申し出をだ。彼はさらに言うのだった。
「送らせてもらうよ」
「そうしてくれるの?」
「だって。君はいつも言ってるじゃない」
「あのこだね」
「そうだよ。男だから」
 彼とてそうだとだ。そうした口調になっていた。
「だから本当に」
「そう。わかった」
 希望の言葉をここまで聞いてだ。千春もだ。
 こくりと頷いてだ。それから彼に言った。
「希望がそこまで行ってくれるのなら」
「送らせてもらってもいいね」
「希望のことがわかるから」
 こうも言ってだった。
「希望は一緒にいてもおかしなことはしないから」
「そのことがわかってくれるからなんだね」
「そう。希望一緒にいて」
 今度はにこりと笑っての言葉だった。
「千春のお家のところまで」
「うん、じゃあ」
「すぐだから」
 ここでだ。こうも言う千春だった。
「千春のお家まですぐだから」
「えっ、すぐって」
 千春の家は山のところにあると聞いていた、それでだ。 
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