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召喚されし帝国

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陰謀の渦

フランソワ5世の乾杯の演説が終わると同時に周りにいた貴族達は再び世間話などに興じ、ノイラート達も周りの貴族達との話し合いに戻った。

すると

「やぁ、大使殿楽しんでおりますかな」

「おぉ、これはこれはシャルル王子」

「おかげさまで、我々は元はこの世界の人間ではないので、別世界であるこちらの世界の話は実に興味深いです」

第二王子であるシャルル・オルレアン公がノイラートに話しかけ、ノイラートとバイエルライン大佐はそう言った。

「そうかそれは良かった。あぁ、そうだこの機会に私の家族を紹介します。紹介します、私の妻、そして娘のシャルロットです」

「シャルロット・エレーヌ・オルレアンです、はじめましてノイラート大使、バイエルライン大佐殿」

「はじめまして、Fräuleinオルレアン」

「かの有名なオルレアン公のお嬢様に挨拶を賜り歓迎の至です」

シャルルの娘であるシャルロット・オルレアン(後のタバサ)は礼儀正しく、ノイラートとバイエルライン大佐に挨拶をし、二人は小さいながらも礼儀正しく自分達に接したシャルロットに敬意を払いそう挨拶を返した。

「しかし、よく出来た娘さんですなオルレアン公」

「えぇ、しかもシャルロットは魔法の才能も高く、親バカと思われるかもしれませんが私達の自慢の娘です」

「成る程…」

(やはりこの世界は魔法の才能が1番評価されるのだな…)

話を聞いたノイラートは、そう心の中で思った。

すると

「あの、バイエルライン大佐」

「うん、なんですかな姫様?」

「よろしければ一曲踊っていただけませんか?」 

シャルルの娘であるシャルロットが少し緊張しながらも、バイエルラインにダンスの申し込みをして来た、それに対してバイエルライン大佐は姿勢を正し。

「姫君にそう言っていただき光栄です」

バイエルライン大佐はそう言うと、シャルロットの手を取りダンスが行われているホールの真ん中へと赴き、二人はダンスに興じた。

シャルロットは無論、バイエルライン大佐も勇者正しき貴族出身の将校である為、二人とも社交界におけるダンスの作法や踊り方は心得ている為、そのダンスの姿はシャルロットとバイエルライン大佐、年齢が大きく離れている二人ではあったが可憐で美しいダンスだった。


「あの、バイエルライン大佐お聞きしてもよろしいでしょうか?」

「何ですかな、姫様?」

「バイエルライン大佐が来た、ドイツってどう言う国なのですか?」

「どう言う国とは…?」

「大佐の国はハルケギニアとは違う異世界から来た国、しかもメイジが一人も居ない国だと聞いています、だからどんな国なのか興味があるのです」

「成る程…」

ダンスをしながらシャルロットはバイエルライン大佐にそう聞き、それを聞いたバイエルライン大佐少し複雑そうな表情でそう呟くと。

「我が国は…素晴らしい国です、美しい自然に文化、そして高い工業力を持つ…素晴らしい国です」

「そうなんですか…いつか行ってみたいです…ドイツに」

「ふっ、ぜひいらっしゃってください姫様」

バイエルラインは少し笑いそうシャルロットに言った。


バイエルラインとノイラートがオルレアン公の家族と彼の取り巻きである貴族達と接している頃、その姿をアドラーとクラウスの二人のSS将校はじっと見ていた。

すると

「随分と我が弟と短期間で仲良くなっておるな、貴国の大使は」

「これは、ジョゼフ皇太子。このたびは我がドイツとガリア両国の架け橋となり、国交樹立に尽力していただきありがとうございます」

「何、別に礼を言われる事ではない…しかし流石は我が弟だ、持ち前の誠実さと優しさでもう貴国の大使達と仲を築いておるな…それに周りいる貴族達も、すっかり貴国を向かい入れている様だ」

ジョゼフは何処か皮肉めいた口ぶりで、オルレアン公とその周りにたむろし、ノイラート達ドイツの大使と世間話に興じている貴族達を見ていた。

すると

「口では何とでも言えます、しかし本心ではどう思っているか…」

「ほう、悲観的だな大佐殿?」

「我が国は別世界から来た国家、更に魔法文明を持たずに発展して来たこの世界から見たら異質な国家です。表面上は美辞麗句を言いながらも本音はどう思っているか…」

元々ゲシュタポにいたクラウスは人の本音を洞察する能力に長けている為、ノイラートやオルレアン公に対し美辞麗句を言う貴族達の本音を洞察し、そして軽蔑した様子で彼らを見つめながらそう呟いた。

すると

「ふっ、確かにな…誠に愚かな事だ…奴ら貴族は魔法こそ全てと考えて思考が硬直し、対極と事実が見えなくなる傾向がある‥そんな奴らがハルケギニアに存在する全ての国の国政を担うなど、嘆かわしい事だ…」

ガリア王国と言うハルケギニア一の魔法国家の王子とは思えぬ、そんな発言をジョゼフは呟いた。


それから数時間後

舞踏会もお開きになり、各国の大使や貴族達は続々とヴェルサルテイル宮殿からさって行った。

「それではノイラート男爵、我々はこれで」

「ノイラート男爵、貴国の指導者であるヒトラー総統にご伝言を。いつかは、我がトリステインにもぜひ越し下さいと」

「えぇ、伝えておきますモット伯爵」

ガリア王国の大貴族であるヴェルテュ侯爵と、トリステインの有力貴族であり現在ガリア大使を務めているジュール・ド・モット伯爵は馬車に乗る間際にノイラートにそう言い馬車に乗り込んだ。

「では、我々も大使館へ帰るとしよう」

「Ja!」

ガリア王国と言うこの世界の大国と対等の国交を結ぶ事に成功し、舞踏会でも各国の貴族や大使館員ともいい関係を築け、これでガリア以外の国とも国交樹立もスムーズに進むだろうと考えたノイラートは上機嫌で大使館への帰路へつこうとした。

だが

「ノイラート大使、自分は少し寄り道してから帰ります」

唯一クラウスだけは、一人大使館へこのまま帰る事を拒否し、ノイラートにそう言った。

「…分かった、ただしこの世界は首都とは言えベルリンほど治安は良くない筈だ、気を付けろよ」

「分かっております」

クラウスの真意に気付いたノイラートはそ言い、クラウスはそう一言だけ言うとナチス式敬礼をし、ドイツ大使館の大使館員達を迎えに来ていた、メルセデスベンツの一台に乗り夜のリュティスへと消えて行った。


「大佐、本当にこんな所で良いんですか?」

「構わん、それと目立つからお前は此処から離れ、例の公園でまた合流しよう」

そう言うとクラウスは車を離れ、と市内にあるとある娼館へと入って行った。

「いらっしゃい、うちはいい娘が揃ってるよ!」

「そうか、では黒のドレスが良く似合う金髪碧眼の女性を一人頼む」

その注文を聞いた瞬間、支配人の顔つきが変わり。

「…案内するぜ」

支配人はそう言い、クラウスを奥の部屋まで案内し、そして奥の部屋に案内すると部屋の鍵をかけると。

「お待ちしておりました大佐!」

支配人の男は急に姿勢を正しくナチス式敬礼を行った。

実はこの支配人こと、アルベルトSS大尉は大使館設立前にSSが諜報網構築の為、ガリアへと密かに送り込んだクラウスの部下であるスパイであり、この娼館もガリアの裏社会での諜報を行う為に前の支配人に一生遊んで暮らせるほどの金を渡し買い取ったものである。

そう、つまりもうこのガリアでは既にSSの諜報戦が始まっているのだ。

「アルベルト大尉、二日前に調べる様命令をしておいた例の情報は手に入れているか?」

「はい、勿論です」

そう言うと、アルベルトはそう言い、何枚も紙がファイリングされている一冊のファイルを渡した。

このファイルにはオルレアン公の派閥やドイツに対し良い感情を持っていない貴族達の名前と住所、領地の名産、家族構成、恥部などが赤裸々に綴られていた。

「成る程な…うん、ヴェルテュ伯爵は犯罪組織と繋がりがあり、ドイツとつながりを持つジョゼフ殿下を含めた親独派の暗殺を計画しているか…やはり奴は、我々の事を良く思っていなかったか…」

「えぇ、厄介な事です犯罪組織ならば第666SS猟兵大隊で潰せば問題はありませんが、ヴェルテュの方は簡単には行か無いと思います…」

「…まぁ良い、ヴェルテュもその犯罪組織もこちらで処分をしておく、貴様は今度はトリステインの貴族であるジュール・ド・モットと言う男の事を調べておけ」

「Jawohl」

クラウスの命令を聞いたアルベルトがそう言うと、クラウスはファイルを鞄に入れ部屋を出ようとした。

すると

「大佐、せっかくですから本当に此処で遊んで行ったら如何ですか?この世界の女性は綺麗どころが多いですよ」

「生憎、女と他人が出した酒や料理は信用しないのが私の主義でね…」

そう言うとクラウスは娼館を出て行った。

数日後

貧民街の中にたたずむ、ガリアに巣食う犯罪組織の邸宅にヴェアヴォルフ大隊が攻めんこんだ。

「クソ!何処の誰だかしらねぇが全員皆殺しだ!!!やれ!!」

「「「うぉおおおおおお!!!!!」

犯罪組織の親玉はそう言うとその部下達は剣や戦斧、中にはマスケット銃を持ちヴェアヴォルフ大隊を迎え撃った。

だがヴェアヴォルフ大隊は世界初のアサルトライフルと言われるStG44を全員に配備されており、隊員の何人かはMG42を持ち出していた為、もはや戦う前から勝敗は決していた。

固まって一斉に襲いかかって来る犯罪者達などただの的であり、彼らはヴェアヴォルフ大隊の持つStG44とMG42の一斉射撃により一瞬にして挽肉にされた。中には魔法を使い攻撃をしようとした者もいたが、ヴェアヴォルフはそんな隙を一切与えずに容赦なく目の前から迫って来る賊を皆殺しにした。

「そ、そんな…そんなバカな事が!!」

犯罪組織の頭目は火炎魔法による炎弾をヴェアヴォルフ大隊に向けて放ったが、瞬時に大隊は物陰に身を隠し攻撃から身を守った。

「平民共が!!!調子に乗るなよ!!メイジに逆らった罰だ!!この俺の最大火力で焼け死ね!!」

そう言うと頭目は杖を天井に掲げ全魔力を注ぎ巨大な炎弾を作り上げて行った。

だが

パン!

その瞬間、乾いた銃声が鳴り響き、その瞬間犯罪組織の頭目は杖を落とし倒れた。

「お前の攻撃を待ってやる義理はないな」

煙が出るStG44の銃口を下に向けた状態でアドラーはそう一言言った。

「よし!後はこの屋敷に残っている賊の掃討だけだ!誰一人生きて逃すな!」

「「「Jawohl!!」」」

それから数日後

ヴェルテュ侯爵邸

「クソ!!犯罪者共めつかえん奴だ!!!」

「ヴェルテュ侯爵…」

「まぁ良い他にも手はある…何としてでもあのドイツなどと言う不気味な連中を招き入れたジョゼフ派の奴等を殺し、そしていずれ王となるオルレアン公を説得しドイツに攻め入り清浄なる世界を汚そうとする異教徒共を排除してやる!」

ヴェルテュ侯爵は悔しそうな口ぶりでそう言った。
 
因みにヴェルテュ侯爵は異教徒共を排除するなどと言う狂信的な事を言ったが、正直ブリミルの代行者として異教徒であるドイツに神罰を加えたいと言うより、広大な領土と高い文化を有するドイツをガリア王国に攻め滅ぼさせ、自分 
はドイツの土地の一部と富を手に入れたいと言うのが本心であった。

ドイツ軍の戦力を知れば無謀としか言えないが、ドイツを直に見ておらず、更にメイジが一人もいないが高い文明を持っていると言う情報のみを持っている為、メイジがいない平民だけの軍などガリアの力ならば一瞬で潰せると考えているヴェルテュ侯爵はガリアとドイツが戦争を行えば楽に領地拡大が可能であると考えていたのだ。

兎も角、自分の野望のため次の一石を投じようとしていた時。

「お館様、ドイツ大使館員のクラウス・ギュンター大佐がお見えになっています」

「なに、ドイツの奴らが何の様だ?」

「なんでも、ガリアの未来を揺るがすとんでもない情報を手に入れたとのことで、面会を求めています」

「ガリアの未来…何のことだ、まぁ良い通せ」

「はっ!」


数分後 

「やぁ、クラウス殿この前のパーティー以来ですな」

「突然お邪魔して申し訳ございません侯爵、手土産と言ってはなんですが、我がドイツ帝国フランクライヒ保護領から取り寄せたロマネコンティとヘネシーと言うワインとブランデーを持って来ましたので、飲みながら話をしましょう」

「うむそうか、では奥の部屋で話そう」

「ありがとうございます。それと、屋敷を守る皆様にも一つ差し入れがあるのですが、差し上げよろしいですかな侯爵?」

「構わんクラウス殿」

「では」

クラウスはそう一言言うと、ヴェルテュ侯爵と共に部屋の奥にある食堂へと向かって行った。

そしてつまみとなる料理と、ワイングラスが並べられた所でクラウスはロマネコンティの栓を開け、ヴェルテュ侯爵のグラスへと注いだ。

まだバレてないと思うが相手はヴェルテュ侯爵が滅ぼそうとしているドイツの軍人、そのため最初はグラスに注がれたワインを警戒したが。

「ヴェルテュ侯爵、もしや毒や何かを盛ったとお思いですか?」

クラウスはそう言うと同じ瓶に入っていたワインを自分のグラスの中にも注ぎ一口飲んでみせた。

「ハハハ…御冗談を」

その光景を見てヴェルテュ侯爵は毒は入っていないと確信し、ワインを飲んだ。

「うむ、香りも素晴らしいし良いワインですな」

ヴェルテュ侯爵はワインを含めた酒と珍しい書物を集めるのが趣味である、その為ワインに何か薬が入っていればすぐに気付くほどの舌を持っている為、一口飲んでこれは毒や薬も入っていないと確信した。

「勿論、このワイン、そしてまだ開けてはいませんがこのコニャックも我が国では1万5千マルク…ハルケギニアの価値にして金貨100枚以上の価値がありますからな…」

「成る程だからか…しかし金貨100枚も安いくらいの味だ、1ダースほど欲しいものだ」

「お好みとあらば、最近ではようやく我が国とガリアの貿易体制が確立されてきましたので、いずれガリアにも我が国の名産物が輸出されて来ると思いますのでその時にでも…」

「うむそうだな、その時は大量に買うとしよう」

ヴェルテュ侯爵は上機嫌にそう言いながらワインを流し込んだ。

数十分後

「いやぁ〜!!ワインもいけましたがこのブランデーも中々!!!ワハハハハハ!!!」

ヴェルテュ侯爵はクラウスが持ってきたうまいワインとブランデーに大満足しながら飲み続け完全に出来上がっていた。

「そう言えば、話がまだでしたなヴェルテュ侯爵…」

「話 !?あぁ、例のガリアの未来に関わる話か!?でっ!?一体何でしょうか!クラウス殿!」

「えぇ、実は第1王子であるジョゼフ殿下の事なのですが…」

「あぁ、あの無能王子が何かあったのか!?」

「えぇ、数日前に暗殺されそうだったことが発覚したのですよ…」

「暗殺!?そりゃあ、また…」

「幸い、実行犯である犯罪組織は壊滅させ首謀者も既に発覚しているとのことです」

「ほぅ!それは良かった…」

ヴェルテュ侯爵はそう言うとグズラスに残っていたコニャックを飲み干した。

するとクラウスは突如椅子から立ち、そしてヴェルテュ侯爵の背後に立ち、そして耳元でこう呟いた。

「ふふふ…白々しい、ヴェルテュ侯爵、暗殺の首謀者は貴方ですよね」

「はっ…はっ!?な、なにを言っている!クラウス大佐!!な、何を!何を証拠にそんな!」

ヴェルテュ侯爵は慌てた様子でそう言い椅子から転げ落ちた。

するとクラウスはヴェルテュ侯爵が先程まで座っていた椅子の足を、足でへし折ると一枚の書類を投げ渡した。

そしてその書類を見るとそれは自分の信頼できる部下に渡した自分が書いたガリア王国第1王子ジョゼフの暗殺依頼書であり、ヴェルテュ侯爵の顔は青ざめて行った。

「な、何故これを!?ちゃんと処分した筈なのに…」

「おや、認めましたね…」

「えっ?」

「ふっ、ヴェルテュ侯爵この依頼書は偽物です、貴方がやったと言う事は証拠はありませんが知っていましたのでね、偽物の依頼書を作成して鎌をかけさせてもらいましたよ」

「な…あがぁ…」

やられた、そうヴェルテュ侯爵は思った。

無論ヴェルテュ侯爵も馬鹿ではない、正常な判断が出来る状態であればこんな物は偽物だと見破りあくまでやってないこ言い張る事も出来た筈だが、ヴェルテュ侯爵はクラウスがうまい具合に飲ませ続けた酒に酔い、その状態でお前が首謀者だと言われたおかげで冷静な判断が出来なくなっていた。

(ま、まさか…まさかこいつ‥酒を飲ませたのも、鎌をかけて気を動転させて、その上で偽物の書類により私から自供を引き出したのも…)

「えぇ、全て計算通りでしたよ」

心の中を読んだかの様にクラウスはそう言った。

「嘘だ…この私が、魔法の使えぬ平民如きに!!!!」

そう叫びヴェルテュ侯爵は杖を持ち、クラウスを攻撃しようとした。

だが

「つ、杖が…」

何と腰にぶら下げていた筈の杖がなくなり慌て始めた。

すると

「お探しのものはこれですかな?」

「なっ!!」

何とヴェルテュ侯爵の杖は、クラウスの手の中にあった。

「どうして!?…まっ、まさか!」

「言った筈です、全て計算通りだと…」

実は先程ヴェルテュ侯爵の背後に回った時、クラウスはまるで熟練のすりの様にヴェルテュ侯爵の杖をこっそりと盗んでいたのだ。

本来メイジの命である杖を取られ失態などヴェルテュは絶対にしないが、酔っていた事もあり気付かなかった。

「さて、チェクメイトですよ侯爵…」

クラウスは勝ち誇った様にそう言った。

だがその瞬間

「クククク…ははははーーー!!!平民がいい気なって!それだけで勝ったと思ったのか!?物的証拠は何も無い!!あるのは平民でありこの国の部外者であるお前の証言だけ!!それだけの証拠なら私の力でどうとでもなる!!クラウス!!よく覚えておくのだな!!貴様の国はいざ知らず!!この国では力を持つメイジこそ全て!!いくらカラスが黒かろうともメイジである我々が白と言ったらカラスは白!!そう言う世界なのだよ!!!ハハハハハハーーー!!!良いだろう、投降しよう!さぁ、私を政府に突き出すが良い!!」

ヴェルテュ侯爵は高笑いしながらそうクラウスに言った。

すると

「成る程…確かに貴方言う通りですね…貴方を差し出してももみ消されるのが関の山でしょう」

「そうだ!!お前に勝ち目はな…」

ヴェルテュ侯爵がそこまで言った時クラウスのかけるメガネの奥に光る目がより鋭利な目つきになり、そしてこう言った。

「しかし貴方を生かせば我々の対外戦略の大きな障害になる…うん、逮捕が無理なら‥殺すしかありませんね」

「ころ…おい待て!!私を殺せば貴国とガリアは戦争になるぞ!!それでもいいのか…ぐふぉ!!」

クラウスの言葉を聞いたヴェルテュ侯爵は必死になりながらそう言ったが、その瞬間クラウスは先程足でへし折った椅子の足をヴェルテュの左脇腹に刺した。

「ガハッ‥くっ…」

「あぁ、脇腹に刺さってるソレ‥ぬかないほうが身のためですよ」

「く、くそ…」

「この世界の警察がどれほどの捜査能力を持っているかは知りませんが、死んだのが大貴族である以上徹底した捜査が行われるのは目に見ている…だから念のために、完全犯罪でやらせてもらいます。その為には貴方には検死解剖という理念がこの世界にあるかわかりませんが、万が一解剖さた時には、貴方の肺は灼熱の煙で焼きただれて欲しいのです…」

そう言うとクラウスは床で苦しむヴェルテュ侯爵のそばに酒瓶を置くと、制帽と灰緑色のSDのコートを着込み帰り支度をした。

ドアを開けるとそこには、数人のメイドや召使達が居た。

「た…助け…」

「クラウス大佐、準備はできました」

「そうか、では我々は立ち去るとしよう…」

「はい」

クラウスがそうメイド達に言うとメイド達は急いで屋敷を離れて行った。

「ま、待て…」

「ヴェルテュ侯爵、最後に一つ忠告します。もしこの世に輪廻転生があるのであれば、来世では他人が出した酒は不要に飲まない事です、まして自分が嫌っている人物からの酒は尚更です、それでは…Auf Wiedersehen…」

最後にクラウスはそう言うと部屋を出て行った。

そして数分後

屋敷から離れた場所で先程いた、ナチスの諜報機関に懐柔された召使達と合流したクラウスに召使の一人がこう聞いた。

「それにしてもクラウス大佐良かったのですか?」

「何がだ?」

「いぇ、ただ我々がやった事は我々以外の召使や屋敷を守っていた兵士達に睡眠薬入りのビールを振る舞い…そして屋敷中の蝋燭を立てる燭台に水を少しはっただけですが、これで彼らを一網打尽に殺せるのですか?」

「あぁ、これで全てうまくいく…」

「どうしてですか?」

睡眠薬入りのビールを振る舞い、そして屋敷中の燭台に水を貼るだけで人を殺せると言い切ったクラウスに召使達は疑問を抱いた。

するとクラウスは説明を始めた。

「簡単な事だ、蝋燭に火を灯せば燃え続け、そしてやがて炎で溶け落ち皿の水を包み込む、そして炎が燃え尽きる頃、蝋で包まれた水は熱せられ小さく爆発する…そして火種の飛んだ先に燃え尽きるものがあれば、火の不始末か掃除を怠ったメイドの不手際により起こった火災、さにヴェルテュ侯爵を含め眠っている人間の近くに酒瓶をおくことにより屋敷にいた人達の死因は酔い潰れていて火事に気付かず事故死、それで終わりだ…」

「そ、そんな…」

(なんて頭脳だ、こんな事俺たちには考えられないぞ…)

召使はそう心の中で思った。

するとクラウスは徐に、金貨が詰まった袋をここにいる召使達に渡しこう言った。

「協力してくれて感謝する、少ないがこれで新しい人生を歩むといい…」

「大佐…いいえ、此方こそ」

「大佐が知恵を貸してくれなければ我々はヴェルテュの奴隷で一生を終えていました」

クラウスによるヴェルテュ侯爵の暗殺に手を貸した召使達は次々にそう例を言った。

と言うのも、クラウスは事前にヴェルテュ侯爵が何人かの召使やメイドに横暴な仕打ちをしていると言う情報を掴んでいた為、それを利用し巧みな話術により彼らを懐柔し協力者に仕上げていたのだ。

そして彼らは自分たちを縛って来た横暴なヴェルテュ侯爵から解放してくれたクラウスに心から礼を言った。

「ふっ、そうか…Viel Glück」

最後にそう言うとクラウスはその場を去って行った。

次の日後

"ヴェルテュ侯爵死亡!死因は事故死!"

その情報を手に入れたクラウスは満足した様子で、ドイツの障害となる人物の名前が載っているリストのうちからヴェルテュ侯爵の名前に線を引き、そして。

「私だ、アドラー大佐少し君に頼みたい事がある、私の執務室に来てくれ」

すると徐に電話に手を伸ばしアドラーに電話をかけそう言い、アドラーを呼び出した。

「何かようかな、クラウス大佐?」

「アドラー大佐、少し君に頼がある」

そう言うとクラウスは、昨日のヴェルテュ侯爵暗殺の際協力してくれた召使達の顔写真とプロフィールが載っているファイルを渡しこう言った。

「君のヴェアヴォルフ大隊で、この写真の人物達を始末してくれ、やり方は君に任せる」

「了解しました」

それはヴェルテュ侯爵暗殺の情報漏洩を防ぐ為、暗殺の片棒を担いだ彼を口封じに処分して欲しいと言う任務だった。

その命令を聞いたアドラーは何か思うところがあるのか無いのかは、知らないがいつもの様にそう言いった。

すると

「そう言えばクラウス大佐、実はこの前の犯罪組織に対する秘密作戦なのだが」

「何か問題が?」

「いや、そう言う事じゃない…ただ、その時ヴェルテュ侯爵宛ての書物が見つかってな」

「書物?」

「あぁ、これだ」

「うん…これは…日本語で読めないが何かの設計図か…いやこれは英語だから読めるな…フォレスタル…図面から推察するに何かの船の設計図の様だな」

その図面は三種類ありそのうち二種類は日本語ばかりでクラウスには読めなかったが、もう一種類は英語だった為少し読めた。

そしてそれぞれの設計図にはこう書かれていた。

"大和型戦艦"

"翔鶴型航空母艦"

"フォレスタル級空母"



「何か分からないが、とにかく本国に送ろう」

「はっ!」

こうして、大和、翔鶴、フォレスタルの設計図はドイツ本国へと送られ、それによりドイツは慣れない空母や超大型戦艦の建造のノウハウを手に入れる事ができ、それにより幾分か現在進行中のZ計画の大きな発展につながる事となるがそれはまた別のお話。
 
 

 
後書き
補足

フランクライヒ保護領… 転送により自由フランスが無くなり正式にドイツの保護領となったフランスの呼び名


数日後

ドイツ大使館に現在トリステイン王国大使である、ジュール・ド・モット伯爵が、クラウスによりお茶に招かれドイツ大使館であるチュエルリー宮殿に彼の姿はあった。

「うむ、このコーヒーと言う飲み物…紅茶より苦味はあるが、何とも癖になる味と風味だ…」

「気に入ってもらって幸いです、まぁ、最もこのコーヒーと言う飲み物は我がドイツの土地では環境的に作れませんので、このままではそのうち飲めなくなるでしょうが…」

「何とそれは残念ですな…」

「えぇ、ですが我が国はコーヒーや紅茶が無くなるのは流石に耐え難い事ですので、現在我が国はコーヒーや紅茶が栽培可能な地域への進出を開始していますので、一、二年後には諸外国への輸出も可能だと思います」

「それは楽しみだ…」

モット伯爵はそう言うと、再びコーヒーを一口ち飲み。

「そう言えばモット伯爵、貴方は中々の好色だと聞いていますよ、情報だと平民の若く美しい娘に目を着けると自分の屋敷に買い入れ、夜の相手込みのメイドとして雇っているとか…」

「ブフォオオオオオーーー!!な、何故それを!?」

それを聞いた瞬間、盛大にコーヒーを吹き出した。

「いや別にそれ自体は悪いとは言いません、ですが問題はこれからです…」

そう言うとクラウスはモット伯爵にあるファイルを渡した。

「こ、これは!?」

「貴方、違法な犯罪組織からも女性を買ってますね?」

「そ、そんな…こ、こんなものを見せて何をするつもりだ!?悪いが…」

「私の力を使えば揉み消せる…ですか?」

「そ、そうだ…」

「…まぁ、私はこれで貴方を逮捕しようとは考えいません…しかし、私はうっかりものでしてね‥もしかしたらこのリストをガリア王国の有力な貴族達にうっかり見せてしまうかもしれません…そうならば‥ふっ、貴方は女性を囲み毎晩排他的かつ変態的行動に勤しむ貴族として‥社交界からどんな目で見られるか…」

「あぁ…」

ハルケギニア最強の国であるガリア王国はその力ゆえ、ハルケギニア各国の有力貴族や王族達とも婚姻関係を含め強いつながりがある。その為、一つの噂をガリアの社交界に流せばたちまちハルケギニア中の社交界に話が広がるのは時間の問題であった。

その為、この情報が流れれば罪は金と権力でもみ消し問われないかも知れないが、社会的に抹殺されるのは必然であった。

「…な、何が望みだ?」

「…私の求める物は一つ…モット伯爵、貴方にはトリステイン王国の内情を私に…いや、我等国家保安本部に流してもらいたい…」

「スパイになれ…と言う事か?」

「そうです…」

「…分かった」

こうして、クラウスはトリステインにも諜報網を引く第一歩を踏み出せる事となった。
 
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