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月面ツアー

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第二章

「本当に」
「夢でしたらサン=タンジェロ城の屋上から」
「だからそれはいいからな」
 その冗談はというのだ。
「もうな」
「左様ですか」
「そうか、夢じゃないのか」
「おめでとうございます」
 店長はここでやっとこの言葉を出した。
「お客様は運がいいですね」
「神様が俺に微笑んでくれたな」
「左様ですね」
「月に行けるなんて思わなかったぜ」
「では恋人の方か奥様と一緒に」
「えっ、今何つったよ」
 マリオッティは思わず問い返した。
「あんた今」
「このツアーはカップルなので」
「一人じゃ駄目かよ」
「男の方と一緒でもいいですが」
 それでもというのだ。
「カップルの方とです」
「俺独身でな」
 マリオッティは店長に自分の身の上も話した。
「彼女もな」
「左様ですか」
「そこでは何も言わないんだな」
「人の恋愛のことを言うと下手すると一生恨まれるので」
 それでというのだ。
「私は言わないです」
「恋愛のことはか」
「はい、最悪極端に卑劣で残忍で陰湿で執念深い人に一生恨まれます」
「そりゃ嫌だな」
「ですから」
「そうしたことは言わないか」
「左様です」
 こうマリオッティに答えた。
「そこは気を付けています」
「そうなんだな、けれどな」
「お二人でないとです」
「このツアー行けないか」
「左様です」
「困ったな」 
 マリオッティは心から言った。
「俺そうした相手はな」
「おられないですか」
「そうなんだよ、どうすべきかな」
「それは残念です、ですがこれはペットがパートナーでもいいので」
「俺鰐飼ってるけれどいいか?名前はアントニウスな」
「危険な恋愛に陥って立派な最期を遂げそうな名前ですね」
「そうだろ、鰐と一緒でもいいか?」
 彼は店長に問うた。
「それでも」
「はい、それでも」
「そうか、しかしどうしたものか」
 ペットと一緒に行ってもいいと言われてもだ、マリオッティは悩んだ。そして暫く店の中で悩んでいると店長にまた言われた。 
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