逆男の娘

　　　　　　　　　　　　　　　逆男の娘
　八条学園高等部は制服はかなりバリエーションがあり何十種類もある。それでどの生徒もそれぞれの制服を着て楽しんでいるが。
　片倉朱奈はその中でもかなり変わっていた。それはどうしてかというと。
「何で制服男の子のなの？」
「黒の詰襟なの？」
「どうしてなの？」
「ズボンまでそうだし」
「これが好きなので」
　見れば白面でやや面長、顎が尖っている。黒髪は長く後ろで束ねている。切れ長の黒い瞳は楚々としていて細く長い眉は奇麗なカーブを描いている。
　背は一六四位ですらりとしたスタイルだ、声は澄んだソプラノだ。
「それで」
「それで、なの」
「制服男の子のなの」
「そうなの」
「そして」
　朱奈はさらに話した。
「普段も」
「男の子の服なの」
「好きだから」
「それでなの」
「スカートはどうしても抵抗があって」
　朱奈はさらに話した。
「家族も母以外は男の人ばかりで」
「お兄さん二人いるのよね」
「それに弟さん」
「従兄弟も男の人ばかりで」
「母方の方も」
「そのせいで」
　どうしてもというのだ。
「服は」
「ううん、そうなのね」
「片倉っち実は女子力高いのに」
「お化粧上手だしね」
「お料理もお裁縫も凄いし」
「身だしなみ完璧なのみ」
「今時珍しい大和撫子なのに」
　それでもとだ、周りは言うのだった。
「それがね」
「服についてはなのね」
「男の子なのね」
「そうなのね」
「それについては」
　どうしてもとだ、こう言ってだった。
　朱奈はいつも男装だった、首から上は女の子であったがそこから下は男だった。だが女子力は高く性格もいいので。
　女子達から人気があった、そして男子達からもだ。
「服装はともかくな」
「それは置いておいてな」
「朱奈ちゃん奇麗だよな」
「まさに美少女だよな」
「男装の麗人ってのいいよな」
「そうだよな」
　その朱奈を見て言う、そして。
　その中で土佐佳正、短くした黒髪を立たせてやや太い眉と小さいと唇を持つ彼がこんなことを言った。背は一八〇あり逞しい身体つきだ。部活は柔道部で今は二段だ。制服は黒のブレザーと赤のねくたい、グレーのズボンというものだ。
「俺片倉ちゃんにコクろうかな」
「おい、あの娘にか」
「誰とも付き合ったことないらしいけれどな」
「断わられてもいいんだな」
「そうなっても」
「振られたらその時だろ」
　土佐の言葉は笑ったものだった。
「もうな」
「縁がなかった」
「それだけか」
「それで終わりなんだな」
「ああ、けれどな」
　それでもとだ、土佐は友人達に笑って話した。
「若しな」
「頷いてくれたらか」
「その時はか」
「付き合うんだな」
「俺は本気だぜ」
　土佐は言い切った。