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何もわかっていない女

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第三章

「一体どういう理屈だ」
「本当に何十年言われてもわからないな」
「その理屈言ってみろ」
「どういう理屈なんだよ」
「一度も戦争に使わなかったでしょ」
 太嶋はその理屈を今言った。
「それじゃあ無駄だったのよ」
「また言ったか」
「あれ過ぎるだろ」
「よくこんなこと言えるな」
「俺こんなこと言ったら恥ずかしくて死ぬよ」
「自分が言ったことわかっているのか」 
 誰もが顔を顰めさせた。
「普通言わないだろ」
「どうやったらこんなこと言えるんだ」
「一回も戦争に使わなかったら無駄とかな」
「戦争反対だろ、太嶋って」
「兵器は使わなかったら御の字だろ」
「こいつこんなこともわかってないのか?」
「どういう頭の構造してるんだ」
 視聴者達はこう思った、そして。
 番組の司会者も呆れたものを何とか隠しながら彼女に問うた。
「あのですね」
「何?」
「抑止力って言葉知ってます?」
「ああ、そう言うんだ」
 ここでだ、太嶋は。
 猫撫で声の様なそうした声でこう言った。
「ここで」
「何だ今の声」
「気色悪いな」
「そこでそんな声出すか?」
「何考えてるんだ」
 視聴者達は気持ち悪いものを感じた。
「というか抑止力が軍隊だろ」
「戦争起こす為じゃないだろ」
「勢力均衡とかわかってないのか」
「それでも学者かよ」 
 誰もが突っ込んだ、そして。
 司会者もだ、こう言った。
「兵器は抑止力の為にあってあることで戦争を防ぐんですよ」
「そうした考えもあるわね」
「あるわねじゃなくて本来はそれが目的ですよ」
 こう太嶋に話した。
「そもそも」
「そうだよ」
「だから何十年言われてるんだよ」
「この番組でもいつも言われてるだろ」
「常識だろ」
「抑止力もわかってないのかよ」
「よくそれで政治語れるな」
 完全に呆れ果てている声だった。
「あんまりにもあれ過ぎるだろ」
「どうしようもないな」
「全く勉強していないしわかってないな」
「何十年もな」
「これだけ進歩しないしわからないとかな」
 それこそとだ、ある者が言った。ネットではテレビを観て実況で書かれている。まるでチャットの様である。
「有り得ないよな」
「普通わかるよな」
「どんなあれでもな」
「何十人もの人にずっと言われてるからな」
「慰安婦は強制じゃないこともな」 
 太嶋が今まで言ってそして言われてきたことが総括の様に話された、とはいっても太嶋は言われると不貞腐れた顔になって扇子を出して仰ぐだけだ。
「女性の権利のことも」
「北朝鮮絡みのことだってな」
「日本の政治だって」
「自衛隊だってな」
「どれだけ言われてるんだ」
「それで考え変えない、自分のおかしなことに気付かないか?」
「有り得なくないか?」
 それこそというのだ。
「幾ら何でも」
「ひょっとして脚本ないか?」
 テレビ局のやらせが疑われだした。 
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