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かってはいけない

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第二章

「買ったんだよ」
「安いものじゃないのに」
「それで最初はな」
 兎に角という口調での言葉だった。
「服を買ってあげたりな」
「ワンちゃん用の」
「お風呂に入れてあげてブラッシングもして」
「奇麗にしてあげていたの」
「ペットサロンに連れて行って」
 そしてというのだ。
「そうしてご飯だってな」
「いいものだったのね」
「誕生日やクリスマスには犬用のケーキを買って」
 そのうえでというのだ。
「お祝いしていたんだよ」
「相当ね」
「けれどそれがな」
 それがというのだ。
「あの二人に子供が生まれたら」
「急に邪険になったの」
「そうなんだよ」
 ふわりへの扱いがというのだ。
「何か奥さんが妊娠してよく横になる様になったら」
「もうそこからだったの」
「毎日の散歩に連れて行かなくなって」
「ワンちゃんのお散歩は絶対でしょ」
 母はこのことは強く言った。
「幾らお家の中で飼っていておトイレはあっても」
「それでもだよな」
「うちもそうしているし」
 母は自分達のことも話した。
「本当に」
「そうだよな」
「雨でもね」
「誰かが出てな」
 それでというのだ。
「やってるよな」
「忙しくてもね」
「毎日二回散歩してるな」
「そうしないと駄目よ」
「運動になってストレス解消にもなって」
「それでよ」
 母の声は強いものだった。
「そんなことはね」
「絶対にな」
「そうしないと駄目でしょ」
「毎日の散歩はしないとな」
「旦那さんでもね」
「けれど旦那さんもな」
 その彼もというのだ。
「ほったらかしにしてたんだよ」
「ふわりのことを」
「ご飯だって忘れたりしてな」
 散歩どころかというのだ。
「そうしたんだよ」
「ふわりも辛かったわね」
「それで赤ちゃん産まれて」
 洋介はその時のことも話した。
「家に帰ってふわりが迎えに来たらな」
「私達にしているみたいに」
「そうしたらすぐにな」
「ゲージに入れたの」
「鳴いて五月蠅いって言ってだよ」
「ワンちゃんは鳴くものよ」
 母ははっきりと言った。
「そこは躾けないと、ましてやね」
「ましてや?」
「トイプードルはよく鳴くわよ」
 この種類の犬はというのだ。
「ワンちゃんの中でもね」
「小さい犬はそういうものだよな」
「そうよ、ただふわりはね」
 そのふわりを見て息子に話した、自分の傍で寝て撫でられて気持ちよさそうに見ている彼女を見て。 
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