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歪んだ世界の中で

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第一話 底のない絶望その十

「僕は遠井君がいてくれているから」
「だからですか」
「僕は死んでいたよ」
 また言う希望だった。
「自分でね。そうしていたよ」
「そうしなくてよかったですよ」
 真人は希望が自殺しなかったことを心から喜んでいた。
 その喜びを隠すことなくだ。希望に述べたのだった。
「僕も。遠井君がいないと」
「僕なんかが?」
「寂しいです。友達ですから」
「友達、だからなんだ」
「はい、少なくとも僕はこうして遠井君と一緒にいます」
 例え何があろうともと、言葉に含めていた。
「敵ばかりじゃないですから。世の中は」
「友井君だけかな。僕の友達は」
「今はそうかも知れないですけれど」
「これからはかな」
「ですから。見ている人は見ています」
 ここでまただ。真人はこの言葉を希望に話した。
「ですから。遠井君には僕以外にも」
「友達ができるのかな」
「絶対に。何時かできますから」
「だといいね」
 真人の言葉は有り難かった。そしてその有り難さを噛み締めつつだ。
 彼は俯いてだ。こう言ったのだ。
「僕に。友井君とその他にも」
「我慢しないといけない時もあると思いますよ」
「今の僕みたいに」
「人生って色々ですから」
 山あり谷あり。その言葉のままだった。
「ですから」
「山があって谷があって」
「そうしたことは絶対に終わりますから」
 この二つが重なるというのだ。この話をしながらだ。
 二人は森の中を歩いていく。その間だ。
 希望は、真人もだが森の中のゴミを拾うことも忘れなかった。それもしながらだ。
 森林浴を楽しんだ。そうしたのだ。
 夏休みの間もだ。希望は。
 真人とだ。常にいるしかなかった。彼の居場所はそこしかなかったからだ。
 しかしだ。夏休みに入ってすぐだった。彼の携帯にだ。このうえなく嫌な知らせが来たのだ。
 その知らせを聞いてすぐにだ。彼は病院、八条病院に向かった。そしてある部屋に向かった。
 白い部屋の白いベッドの中にだ。真人はいた。彼はというと。
 手足にギプスをしてそうしてだ。ベッドの中に横たわっていた。その中からだ。
 希望に顔を向けてだ。微笑んで言ったのだった。
「来てくれたんですか」
「大丈夫、じゃないよね」
 車に跳ねられてだ。入院してはだ。とてもそうは思えなかった。
 それで暗い顔で真人に問うたのだ。その彼に対してだ。
 だが真人はだ。ベッドの中でも微笑んでだ。希望に言ったのである。
「平気ですよ。確かに入院しましたけれど」
「じゃあやっぱり」
「いえ、夏休みと二学期の少しの間だけです」
「入院するのは」
「命には別状はありません」
 真人から言った言葉だった。
「後遺症もないそうですから」
「安心していいんだね」
「はい、ですが」
 ここでだ。真人はだ。暗い顔になった。
 そしてだ。こう言ったのである。
「僕がこうなりましたから」
「だから」
「すいません、いつも一緒という訳にはいかなくなりました」
 このことをだ。希望に謝罪したのである。 
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