犬に酒は
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第一章
犬に酒は絶対に駄目
山本和也はサラリーマンである、黒髪をショートにしていて穏やかな顔立ちをしている。背は一六九位でほっそりとしたスタイルだ。
実家に暮らしていて両親と妹の大学生の遥そして愛犬のココアと一緒に楽しく過ごしている。ココアは濃い茶色の毛の雄のトイプードルだ。
「ワンワン」
「只今、ココア」
この日も仕事から帰って自分を玄関まで出迎えてくれたココアと少し遊んでそれから夕食を摂っていたが。
ふとだ、晩酌のビールコップの中に入れたそれを見て言った。
「ココアってビール飲むかな」
「お酒を?」
丁度妹は彼の向かいの席で飲んでいた、ストロング系の強いものである。黒のポニーテールの髪は波だっていて目は切れ長でやや釣り目だ。眉は細く長く色白で部屋着のジャージ姿からは想像出来ないが実は一五八程の背のスタイルはすらりとしていて脚が奇麗である。その彼女が柿の種を食べつつ言った。
「馬鹿言ってんじゃないわよ」
「駄目か」
「死ぬわよ」
遥は兄に真顔で言った。
「冗談抜きで」
「死ぬって」
「言うけれど死ぬのはココアよ」
妹は強い声でさらに言った。
「お兄ちゃんじゃなくてね」
「それはわかるけれどな」
「犬にはお酒は禁物なのよ」
「毒になるのか?」
「そりゃ同じ哺乳類だから内臓の仕組みは同じところもあるけれど」
それでもというのだ。
「やっぱりね」
「違うところもあるのか」
「そう、それでお酒はね」
これはというのだ。
「毒でちょっと飲ませただけでね」
「命に関わるんだな」
「だからね」
それでというのだ。
「絶対によ」
「飲ませたら駄目か」
「ココア死なせたいの?」
妹はその目を座らせて言ってきた、目がそうなっているのは酒のせいだけではない。
「若しかして」
「そんな筈ないだろ」
兄は妹にすぐに返した、まだビールは飲んでおらずご飯を鰯を生姜と醤油でじっくりと煮込んだもので食べている、おかずは他に玉葱と豚肉、人参にキャベツを炒めたものと卵をとじた中華風のスープである。ビールの肴には梅干しがある。
「ココアは家族だぞ」
「それじゃあね」
「酒はか」
「何があってもね」
それこそというのだ。
「飲ませたら駄目よ、若しココアが近寄ったら」
「お酒にか」
「遠ざけてね」
そうしてというのだ。
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