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凍り豆腐

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第五章

「豆腐を凍らせることもな」
「そのこともですか」
「あろう、しかもな」
「しかもとは」
「豆腐が凍るのははじめて見た」
 政宗はこのことについても話した。
「これは中々面白い」
「だからですか」
「よい、しかし漬けものも刺身も何でも凍るな」
 政宗は肴に出した他のものも見て話した。
「まことに」
「ではです」
 片倉はそれを見て政宗に話した。
「この度はです」
「酒だけをか」
「楽しみますか」
「雪女との話を肴にな」
「そうしますか」
「それがよいな、ではな」
「確かに。雪女と話すなぞです」
 それこそとだ、成実も言ってきた。
「そうそうあることではありませぬ」
「ならばな」
「それを肴にしてですな」
「今話すこともな」
 それもとだ、政宗は成実に話した。
「よいな」
「左様ですな」
「では飲むぞ」
「酒は凍っておりませぬし」
「ならよいですな」
「よい、それならな」 
 政宗は片倉と成実に話してそうしてだった。
 三人は雪女の話を何かと聞きそうしつつ酒を楽しんだ、そして明け方になるとだった。雪女は政宗に話した。
「ではです」
「これでじゃな」
「はい、長居になりましたが」
「うむ、ではな」
「私の館の方に」
「そこにお主の父上がおられるな」
「母上も。兄弟姉妹と家臣の者達も」
 雪女は政宗に話した。
「おります」
「そうか、では土産も渡そう」
「それは」
「よい、持って行くのじゃ」
 政宗は実際に多くの褒美を出した、それを雪女に持たせてまた言った。
「これだけな」
「これだけのものを頂けるとは」
「これ位のことは何でもないわ」
 政宗は鷹揚に答えてみせた。
「だから気にすることなくな」
「これを持って帰ればよいですか」
「左様、お父上に宜しくな」
「それでは」
 こうしてだった、雪女は政宗に別れを告げて門まで送られてから城を後にした。政宗は雪女を送ってからだった。 
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