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海で犬を助けて

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第二章

「一体よ」
「だから今日仕事休みだしな」 
 まずは金髪の壇が答えた。
「三人共な」
「それで昼から飲んでるんだよ」
 茶髪の石川も言う。
「食ってな」
「別に悪戯とか犯罪とかしないからいいだろ」
 田中も陸に言った。
「昼間っていうか午前中からさけのんでもな」
「まあ休日ならな、っていうかお前等高校の時から変わらないな」
「悪いかよ、そう言うお前は変わったな」
「可愛い彼女連れてな」
「本当にリア充になりたかったな」
「この人達陸君の知り合いなの?」
 桜は陸と三人のやり取りを聞いて陸に問うた。
「ひょっとして」
「ああ、高校の時の同級生だよ」
 陸は桜に顔を向けて答えた。
「三人共悪い奴じゃないけれど高校の時からこうなんだよ」
「これでもちゃんと普段は働いてるぜ」
 壇は笑って話した。
「俺は美容師だぜ」
「俺は工場で技術者やってるぜ」
 石川はビールを飲みつつ述べた。
「これでも重宝がられてるんだよ」
「俺はスーパーの店員だよ」
 田中も話した。
「それで今は愛犬のベティちゃんと一緒だぜ」
「ベティちゃん?」
「ああ、フレンチブルドッグの女の子でな」
 田中は横にいる愛犬を見つつ陸に話した、見れば白い毛で顔の右上の部分が丸く白くなっている犬である。
「この子と一緒にだよ」
「海に来てかよ」
「楽しんでいるからな、大人しくて愛嬌があってな」
 それでというのだ。
「凄くいい娘だぜ」
「そういえばお前犬好きだったな」
「大好きだぜ」
 田中は笑って答えた。
「本当にな」
「だからか」
「今も一緒だぜ、毎日ご飯あげて散歩も一緒で遊んでな」
「楽しくやってるんだな」
「ここでもな」
 海でもというのだ。
「今でも一緒だぜ」
「いきなり脱走したりしないよな」
「賢い娘だからな、けれど滅茶苦茶怖がりでな」
 田中は陸に愛犬を見つつ話した。
「ちょっとした音で驚くんだよ」
「それで怖がったりするか」
「逃げたりな」
「じゃあそのこと気をつけろよ」
 陸は田中に真剣な顔で忠告した。
「いいな」
「ああ、だから今もリード付けてな」
 見れば犬の首輪にはそれがあった。
「それで手首に巻いてるさ」
「その用意はしてるんだな」
「ベティちゃんに何かあったら駄目だからな」 
「そうだといいけれどな」
「ああ、それでお前これからどうするんだ」
「これから一緒に泳ぐんだよ」
 陸は桜を見つつ笑顔で答えた。
「これからな」
「そうするんだな」
「ああ、じゃあこれでな」
「勝手にリア充で楽しんでろ」
「そこでまたそう言うか?」
「彼女なしの特権だろ、こう言うのは」
「それ特権かよ」
「いたら言えないからそうなるだろ」
 田中は今度はフランクフルトを食べつつ陸に話した、三人はともかくビーチで飲んで食べることに専念していた。
 陸はその三人と別れて桜と共に泳ぐ為に海に向かったが。
 ここでだ、不意に。
 子供が叫ぶ声が聞こえた、小さな子供特有の布を切り裂く感じの限界を無視した何処までも甲高い声だった。
 その声を聞いて思わず陸も桜も声がした方を見た、すると。
 そこに小さな男の子がいた、声の主はその子だった。 
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