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狒々の霊

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第二章

「何か憑いてない?」
「何かって」
「そうよ、変なのがね」
「有り得るわね」
 晶は榮子の言葉を否定せずに腕を組み考える顔になって述べた。
「それも」
「そう思うでしょ」
「通ってた学校だけれど」
 八条学園はというのだ。
「幽霊とか妖怪のお話がね」
「滅茶苦茶多いのよね」
「ええ、だからね」 
 それでというのだ。
「こうしたお話もね」
「信じるでしょ」
「それもかなりね、私も何度か見たし」
「そうなの」
「幽霊とか河童をね」
「あの学校河童もいるの」
「河童以外にも色々いるから」
 それでというのだ。
「それでなのよ」
「憑いてるって言われても」
「否定しないしね」
「むしろなのね」
「今かなり真剣にあるって思ってるわ」
 そうだというのだ。
「実際に」
「じゃあね」
「ええ、ものは試しで」
 晶は榮子に言った。
「ちょっと今から住吉さん行って来るわ」
「丁度近くだしね」
 住吉大社は大阪市住吉区にある、住吉区は二人が今いる西成区の丁度すぐ隣の区であるのだ。だから行き来もすぐだ。
「そうしてなのね」
「お守り買って」
 そうしてというのだ。
「身に着けてみるわ」
「夜もっていうのね」
「そうしてみるわ」
「それじゃあね」
「これまで一週間に一日で四回だったのがね」
「それでも三十代後半では多くない?」
「毎日六回はね」 
 どうもと榮子の突っ込みにも返した。
「流石にね」
「確かに多過ぎるわね」
「旦那は大丈夫みたいでも」
「あんたがなのね」
「いい加減腰にきたし」
 榮子の言葉は今は生々しいものだった。
「私もマグロじゃいられないし」
「自分も応えるのね」
「上でも下でも後ろからでもついつい腰使って」
 その毎日六回の時にだ。
「それで腰にもきてるし」
「若し旦那さんについていたら」
「出てもらわないと困るから」
「そうするのね」
「ええ、お守り付けていたら憑きものも落ちるでしょ」
 こう言ってだった。
 晶は店を出るとすぐに住吉大社に向かった、それこそ自転車ですぐの距離で行くことに何の問題もなかった。 
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