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犬を助けて

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第二章

「だからな」
「それでなんだ」
「お金は俺が出す」
 そうするというのだ。
「安心してくれ」
「それじゃあ」
 子供は頷いた、犬はすぐに診察と応急手当てに入った、それで一時間程二人で病院の中で待っていると。
 獣医が来て二人に言ってきた。
「気絶していましたが脳に影響はなく」
「大丈夫ですか」
「はい、内臓にも損傷はなく」
 それでというのだ。
「命に別状はありません、ただ車に撥ねられて身体に強い衝撃を受けたので」
「怪我はですか」
「結構重くて暫く入院は必要です」
 こう弘明と子供に話した。
「どうしても」
「わかりました、じゃあお金は」
「あっ、お母さんメールで読んだから」
 子供が弘明に言ってきた。
「だからね」
「大丈夫か」
「うん、お金はうちが払うから」
「悪いな」
「それじゃあね、あとお兄さんの名前教えて」
 子供から弘明に言ってきた。
「住所と。お礼したいから」
「お礼なんていいさ」
「ジロを助けてくれたから」
 子供はこのことは強く言った。
「お礼はしないといけないから」
「だからか」
「うん、教えてくれるかな」
「それじゃあな」
 弘明はそこまで言うのならとなってだった。
 自分の住所氏名を教えた、そしてだった。
 病院に駆けつけてきた子供の母親がお礼を言ってしきりに頭を下げるのもまあまあと返してだった。
 会社の面接に行ったが。
「本日はもう」
「そうですよね」
 こうしてだった、弘明はそれも仕方ないと思いつつ家に帰った、それで次の面接で頑張るしかないと思っていたが。
 三日後家にその会社から家に電話があった。
「もう就職は決まってますか?」
「いえ」 
 初老の男の人の声にすぐに答えた。
「まだ」
「なら三日後当社に来てです」
 そしてというのだ。
「面接に来てくれますか」
「いいんですか?」
「是非お願いします」
 相手はこうまで言ってきた。
「どうか」
「それじゃあ」
 弘明は電話の相手の声に頷いた、そしてだった。 
 実際に面接に行くとそこにだった。
 初老の穏やかな顔のスーツ姿の小柄な男がいた、男は弘明と向かい合うとすぐに言ってきた。
「君は前の面接に来なかったね」
「すいません」
 弘明は男に頭を垂れて謝罪した。
「そのことは」
「犬を助けてだね」
「?どうしてそのことを」
「いや、あの子ジロはね」
 その犬の名前も言ってきた。
「うちの犬だったんだよ」
「まさか」
「そのまさかだよ、それであの子は私の孫で」
 男はにこにことしてだ、弘明に話した。 
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