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【完結】RE: ハイスクール D×D +夜天の書(TS転生オリ主最強、アンチもあるよ?)

作者:羽田京
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第5章 神話世界のアルマゲドン
  第26話 悪魔を憐れむ鎮魂歌

「これで、終わりだッ!」

「おっと、そうはいかないよ」
『Claiomh Solais』


 ここは、悪魔領の首都――だった場所。今は瓦礫ばかりが広がっていた。
 兵藤一誠が、英雄派の頭目である曹操にとどめを刺そうとする直前に、割って入って邪魔をする。
 二人の中間に砲撃魔法を発射。曹操の救出に成功した。
 英雄派の幹部たち――曹操、ゲオルグ、レオナルド、ジークフリート、ヘラクレス、ジャンヌの6人――は、ルシファー眷属とグレモリー眷属と戦い、押されていた。


「助かったよ、八神はやて」

「間に合ったようだね、曹操」


 堕天使領の消滅に成功したボクたちは、悪魔領に来ていた。
 旧魔王派と英雄派がすでに暴れているだけあって、悪魔領は大混乱に陥っているようだった。
 だからこそ、その隙をついて、ラグナロクとフレースヴェルクで、天界のように破壊し、焦土に変えた。
 土煙が晴れたあと、生き残りをサーチャーで探すと、一か所だけ反応があった。
 転移魔法で、現場へと急行し――――


「――――残るは、ルシファー眷属とグレモリー眷属だけか。もう少し残っているものだと思ったが……」

「ああ、中途半端に強い連中なら俺たちが倒してあるからな」

「旧魔王派はどうなったと思う?」

「はやての攻撃で消し飛んだ。驚いたよ、俺たちの助力は必要なかったんじゃないか?はやての言う通りに、英雄派の部下たちを非難させておいてよかったよ」

「いや、数の利は侮れない。頼りにさせてもらうよ。さて、今ここにいるのが、生き残り全員ということか」


 サーゼクス・ルシファー眷属と、リアス・グレモリー眷属を倒せば、三大勢力の制圧は完了することになる。
 急な展開に口を挟めないでいたリアス・グレモリーが、はやてに詰問する。


「冥界を無茶苦茶にして!はやて、どうしてこんなことをするのッ!?」

「……リアス・グレモリーたちに恨みはない――そこにいるサーゼクス・ルシファーにも直接の恨みはないよ」

「ならば、なぜ破壊活動を行っているのかね?」


 サーゼクス・ルシファーからもっともな問いかけがなされる。
 そういえば、天使にも堕天使にも復讐の理由は述べていなかった気がする。
 戦いは避けられないだろうが、語り聞かせてもいいだろう。


「そうだね、説明くらいはしないといけないか。これは、願いを叶える宝石と哀れな少女の物語――――」


 両親の死の真相。捻じ曲げられた願い。復讐の意味。ボクの存在理由。
 敵対する理由を、淡々と述べていく。
 曹操たちも初耳だからか、興味深そうに聞いていた。
 
 
「――――というわけだ。理不尽だろ?でも、ボクはもう止まらない。ボクの意思で、化け物を根絶やしにして見せる」

「なるほどね。確かにそんな理由ならば、俺たち英雄派と手を組むのは当然というわけだ」


 あんまりな理由に絶句している悪魔たちを除いて、曹操が得心したとばかりに同意した。
 硬直から解けたリアス・グレモリーが、厳しい表情を浮かべつつ、問いかけてくる。


「はやて、貴女との対立は避けられないというのね」

「その通り。おや、まだ踏ん切りがつかないようだね。余計な遠慮をされたくないから言っておくけど――」


 連絡役としてグレモリー眷属と行動を共にしていた紫藤イリナを見やり述べる。


「ミカエルを殺したのは、ボクだ」

「なんですって!?」


 紫藤イリナは憤怒の表情を浮かべた。
 ゼノビアも似たようなものだ。
 アーシアは、表情が読めない。


「バラキエルも先ほど殺してきた」

「っ!」


 姫島朱乃が、動揺する。
 バラキエルは、彼女の父であり、幼少のころの体験からほぼ絶縁関係にあった。
 それでも、実父の逝去を聞かされ、思うところがあるのだろう。


「黒歌も殺した」

「なっ!?」


 塔城子猫が、目を大きく見開いた。
 姉の黒歌が、はぐれ悪魔となってから会っていないはずだ。
 黒歌は、ヴァーリチームの一員であり、ヴィータ姉が殺した。
 

「ヴァーリ・ルシファーも死んだ」

「なんだって!?」
『白いのが敗れたというのか』


 兵藤一誠とドライグが驚きの声をあげる。
 無理もない、今代の白龍皇ヴァーリ・ルシファーの力は、それだけ圧倒的だったのだから。


「そして、先ほどの攻撃で冥界を焦土に変えたのもボクだ」

「……」


 沈黙が広がる。
 あれだけの攻撃をしたことに気づいてはいても。
 いざ実際に言葉にされると絶句してしまうのも仕方ない。
 広大な天界も冥界も一瞬で焦土に変えてしまうほどの力。
 筆舌にしがたい動揺を受けるのも当然だろう。


「さあ、これで余計なことを考えずに敵対できるだろう。最終決戦といこうじゃな――――」

「――――待ってください!」


 いままでずっと黙っていたアーシアが唐突に声をあげる。
 すぐにでも激突しそうな緊張の中、彼女に意識が集中する。
 その表情は全く読めない。


「はやてさんの目的は『化け物』の根絶ですよね?」

「ん?まあ、そうだね」

「そして、はやてさん。貴女は、ほぼ不老で合っていますか?」

「……驚いた。どうして分かったんだい」


 夜天の書の保護下にあるボクは、不老であり。
 自動修復システムのおかげで、ほぼ不死身でもある。
 だが、そのことを外部に漏らした覚えはない。


「シグナムさんたちは、全く年をとっていないと部長から聞かされました。そして、はやてさんの今の姿。
 『夜天の書』を手に入れた9歳のころから、まったく成長していないのではありませんか?」

「まいったね。ああ、それで合っているよ。子供体型はけっこうコンプレックスだから教えたくなかったんだけどなあ」


 苦笑しながら、アーシアに返す。
 せっかく、この姿は第二形態だとする言い訳をするつもりが、無駄になってしまった。


「けれども、それが今になって何の意味があるというんだい?」

「悪魔陣営を含め、科学が進んだ現代では、どの神話勢力も衰退の途上にあるのは、ご存知ですよね?」

「……ああ、知っているさ」


 戸惑いながらも、返事をする。


「はやてさんは、人間世界にちょっかいをかけることが許せないんですよね?」

「そうだね」

「だったら――――」


――――神話勢力が人間世界に手を出さないように、監視すればよいのではありませんか?


 それは、意表をつく提案だった。


「不老であり、圧倒的な戦力をもっているはやてさんならば、人間世界との不可侵条約を結ぶこともできるはずです。もし条約を破棄するならば、そのとき改めて攻め滅ぼせばいい。

あとは、人間世界との交流を失った神話勢力は、ゆっくりと滅亡していくでしょう。
 少なくとも、いろいろと考える時間が得られたはずです。」


 絶句した。言葉も出ないとは、まさにいまのボクをあらわしているだろう。
 聞き耳を立てていた周囲の者たちも、驚いたり、納得したり、と様々な反応をしている。


「ふふふっ、そっか。滅私滅相。すべてを自らの手で滅ぼすしか方法がない、とボクは短絡的な考えをしていたというわけか。視野狭窄に陥った結果が、いまのザマ、か。アーシア、キミに相談していれば、ボクは……いや、いい」

「はやてさん……」

「残念ながら、もう動き始めてしまった。あとは、結末まで突き進むしかないんだよ。ごめんね、アーシア」 

「そんなっ!いまからでも戻ることはでき――」

「――いや、無理だよ。周りを見渡してみるといい。天界と冥界を焦土に変えた時点で、和解の芽は摘んでしまった」


 確かに、最初からアーシアの提案通りに動いていれば、結果は違ったかもしれない。
 けれども、いまとなっては、IFの話。
 もう今更後戻りはできない。


「いまなら逃げても見逃そう。一度戦い始めたら、手加減はしない、と宣言しておくよ」


 グレモリー眷属を見渡しながら言い渡す。


「望むところよ。これだけ好き勝手されたのだもの。きっちり責任はとってもらうわ」


 リアス・グレモリーが、雄々しく宣言した。
 アーシアを見ると、彼女も頷いている。


(分かっていたこととはいえ、やはり敵対するしかなかったか)


「その意気やよし。曹操、どっちをやりたい?」

「そうだね。サーゼクス・ルシファー眷属は任せてもいいかい?グレモリー眷属にリベンジしたい」

「わかった、それで行こう」


 こうして、禍の団と悪魔の残党との戦いの火ぶたが切って落とされた。





「授業参観……かあ」


 憂鬱気にため息をつくはやてをみやる。
 月日が経つのは早いもので、今年、はやてとあたしは中学校に進学してから2年目になる。
 出会ったとき、はやては、小学校三年生だったから、かれこれ4年は経った。
 昨日は、授業参観で、いろいろなことがあった。
 毎年、授業参観の日になると、はやては暗い表情を浮かべる。
 ヴィータもいいかげんにはやてと一緒の学校生活にも慣れてきたが。
 たくさんの父兄が参観する中では、居心地が悪いのも事実だった。


「はやて……」

「ん?ああ、ごめんよ、ヴィータ姉。みんながいるから寂しくないよ」


 微笑をうかべて、大丈夫、と返事をするはやて。
 だが、姉の目はごまかせない。
 はやての目にうっすらと浮かぶ感情、それは――寂寥。
 

「それに、今年は、『保護者』が見に来てくれたからね」


 表情を苦笑に変える。
 あたしも似たような表情をしていることだろう。
 なにせ――――


「――――まさか、魔王直々に来るとはなあ。リアス先輩のついでだとは思うけれど」

「サーゼクスには、世話になりっぱなしだな」


 そう、今年は、サーゼクス・ルシファーが、保護者として来た。
 同じ学校に通うリアス・グレモリーが本命だろうが、わざわざ見に来るのは初めてだ。
 苦笑交じりに言葉を交わしながら思う。
 これだけ見れば、サーゼクス・ルシファーとはやての関係は良好に思える。


「もうすこし嬉しく思ってもいいはずなのに、ね。ボクは薄情ものだ」


 だが、実際にはやてが示した反応は、嫌悪感だった。


「あれじゃないか。思春期の娘は、父親に反発したくなるらしいじゃねえか」

「あははっ、ヴィータ姉。そうかもね。……でもさ。事実だけみれば、サーゼクスはボクの父親代わりのはずなんだけどねえ。何年経っても親しみを感じられないなんて、ボクは冷たい人間だよ」


 またもや憂鬱そうなため息とともに、嘆くようにぼやいた。
 だが、ヴィータはそうは思わない。
 他人としっかり線引きし、身内にとことん甘いのは確か。
 だがしかし、他人に冷たいかといえば、全くそんなことはない。


「はやてが冷たい人間とか、そんなわけないだろう。お・ね・え・さ・ま?」

「その呼び方はやめてくれよ、ヴィータ姉」


 照れくさそうに笑うはやてを見ながら、いじわるそうに呼んでやる。
 女性に優しく、ボーイッシュな性格をしているはやては、学校でも人気者だった。
 2年生にも関わらず、生徒会長を務めていることからも、その人気ぶりがわかるだろう。
 上級生にさえ「お姉さま」呼ばわりされるのだから、相当だ。


「そっちこそ、一部では、大人気じゃないか」


 ヴィータもまた、生徒会に書記として所属している。 
 彼女は、はやてと出会ってからは、護衛も兼ねて、ずっと一緒に通学していた。
 クラスも同じであり、ヴィータがもっとも長くはやてと接しているといってよい。


――――はやては、9歳のまま成長しない。


 つまり、不老が発覚してからは、「エターナルロリータはちょっと……」とげんなりした顔をしたあと。
 必死に変身魔法を練習したはやては、いまでは呼吸をするのと同じように、変身魔法を日常的に維持していられる。
 不自然でないように、年齢に合わせて、身長を伸ばしていった。
 

「そう、なにせエターナルロリータだもんね」

「はやて、喧嘩売っているのか?というか、お前も同類だろうが」


 ヴィータも一応、変身魔法は行使できる。
 だが、日常的に維持できるかというと、できなかった。
 はやての変身魔法は、才能と努力のたまものである。
 小学三年生で、転入してからずっと、成長しないヴィータも、はやてと同じくらい人気があった。


「あははっ、ごめんごめん。冗談だってば。でも、人気があるのは本当だよ」


 はやてとヴィータ。
 二人は常に一緒に行動している。
 見た目とは正反対に、姉としてふるまうヴィータと妹分のはやて。
 凸凹コンビの二人は、容姿端麗であり、男子生徒に人気だったが。
 ともにボーイッシュな性格をしており、むしろ、女子生徒の方にこそ好かれている。


 同じ学校、同じクラスに通い続ける。
 このあたりには、サーゼクス・ルシファーの配慮があった。
 そう、彼には、本当に世話になっている。
 とりとめのない話をしながら、ヴィータは思う。
 彼女は別にサーゼクス・ルシファーに隔意を持っていない。
 はやてにも嫌う理由はないはずだが、なぜか、出会った時からずっと嫌悪感を抱いているようだ。


(嫌な予感がする。いや、何があろうとはやてはあたしたちが守ってみせる)


 妙な胸騒ぎを覚えつつ、誓う。
 大人びているようで、その実、あまえたがりな子供っぽいところもある妹分を、必ず守ってみせると。





 目の前に広がる光景を見て、ため息をつく。
 ルシファー眷属との決戦は、10分と経たずに決着がついた。
 いまは亡骸が転がるのみである。
 さて、曹操たちはどうなったかと見やると、


「あらら、あっさり返り討ちとは。やはり、グレモリー眷属は侮れない」


 丁度、最後まで立っていた曹操が、兵藤一誠によって倒されたところだった。

 
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