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工夫しないと老舗も

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第二章

 美空は二人を席に案内してからメニューを尋ねた。
「何にしますか?」
「ソーセージとベーコンのピザにね」
 亜希はまずそれを注文した。
「スパゲティカルボナーラとシーフードアヒージョをいただくわ」
「おうどんとの接点全然ないわね」
「だからあえてよ」
 こう返す姉だった、店の中でも。
「そうしたメニューを選んでね」
「勉強するのね」
「今回だけじゃないから」
 店に来るのはというのだ。
「これから度々お邪魔してね」
「食べてなのね」
「勉強させてもらうわ」
「うちのが強引に言いまして」 
 亜希の夫は困った顔で言ってきた。
「僕は中華とか韓国料理とかがいいんじゃって言ったんですが」
「同じアジアだからですか」
「タイとかベトナムでも」
「それじゃあありきりたりじゃない」
 亜希は今度は夫に言った。
「だからここはあえてね」
「亜希お姉ちゃん子供の頃から発想が時々奇抜なんですよね」
 美空は姉の夫の言葉を聞いてやれやれといった顔で述べた。
「ですから」
「今もだね」
「はい、うどん屋さんなのに」
 それでもとだ、美空は亜希の夫にも話した。
「イタリアンレストランで勉強とか」
「だから言ってるでしょ」
 亜希は妹に店でも強い声で言った。
「思わぬところこそね」
「勉強になるのね」
「そうよ」
 こう言うのだった。
「だからよ。大体お店はうちの人と職人の人が麺打ってるけれど私もだし」
「お姉ちゃんもよね」
「おつゆも作ってるし」
「会計がメインでも」
「忙しい時なそうしてるのよ」
「そういえばお姉ちゃんの打った麺もコシあるわね」
「足を使ってるからね」
 手で打つだけでなくだ。
「だからコシもあるのよ」
「ちゃんとお店やってるってことね」
「けれどそれだけじゃ駄目なのよ」
「常に勉強してこそっていうのね」
「お店はよくなるから」
 だからだというのだ。
「今もよ」
「うちに来てなのね」
「勉強するわ」
「じゃあね、ただどう考えても」
 美空は眉をこれ以上ないまでに顰めさせて姉に言った。
「おうどんとトマトやオリーブオイルは合わないわよ」
「そこからどうヒントを得られるかわからないでしょ」
「どうかしらね」
 とにかく美空はうどんとイタリア料理は合わない亜希は的外れなことを言っていて実行していると思った。だが亜希は本気で。
 何度か夫婦で美空の店に行った、そして他の店にも行って勉強を続けた。そして暫くして妹に携帯をかけて言った。
「遂に新メニューが出来たわ」
「まさかと思うけれどイタリア料理にヒントを得て?」
「ええ、そうよ」
 まさにというのだ。
「そのメニューが出来たのよ」
「嘘じゃないわよね」
「嘘でこんなこと言わないでしょ」
「お姉ちゃんはね」
「それで今度だけれど」 
 姉は妹にさらに言った。
「うち来てくれる?」
「お姉ちゃんのお店によね」
「そう、来てね」 
 そしてというのだ。 
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