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【完結】RE: ハイスクール D×D +夜天の書(TS転生オリ主最強、アンチもあるよ?)

作者:羽田京
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第5章 神話世界のアルマゲドン
  第24話 天界への階段

 いまボクは天界にいる。
 
 
 ヴィータ姉たちに縋り付いて、ひとしきり泣いた後。
 覚悟を胸に、先に進もうと決めた。
 まずは、相手に準備させる時間を与えないように、そのまま天界へと侵入した。
 数多の神獣や天使たちが立ちはだかったが、すべて薙ぎ払う。
 
 
「――――響け終焉の笛、ラグナロク・ファランクスシフト」
『Ragnarok Phalanx Shift』
 
 
 数千にも上る最大級の広域せん滅魔法で、天使たちの軍勢ごと焼き払う。
 砲撃のあとには、見渡す限り荒野と化した大地が広がっていた。
 だが、まだ攻撃は終わりではない。
 ボクの使命が、「化け物を皆殺しにする」ことである以上、少なくとも天界そのものを破壊する必要がある。
 
 
「――――来よ、白銀はくぎんの風、天よりそそぐ矢羽となれ、フレースヴェルク・ジェノサイドシフト!」
『Hrasvelgr Genocide Shift』
 
 
 万を超える超長距離砲撃魔法を射出する。
 ジュエルシードを内蔵しているからこそできる、力技だ。
 一つ一つの攻撃力も、大幅に増しており、アルカンシェルとほぼ同等といえる。
 つまり、一撃で東京都市圏を壊滅できる、といえば分かりやすいだろうか。
 だからこそ、煙が晴れた先に見えるのは、何もない不毛の大地のみだった。
 
 
「ふう。これでよし。天界はもう2度と使えないだろう――――残念だったね、ミカエルさん」
 
 
「八神はやて……で、合っていますか?ずいぶんと、若返っているようですが」
 
 
 慌てて戻ってきたのだろう。治療がいまだ不完全な状態のミカエルが来ていた。
 回復役のアーシアは、『旅の鏡』によって神器の能力をしばらく使えないのだから。
 だが、毅然とした態度は、まさに天使長と呼ぶに相応しい。
 というのに、場違いにも戸惑いを見せる、ミカエル。
 
 
 ――――まあ、この姿を見れば仕方がない、か。
 
 
 今のボクは、極大の広域せん滅魔法を連発するために、リインフォースとユニゾン状態にある。
 つまり、9歳児モードなわけだ。
 そのうえ、髪と目の色も違っている。
 
 
「ああ、合っているよ。まあ、その、なんだ。変身したのだよ、変身。決して、この姿が、子供体型が真の姿とかではないよ?勘違いしないでほしい」
 
(主はやて……)
(はやてちゃん、気にしていたのね)
(主よ、どのようなお姿であっても私は気にしません)
(マスター、私の不徳の致すところです)
(お前たちにはわからないだろうな、この気持ちは。はやて、あたしは味方だぜ)
 
 
 平然と嘘をついた。
 家族のあきれたような声が、念話越しに聞こえた。
 ただし、若干一命、ボクの味方をしてくれた。
 まあ、あえて誰とはいわないが。
 
 
「貴女の行動は、ご両親の復讐のためですか?」
 
 
「ちが――――いや、そうかもね。正確には違うけれども、復讐で合っているよ」
 
 
 怪訝そうな顔をするミカエルを見て思う。
 直接の恨みは、ない。
 両親の復讐というよりは、死亡した『八神はやて』の復讐を代行しているといった方が正しい。
 復讐の相手は、「化け物」すべてであり、無差別だ。
 だが、母を追放した元凶であることも確か。
 ならば、復讐の相手ということで合っているのだろう。
 
 
「私に復讐しようとするのは、構いません。これも、因果応報。自業自得といえるでしょう。では、なぜ関係のない天界の住人まで巻き込むのですか?」
 
「もっともな問いだね。この復讐は、個人的なものだ。だが、ボクは、とある願いを叶えるための存在でね。その願いが、『化け物の根絶』だったというわけだ」
 
「物騒な願いですね。では、そのお願いをした人に会わせて下さいませんか?できれば、話し合いたいのです」
 
 
 この期に及んで、話し合いを所望されて、若干戸惑う。
 天界を滅茶苦茶にされたにも拘らず、なぜ殊勝な態度をとれるのだろうか。
 天使だからかと考えて――気づいた。
 戦力が圧倒的に違うのだ。
 あっという間に天界を焦土に変えたボクたちと、戦って勝利できるとは考えていないだろう。
 だからこその交渉なのだ。
 
 
「話し合い、ね。残念だけれど、願いを託した少女は、既に死亡している。だから、願いの修正は不可能なんだ。悪いね」
 
「そうですか――――では、アーシアに攻撃したのは、貴女の意思でしょうか?」
 
 
 さりげない問いに、心臓を鷲掴みにされたような気分になる。
 いままで割り切ろうとして、割り切れずにいた事柄だからだ。
 少し前の自分なら、みっともなく狼狽したことだろう。
 だが、今は違う。
 
 
「痛いところを突いてくるね――――ああ、ボクの意思だよ。
復讐の代行だとか関係ない。ボクの意思で、お前たち『化け物』を皆殺しにしてやる」
 
 
 いままでは、どこか他人事だと思っていた。
 哀れな少女『八神はやて』が願ったから、仕方なく復讐を手伝っている。
 どこか、そんな責任転嫁にも似た甘えがあった。
 その甘えを、家族は、見抜いていたのだろう。
 だからこそ、アーシアを殺したように見せかけ、ボクに足りなかった『覚悟』を、促したのだから。
 
 
「願いの修正は不可能。復讐も自らの意思で行う、ですか。もう交渉の余地はないということですね」
 
「その通りだ」
 
 
 悲しそうな顔をしたミカエルに毅然として言葉を返す。
 交渉は決裂した。ならばあとは――――
 
 
「ボクたちを止めたいのなら、力づくで止めればいい。さあ、かかってこい!」
 
「世界のためにも、貴女を止めなければいけません。行きますよ、皆」
 
 
 それぞれの掛け言葉を合図に、戦端が切って落とされた。
 
 
 ユニゾン状態のボクが、ミカエルに向かって砲撃を放つ。
 ヴォルケンリッターたちは、ミカエルが連れてきた天使たちに突撃していった。
 ミカエルと一対一の勝負がしたい。援護は不要。と、言ってある。
 
 
「リアスさんや、一誠さんは、とても悲しんでいましたよ!」
 
 
 砲撃魔法をはじきながら、光弾を放ってくる。
 余裕をもって避けようとして―――光弾が至近距離で爆発した。
 爆風に巻き込まれ、吹き飛ばされる。
 そこを見計らって、追撃とばかりに、砲撃を連射してきた。
 
 
「まったく動揺していませんね。とうに、覚悟は完了していたということですか」
 
「ゆさぶりのつもりかい?だったら、残念だったね」
 
 
 無傷のボクを見て、声をかけてくるミカエル。
 グレモリー眷属のことは、確かに気がかりだった。
 しかし、もう吹っ切っている。
 覚悟を済ませたボクが、動じることなどない。
 
 
「今度は、こちらからいかせてもらうよ!シュベルトクロイツ!!」
『Ja』
 
 
 長年の相棒たるデバイスを片手に、突撃する。
 虚を突かれたミカエルの懐に入り込み、一閃。
 吹き飛んだミカエルに、追い打ちとして砲撃を放つ。
 
 
「くらえ、クラウ・ソラス!」
『Claiomh Solais』
 
 
 轟音とともに、粉じんが舞い飛ぶ。
 煙が晴れた先には、傷つきながらも、戦意を保つミカエルの姿があった。
 
 
「さすが天使長。勢力のトップを務めるだけのことはあるね。
 だが、今の攻防で、勝てないことはわかっただろう。
 まだ、無駄な抵抗を続けるつもりかい?」
 
 
 わざと、嘲るような声をあげる。
 挑発して、激高したところにとどめを刺すつもりだったが。
 
 
「そうです、ね。力量差は、絶望的。確かに、私では、敵わないかもしれません。
けれども、犠牲になった天界の人々のためにも、いまも戦っている部下のためにも、諦めるわけには――――」
 
「部下、ねえ。周りを見てごらん?」
 
 
 ミカエルに周囲を見るように促す。
 いぶかしみながらも、辺りを伺った彼女は、信じられない光景に硬直した。
 まだ戦いを始めてから5分と経っていない。それなのに、
 
 
「そんな、全滅だなんて……」
 
 
 ――――引き連れてきた配下は、全滅していた
 
 

 
 
「やれやれ、見渡す限りの不毛な大地。ボクがやったこととはいえ、まさしく悪魔の所業だね。いや、悪魔もこれから滅ぼすんだけどさ」
 
 
 隣の『石像』に語り掛ける。
 その石像こそ、石化魔法『ミストルティン』で石と化した天使長ミカエルだった。
 部下の全滅を確認した後、改めて一騎打ちを再開した。
 その結果が、横にある石像である。
 
 
「はやてちゃん。お目当ての建物を見つけたわよ」
 
「ありがとう、シャマル。壊れてはいなかったのかい?」
 
「いいえ。あれだけの攻撃を受けたのに、ビクともしていないわ。あの建物だけは特別製みたい」
 
「そうか。まあ、重要性を考えれば、当然なのかもね」
 
 
 シャマルから情報を受け取り、現地へ赴く。
 ボクの前には、巨大にして、荘厳な建築物が鎮座していた。
 これこそが、神器を司る『神器システム』である。
 
 

 
 
 この世界には、神器という奇跡の体現がある。
 神器は人間に宿り、神器を宿した人間は、その能力を行使できる。
 
 
 能力の種類は、神器により様々だが、いずれも人間には過ぎた力だ。
 実際、人間世界は、神器所有者を中心に回っているといってよい。
 過去の偉人達が、軒並み神器所有者だったといえば、その凄さがわかるだろうか。
 
 
 原作知識の持ち主がいた地球では、奇跡は物語の演出にすぎなかった。
 そんなボクにとって、この世界は酷く歪に思えてしかたない。
 
 
 だって、そうだろう?
 人の努力や才能に関係なく「どれだけ強力な神器を宿しているか」で、
 人生が決まるといってよいのだから。
 
 
 アーシアは、その顕著な例だろう。
 『聖女の微笑』を宿した彼女は、物心つく前から、奇跡の行使を求められ、都合が悪くなると追い出された。
 追放された彼女は、神器を狙う堕天使によって、殺されかけた。
 
 
 いずれも、神器がもたらした悲劇だった。
 たしかに、一概に、悪と断ずることはできないだろう。
 聖書の神が神器をつくり、神器を宿した人間が世界を導く。
 これだけなら、まだいい。
 
 
 だが、
 
 天使は、神器を利用し奇跡をおこす。
 堕天使は、神器の力を恐れ、神器所有者を殺しまわる。
 悪魔は、神器をもつ人間を殺し、転生悪魔として味方にする。
 
 
 これでは、祝福ではなく、呪いではないか。
 原作でアザゼルもいっていただろう。
 
 
 ――――神がいなくても人間は暮らしていけるようだ、と。
 
 
 神だけではない。
 天使も堕天使も悪魔もその他の神話勢力も――全て不要だ。
 
 
 神器や神話による人の世界へのちょっかいは、ロストロギア災害の一種に過ぎない。
 これが、ボクが至った考えになる。
 それならば、話は簡単だ。
 ロストロギアは、封印あるいは管理しなければならない――だろう?
 管理局の真似ごとをするなんて、ね。
 どこまでいってもボクは「八神はやて」らしい。
 
 

 
 
「――――遠き地にて、闇に沈め、デアボリック・エミッション」
『Diabolic Emission』
 
 
 バリア減衰能力をもつ極大魔法を遠隔発生させる。
 サーチャーで位置を特定していた神器システムの中枢に、遠慮なく打ち込んだ。
 巨大な闇が、周囲を包み込む。
 光が戻ってきたとき、そこには更地のみが残っていた。
 
 
「これで、神器システムは無くなった。神器が、新たな宿主に転生することもなくなる。現存する神器の力も、やがて使えなくなるだろう」
 
 
 満足のいく結果に独り言ちる。
 と、そのとき、転移魔方陣が発生した。
 
 
「主はやて。地上から増援にきた天使たちの排除が完了いたしました」
 
「ありがとう、シグナム。『新たな力』はうまく扱えているかい?」
 
「はい、ほぼ扱いこなせています。いまなら魔王クラスでも、一対一で破れるでしょう」
 
「それは頼もしい」
 
 
 シグナムたちヴォルケンリッターの強化。
 これは、重要な課題だった。
 彼女たちは強いとはいえ、実力は、最上級悪魔程度でしかない。
 まあ、『程度』とはいえ、龍王タンニーンや、サーゼクス・ルシファーの『女王』グレイフィア・ルキフグス並の強さを誇って入るのだが。
 
 
 だが、ランキングトップ10と張り合うには、少々心もとないのも事実だった。
 世界を敵に回す以上、家族たち一人一人が相応の実力を持たなくてはならない。
 万一、人質にでもなったら大問題だからだ。
 ゆえに、ヴォルケンリッターを強化しなければならなかった。
 
 
 その強化した結果が、先ほどの戦闘で、発揮されていた。
 ミカエルが引き連れていた数十にも上る部下は、決して弱くはない。
 彼女の直属だけあって、一人一人が最上級天使並の実力を持っていた。
 本来ならば、ヴォルケンリッターでも分が悪い戦いだった。
 そう、本来ならば。
 
 
「オーフィスに感謝しないとね」
 
 
 家族の強化に一役買ってくれた『無限の龍』に、思いをはせる。
 彼女との『取引』があったからこそ、強化に成功したのだから。
 
 

 
 
 駒王協定の前日。
 皆、準備に追われていた。
 
 
「よう、調子はどうだ?」
 
「問題ないさ。そっちこそ、裏切りの準備はできているかい?」
 
 
 禍の団が所有するアジトで、ヴァーリ・ルシファーと挨拶を交わす。
 新参同士、気づけば気安い仲になっていた。
 禍の団は、『無限の龍(ウロボロス・ドラゴン)』であるオーフィスを頂点とした寄合所帯である。
 したがって、決して一枚岩ではなくいくつかの派閥に分かれている。
 
 
 特に力を持つ派閥としては、旧魔王派、英雄派、ヴァーリ・チームだろうか。
 ボクたちも、独立勢力『八神一家』として、注目を集めている。
 少数精鋭だが、実力は、抜きんでていると自負している。
 
 
 所属してすぐに、英雄派のトップ、曹操と模擬戦をした。
 激戦の末、結果は引き分け。
 非ユニゾン状態で戦ったため、そこそこいい勝負になった。
 もっとも、お互い本気ではなかったが。
 
 
「仮にも育ての親なのだろう。裏切りに躊躇はないのかい?」
 
 
 ずっと気になったことを聞いてみる。
 今度、三大勢力が結ぶ、休戦条約『駒王協定』を襲撃することになっている。
 襲撃時には、ヴァーリ・ルシファーが内部から裏切る手はずになっていた。
 
 
 ヴァーリ・ルシファーは、アザゼルによって育てられた。
 仲も悪くないと聞く。
 アザゼルのことは嫌いだが、親を裏切る心情というのは、ボクには理解できなかった。
 
 
「直球だな。俺は強者と戦いたい。禍の団に所属したのも、神話勢力相手に戦えると聞いたから。それだけだ」
 
「単純にして、明快な論理だね。優先順位の差か」
 
 
 家族を最優先に考えるボクと、強者との戦闘を最優先に考えるヴァーリ・ルシファー。
 価値観の違いといえば、それまでだが。
 同じ手段――禍の団に所属すること――を使っている点は、興味深い。
 テロリストになるリスクを負ってまでも、優先するべき目的をお互いに持っているからだろう。
 そもそも、復讐にとらわれたボクに、彼を非難する権利はない。
 
 
「オーフィスに『蛇』を頼んだと聞いたが、本当か?」
 
「知っていたのか。その通り、手っ取り早い強化手段だろう?」
 
「お前ほどの実力者が、『蛇』を貰う必要はないと思うがな。あれは、弱者にこそ有効なものだ。俺やお前クラスでは、大した恩恵は受けられんはずだが」
 
 
 『蛇』とは、オーフィスの力を込めた結晶である。
 これを取り込むことで、手軽にパワーアップできる。
 旧魔王派などは、『蛇』の力を手に入れて増長しているが。
 実にばかばかしい。
 
 
 ヴァーリ・ルシファーの言う通り、0の力を10にできるが。100の力なら、110になるだけだ。
 確かに、強化はできるだろう。
 だが、『蛇』を受けいれることは、オーフィスに生殺与奪の権利を握られるに等しい。
 ゆえに、ボクたちのようなランキングトップ10クラスには、不要な代物だ。
  
 
「『蛇』を受け入れてしまえば、オーフィスの眷属になるに等しいことを知らないのか」
 
「いや、知っているさ。それを承知の上で、ボクたちは力を手に入れた」
 
「ほう。借り物の力などに興味はないが……はやてたちとは、一度全力で戦ってみたいな」
 
「機会があればね」
 
 
 彼のわかりやすい反応に苦笑しつつ、内心で思う。
 『蛇』は、オーフィスと取引した結果、手に入れた。
 馬鹿正直に、『蛇』をそのまま飲んだわけでは、勿論ない。
 ちょっとした工夫をすることで、ヴォルケンリッターを大幅に強化することに成功したのだから。
 
 
(心配せずとも、最高の舞台を用意してやるさ、ヴァーリ・ルシファー)
 
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