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踊る犬と腐りきった家族

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第一章

                踊る犬と腐りきった家族
 武者小路源五郎はこの時保健所にいた、そうして保健所の人の話を聞いてその皺だらけで長方形の厳めしい顔を顰めさせて言った。
「飽きたからですか」
「あと臭いとか邪魔とか言ってですよ」
 保健所の人は彼と共に保健所の廊下を歩きながら話した。
「うちに捨ててきて」
「それで平気で帰ったんですね」
「笑いながら」
「全く、命を何だと思っているんだ」
 武者小路は顔を顰めさせたままこうも言った。
「大事な命だよ」
「世の中そうした人もいますから」
 保健所の人はその彼に悲しい顔で話した。
「ペットを最初は可愛がってです」
「飽きたらですか」
「捨てるんですよ」
「生きものはおもちゃですか」
「本当にそうした感覚ですね」
「生きものにそうしたことをする奴は人間にもそうしますね」
「ですね、交際相手に飽きたら捨てるとか」 
 保健所の人は悲しい顔のまま話した。
「自分が都合が悪くなったら切り捨てる」
「けしからん連中です」
「本当に世の中酷い人は徹底的に酷いですから」
 それもまた世の中という感じの言葉だった。
「ですから」
「それであの子もですね」
「そうです、よくツイッターで確認してくれましたね」
「実は今犬を探していまして」
「飼われるんですね」
「そうです、一緒にしたいこともありまして」
 見れば武者小路は七十過ぎと思われるが身体の動きはいい、髪の毛は灰色の角刈りで髪の毛も肌の感じも健康なものだ。
「それで、です」
「引き取ってくれるんですね」
「ツイッターで見た時は画像と紹介だけでしたが」
「捨てた家族のお話をここで聞かれてですか」
「正直怒っています」
 憤慨した声での言葉だった。
「全く以て」
「そうですか、では」
「これからですね」
「その子に会って下さい」
「わかりました」
 武者小路は保健所の人の言葉に頷いてだった。保健所の犬が入れられているコーナーに入った。そしてその中のトイプードルとチワワの間の子の茶色の毛の小さな犬を見た。そしてその犬の名前を確認した。
「名前は確かきなこでしたね」
「そうです、それで雄です」
「わかりました、では」
「この子をですね」
「引き取らせてもらいます」
「きなこ、よかったな」
 保健所の人はここでその犬に笑顔で声をかけた。
「ここから出られるぞ」
「ワン?」 
 その犬きなこは保健所の人の言葉に何が何かわからない感じだった、だが。
 彼は武者小路の家に引き取られた、老人は犬を家に連れて帰るとたまたま家に来ていた孫娘の明子、女子高生である彼女に事情を話した。すると明子は怒って言った。 
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