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ドリトル先生の競馬

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第八幕その三

「馬では進まないよ」
「そう言われると」
「そうだよね」
「モンゴルでもそうだし」
「東欧でもそうだし」
「平原だから」
 そうした場所だからだというのです。
「馬に乗ってもね」
「思いきり進めるよね」
「どんな場所でも」
「普通にね」
「そうだよ。そこはね」
 まさにというのです。
「義経さんでないと」
「考えつかなかったし」
「実行に移せなかった」
「そんな戦い方で」
「特別なものだったんだ」
「日本でも馬は山では進みにくかったし」
 この国でもというのです。
「しかも義経さんは狭い山道を通ったんだよ」
「すぐ傍が崖の」
「そんな場所を通るとか」
「普通ではとてもだね」
「考えつかないもので」
「ましてや一気に駆け下りるなんて」
「あの人は鹿でも下りられるなら馬でもと言って下りたけれど」
 それでもというのです。
「こんなこともね」
「考えつかないし」
「実行にも移さない」
「そうしたものなんだね」
「普通は」
「そうしたことが出来たから義経さんは天才だし」
 戦いの、というのです。
「凄いけれど」
「義経さんだからであって」
「普通のことじゃない」
「そうしたものなの」
「実際にこうしたことをした人は戦史でも稀だよ」
 そうそうないことだというのです。
「僕の知る限り義経さんだけだよ」
「険しい山道を馬で通って」
「その馬で一気に崖みたいな場所を駆け下りる」
「そんなことをしようと思ってした人は」
「それこそ」
「何度も言うけれど馬は平地を通るものだから」
 そうした生きものだからだというのです。
「そんなことはしないよ」
「それじゃあね」
「高等部の乗馬部の人も出来ないね」
「そうしたことは」
「とても」
「出来るものじゃないよ、とても」
 それこそと言う先生でした。
「常識の外にあることだから」
「僕でも絶対に無理だしね」
 老馬が言ってきました。
「狭い山道を通るとか」
「幾ら道産子みたいな馬でも」
 どうかとです、ジップも首を傾げさせました。
「やっぱり難しいね」
「鹿は違うよ」
 馬とはです、トートーは指摘しました。
「そもそもね」
「身体の大きさや体格も違うわ」 
 ガブガブも指摘します。
「鹿と馬じゃね」
「蹄も違うよ」
「そもそもね」
 チープサイドの家族も指摘します。
「馬は本当に平地を走ったりする為のもので」
「鹿は山道を走ったりする為だから」
「むしろ僕の方が山道に強いかもね」
 ダブダブが自分が豚であることから言いました。
「豚は猪の親戚だからね」
「猪なら山に住んでるから」
 ポリネシアがダブダブに応えます。 
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