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ツンデレ犬

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第一章

                ツンデレ犬
 山崎美香、茶色の髪を左右で短く編んだソバカスがある一五九位の背の少女の家にはポチという犬がいる、薄茶色と白の柴犬である。
 その犬について美香はよくこう言っていた。
「お父さんにもお母さんにもお兄ちゃんにも懐いて」
「美香にはなのよね」
 母の芳香はこう言った、娘と同じ色の髪の毛でやはりソバカスがある。背も同じ位でスタイルも似ているが髪型はショートである。
「懐いていないっていうのね」
「私が挨拶しても知らん顔で」
 それでというのだ。
「他の人が挨拶したら」
「ワンって鳴いてね」
「尻尾振ってくれるのに」
 これがというのだ。
「私に対してだけはね」
「知らん顔っていうのね」
「ご飯あげてもふんぞり返っていて」
 そのポチを見て言う、見れば部屋の隅で丸くなっている。
「お母さん達だと尻尾振るのよね」
「嬉しそうにね」
「それが私だとね」
 むっとした顔で言う。
「ふんぞり返って」
「貰ってやるとか?」
「そんな態度よ」
 そうだというのだ。
「それがね」
「腹が立つのね」
「全く、あんた何様よ」
 ポチ自身にも言う。
「私は何なのよ」
「犬は順番付けて動き生きものでしょ」
「じゃあ私は家で一番下とか?」
「お父さんお母さんお兄ちゃんでね」
「それでポチが来てなの」
「美香ちゃんじゃないかしら」
「全く、私の方が年上なのよ」
 美香は怒った顔でこうも言った。
「十七歳でね」
「それでポチは六歳ね」
「十一も年上なのに」
 生まれてすぐにこの家に貰われてずっといるのだ。
「あっという間にこの態度よ」
「生まれて一年位でだったかしら」
「全く、何で私にだけなのよ」
「犬は人より成長早いでしょ」
「六歳でもよね」
「もう人間だとおじさんだから」 
 ポチが雄であることから言う。
「お父さんとお母さんとお兄ちゃんはご主人で」
「じゃあ私は何なのよ」
「妹とでも思ってるんじゃないかしら」
「何で私だけ妹なのよ、それだとお兄ちゃんは弟じゃない」
「お兄ちゃんはいつもポチを躾けていたからね」
 それは彼が担当した、父も母もそうしたが兄が主でポチは今も美香の兄には絶対服従の態度であり言うことも絶対に聞く。
「だからよ」
「私は躾けてなかったからなの」
「そうじゃないかしら、それに女の子だから」
「妹なの」
「そうした考えかも知れないわね」
「全く、腹立つわね」
「けれどいじめたりしないわね」
 母は娘のこのことも言った。
「別に」
「私いじめ嫌いだから」
 それでというのだ。
「だからね」
「意地悪もしないのね」
「腹が立ったら言うだけよ」
 それが美香のやり方だ、人にも生きものにもそうしないのだ。
「だからね」
「それでなのね」
「別にね」
 そこまではというのだ。 
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