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ドリトル先生の競馬

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第三幕その三

「この乗馬部は」
「教育だね」
「学生さん達も教育しているんだね」
「そうだね」
「乗馬が危険だってことも」
「そのことも」
「これはいい部活みたいだね」
 こうしたお話をしてです、先生はまずは顧問の先生を探しました。すると中年の一七〇位の痩せた男の人が出てきました。
 その人は武田さんと言いました、高等部の先生で担当している教科は数学でした。
「この学園出身でして」
「それで乗馬部にもですか」
「所属していました」
 こう先生にお話するのでした。
「それで大学でもしていまして」
「それで今はですね」
「母校で教鞭を取りつつ」
「ここで、ですね」
「顧問もしています」
 こう先生にお話するのでした。
「実は」
「そうなのですね、それで少し部活を拝見させてもらいましたが」
 先生は武田さんにお話しました。
「馬は健康で学生さん達もよく教育されていますね」
「もう競技の結果よりもです」
「そうしたことの方をですか」
「重視しています」
「そうですか」
「はい、馬はよく食べて毛の手入れもして」
 そうしてというのです。
「勿論厨舎も奇麗にして」
「そちらもですね」
「整えて」
 そうしてというのです。
「馬達の健康には気をつけています」
「そして部員の学生さん達の教育もですね」
「そうです、さもないと危険ですから」
「馬に蹴られたり踏まれたり」
「馬は繊細な生きものですね」
「そうです、とても繊細で」
 先生もこのことについてお話します。
「人間も気をつけないとよくないです」
「そうですから」
「だからですね」
「気をつけています」
「そのうえで教育をされていますか」
「競技も大事ですが」
 それでもというのです。
「生きものに対することなので」
「教育にですか」
「より重点を置いています」
「それはいいことですね」
「競技に強くても」
「それでも馬を大事にしないで、ですね」
「マナーが悪いと」
 それこそというのです。
「乗馬をする資格がありません」
「いいことですね、スポーツはやはり」
「スポーツマンシップを忘れないで」
「そして安全もですね」
「相手がいるなら」
 その場合はといいますと。
「その相手を尊重することです」
「馬も同じですね」
「そう考えています」
 武田さんは先生に確かな声で答えました。
「いつも」
「そうなのですね」
「はい、ただ」
「ただとは」
「どうも乗馬でもです」
「勝つことにですか」
「そればかり考えている人がいますね」
 武田さんはこのことは残念そうに言いました。
「それは違うと思いますが」
「確かにそうした人はいますね」
 先生も否定しませんでした。 
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