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招き猫

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第一章

               招き猫
 小学五年生の神楽雛子は一つ下の妹の姫子と一緒に家の近所の公園で遊んでいた。その時にだった。
「ニャア」
「ねえあの猫」
「野良猫よね」 
 二人でその茶色の毛の子猫を見て話した、そしてだった。
 雛子がその猫を抱き抱えた、見れはお腹にハート型の黒い模様がある。姫子はその模様を見て姉に言った。
「お姉ちゃん、この子お腹にハード型の模様あるよ」
「あっ、本当ね」
 雛子もその模様を見て言った。
「あるわね」
「そうよね」
「面白いね、この猫」
「そうね、そういえばお父さんとお母さんうちで猫飼いたいって言ってたから」
「うちに連れて行く?」
「そうしよう」
 妹は姉に言った、見れば二人共黒髪ではっきりした目であり妹はポニーテールにしていて姉はおかっぱにしている。背は姉の方が若干高い。
「この子ね」
「この子雄ね」
 姉の方から妹に言った。
「そうね」
「うん、そうよね」
「まあとにかくね」
「お家に連れて行ってお母さんにお話してみよう」
 こう言ってだった、二人で猫を家に連れて行って母の夢子に話した。母は姉妹と同じ黒髪でロングヘアだ。楚々とした外見で大きな目は乙女の様だ。
 その母は猫を見て笑顔になったが。
 同居している夫の良樹の母、姉妹から見て祖母である女のことを思い出して言った。
「けれどお祖母ちゃんがね」
「あっ、お祖母ちゃんね」
「お祖母ちゃんがいたんだ」
 姉妹も祖母のことを思い出して嫌な顔になった、この祖母は極めてヒステリックで自己中心的で自堕落で執念深く底意地が悪いうえに強欲で自分以外の存在は全て忌み嫌う性根であるのだ。その為一家どころか親戚全員から嫌われているが平気で働かず遊んで暮らしている。家事もまともにしないので母が全てやっている位だ。尚且つ自分の長男を甘やかし働かないこの長男を月に一度家に上がり込んで金をせびってきても渡している。
 その祖母のことを思い出してだ、二人は嫌な顔で言った。
「今日も遊びに出てお家にいないみたいだけれど」
「お祖母ちゃん自分以外の生きもの全部大嫌いだし」
「この娘もね」
「飼うなって言うわね」
「それで済めばいいけれど」
「保健所に連れて行けって喚き散らしそうね」
「だからね」
 母は困った顔で言った。
「うちでは飼えないかも」
「お祖母ちゃんさえいなかったら」
「うちで飼えるのに」 
 姉妹で残念に思った、だが。
 そこで近所にいる岡田さんが家に来て言ってきた。
「そっちの筋でお祖母ちゃん車に撥ねられたわよ」
「えっ、お祖母ちゃんが!?」
「そうなの!?」
「真っ黒いベンツにね」
「真っ黒のベンツって」
「ヤクザ屋さんの車よね」
 姉妹はこのことをすぐに察した。
「その車に撥ねられたの」
「そうだったの」
「血の海の中でまったく動かないわ」
 すぐに病院に担ぎ込まれたが即死であった、撥ねたのはやはりヤクザ者で保険金と慰謝料が家にかなり入った。そして。
 祖母が死んだのでだ、家は猫を飼うことが出来た。
 姉妹の父であるサラリーマンの彼はその痩せた最近増えてきた白髪が目立つ小さな目のある顔でこう言った。
「正直お袋は厄介だったからな」
「そうよね」
「文句ばかり言ってすぐに喚いてな、テレビは独占して食べものの好き嫌いも酷くて」
 つまり文字通り害毒そのものであったのだ。
「そのお袋がくたばってよかった」
「あの、それがね」
 妻は夫に話した。 
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