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DQ3 そして現実へ…  (リュカ伝その2)

作者:あちゃ
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転職

<ダーマ神殿>

「うるっさいんだよアンタ等!!」
翌朝、ダーマ神殿の食堂に集まり、ティミーが開口一番に発した言葉!
肌艶が良くなり、ストレスが吹き飛んだ様子の母親と、心地よい脱力感を体に纏った父親に対して、睡眠不足気味な表情で怒りを露わにする息子が此処にいる。

「神聖な神殿で、明け方まで盛(さか)りやがって!」
よく見ると、この食堂にいる誰もがティミーの様な寝不足気味の表情である。
宿屋は安普請な造りの為、音声がダダ漏れだった様だ…

「しょうがないじゃん!夫婦なんだから…こうやって君は産まれたんだよ?」
「うっさいよ!久しぶりの再会だし、1.2時間くらいなら我慢もするさ!だが一晩中って何だよ!馬鹿なんじゃないのかアンタ達!」
「親に対して『アンタ』って…酷くないッスかビアンカ姉さん!?」
「そうねぇ…育て方間違えちゃったかしら…?」
リュカが絡まなければまともな人なんだが…この夫婦には何を言っても無駄である。



各人が朝食を終えると、ダーマ神殿のメイン機能…転職に皆が赴く。
予め必要事項を記載した書類 (名前、性別、前職業や希望の職業、等々…)を持ち、大神官が居る祭壇へと長蛇の列が出来上がる。


1時間程順番を待つとカンダタの番になる。
大神官に書類を手渡し眼前で大人しく待つカンダタ。
「転職の地、ダーマへようこそ。カンダタは盗賊から戦士へと転職を希望ですね?」
「は、はい!俺、心を入れ替えたんです!その証明の一つとして戦士になろうと思ってます!俺みたいな悪人でも転職できますか…?」
大神官に懺悔をするかの様に転職を切望するカンダタ…

「大丈夫です。悔い改める気持ちがお有りなら、貴方にも転職は可能ですよ。しかし戦士としては1からの再出発になります…どうか焦らずに自身を成長させて下さい」
「は、はい!!」
カンダタの返事を聞くと、大神官は天を仰ぎ祈りの言葉を唱え出す。
そしてカンダタの体が光に包まれ、その光がカンダタの中へと吸い込まれて行く。
「…これより貴方は戦士カンダタです。新たな人生に幸あれ!」


少し離れた所で転職希望者の列を眺めているアルルとティミーの元に、カンダタが自信に満ちた表情で戻ってくる。
「これで俺は盗賊とはおさらばだ!真っ当に生きる第1歩だぜ!」
「おめでとうカンダタ…でも、待たされた割には、あっけなく転職出来るんだね?」
ティミーの感想に思わず苦笑いするカンダタ…

そして付近を見渡し…
「リュカの旦那は?…報告しておきたいんだが…」
カンダタの質問にティミーは辟易した表情で、右肩越しに右手親指で指差す。
「あっちでイチャついてる…」

ティミーの指差す方へ目を向けると、其処には壁を背に座り込むリュカと、リュカの膝の上に座るビアンカが…
膝の上に座るビアンカを後ろから包み込む様に抱き締め、時折胸を揉むリュカ…
そして嬉しそうに微笑みながらリュカの唇や耳たぶへキスをするビアンカ…

「お父様とお母様はラブラブなんですよぉ!素敵ですぅ!!」
「ティミーさんも大変ですね…」
「ありがとうアルル…それと僕の事はティミーで良いよ。『さん』付けはいらない。………しかしこの数ヶ月、父さんが迷惑をかけた様で…本当にごめんね…」
「い、いえ…」
アルルとティミーは共に深い溜息を吐き、リュカとビアンカを見つめ眺める。

「ビアンカさんて…何時もああなんなんですか?」
「………さすがに母さんはまともな人なんだけど…この数ヶ月、父さんと逢えなかったのが寂しかったんだろうね…その反動で………普段はまともなんだよ!父さんと違って!!」
昨晩の寝不足と相まって疲れ切った口調でティミーが呟く…丁度其処へハツキが転職を終えて戻ってきた。

「お待たせしました。無事、武闘家になる事が出来ました!皆さんのお役に立てるよう頑張りますので、これからもよろしくお願いします!」
「お疲れハツキ…期待してるわよ!」
ハツキが合流し、挨拶もそこそこにイチャつく夫婦を眺め続けている…
「しかし何で誰も注意しないんですかね?幾ら何でも神官が神殿内では慎む様言いそうですけど…」
そんなハツキの疑問にティミーが答えた。

「…みんな…怖いんだよ…」
「………怖い?何がです?」
「母さんの事が怖いんだよ…」
「はぁ?何言うてんの?ビアンカさんの何処が怖いねん」
エコナだけではなく、皆が不思議そうにティミーを見る。

「…あそこの壁を見てごらん…」
リュカとビアンカがイチャついている所の反対側の壁を指差すティミー。
「何か…真っ黒に焦げてるなぁ…」
ティミーが指差す壁は10メートル近くある天井までが、真っ黒に焦げている…この空間に入った時から皆が気になってはいたのだが…

「あれ…母さんがやったんだ…」
「はぁ?どうしてビアンカさんは、ダーマ神殿を燃やそうとしたの!?」
「いや違うんだ…聞いてくれアルル!別にダーマ神殿を燃やそうとしたんじゃないんだ!この世界…まぁ、僕等からしたら異世界へ着いて早々に、母さんはナンパされたんだ…僕達はこのダーマ神殿の裏手に落ち、情報収集の為に色んな人々に話を聞いてたんだけど…母さんに寄ってくるのは、盛りの付いたオスばかりで…碌な情報を提供しないクセに、しつこく口説いてくるから…その…イラついたらしくて…メラミを…」

「メ、メラミでナンパ野郎を黒こげにしちゃったんですか!?」
「してないよ!誰も傷つけてないよ!誰も居ない壁に威嚇として放ったんだ!あの焦げ跡はその時のなんだ!」
「はぁ…そんな事が…それで皆さん、恐れてるんですか…」
「それにしても、メラミであんなでかい焦げ跡が出来るのか?メラゾーマじゃないのか?」
高さ約10メートル・幅約6メートル…
そんな焦げ跡を指差し、カンダタが異を唱える。

「メラゾーマだったら、この神殿は廃墟になってるよ…母さんの魔法力は桁違いなんだ…」
「お、怒ると怖いのは…夫婦そっくりなんですね…」
「ははははは………」
アルルの力無い感想に、力無く笑うティミー。


そこへリュカ達が合流し、アルル達に突飛な提案を提示した!
「なぁティミー、アルル……………ちょっとムラムラしてきたから、1時間程宿屋へ行ってくるよ!」
「はぁ!?何馬鹿な事を言い出すんです!もうちょっとでウルフ君も合流しますよ!」
「そうですよリュカさん!みんなが揃ったら、イシスに向けて出発するんですから…無意味に宿を取らないで下さい!」
常識人のティミーとアルルが、非常識星人のリュカに食って掛かる!
「だからさ、ウルフが合流するまでの間で良いからさ…チャチャっと済ますから…」
独特な思考回路で物を言うリュカ…

そこへ賢者になったウルフが合流した。
「皆さんお待たせしました!賢者ウルフの誕生です!」
「なんだよぉ…空気読めよぉ…使えないなぁウルフは!もう一回並んでこいよ!」
意気揚々と合流したウルフ…
しかしリュカの予想外の言葉に泣きそうになっている…
「ごめんねウルフ君。この男は常人とは違う思考回路で生きているから、気にしてはダメだ!…そんな事よりおめでとう!君なら偉大な賢者として、この世界を平和に導けるよ!」
「えぇ!ウルフには期待しているわよ!ハツキが武闘家になった今、回復面でもウルフは重要な存在になるんだから!」
「あ、ありがとう…ティミーさん…アルル…」
リュカを無視する様に話を進めるティミーとアルル…

さて新生勇者アルル一行の今後の旅はどの様になるのか…
ムラムラしちゃったリュカは、落ち着く事が出来るのか…



 
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