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NARUTO日向ネジ短篇

作者:風亜
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【日向は木ノ葉にて】

「なぁハナビ姉ちゃん、日向って木ノ葉にて最強なのか?」

「え? 急に何を言い出すのよ、ボルト」

 日向家で叔母から体術指南を受けたついでに、ボルトは縁側で話を振る。


「ほら、この前このご時世に道場破りみたいなの来てたじゃん。そいつが大声で『木ノ葉にて最強と名高い日向宗家のご当主に腕比べを申し込む!』とか言って」

「あぁ……雲隠れから来たとかいう大柄の男ね。よりによって雲隠れから訪れるなんて……、当時の事を知っているわけないわよね……知っていたらあんな堂々と日向家に来れるはずないもの。随分時代も緩くなったものだわ」

 溜め息をつく叔母に、ボルトは疑問が湧く。


「雲隠れが、どうかしたのか?」

「いい機会だから、話しておきましょうか。あんたのお母さん……つまり私の姉様の事だけど、幼い頃雲隠れの忍びに攫われかけた事があってね」

「え、マジか? そんなの初めて聞いたってばさ」

「それはそうでしょうね……。まぁ当主直々に娘を守ったそうだから未遂で済んだけど、相手頭を問答無用で殺してしまったから……そのせいもあって戦争になりかけたらしいの。条約違反をしたのは、相手の里の方なのに」

「ハナビ姉ちゃんはその時どうしてたんだ?」

「私はまだ生まれてないわよ。姉様が攫われかけたのは三歳の時だし、私と姉様は五歳離れてるからね」

「あぁ、そうだったっけ」

 思い出したように納得するボルト。


「……里同士の争いを回避する交換条件として、当主の遺体を差し出せと言ってきたらしくてね。その身代わりとなると自ら名乗り出たのが、当主の双子の弟であるヒザシ様だったのよ。里と一族と……兄と息子を守る為に、ね」

「何で、そんな……」

「当時の雲隠れの思惑としては、白眼の秘密を手にしたかったんでしょう」

「白眼の秘密って?」

「他里に白眼を使われてしまうのは避けなければならなかった。だから……日向の呪印を刻まれている分家のヒザシ様を影武者とする事でその命を絶ち、呪印を発動させて白眼の能力を封じ、雲隠れには遺体を渡しつつも白眼の秘密を探られないようにしたの」

「日向の呪印って……昔あったっていう、分家に刻まれる呪印制度のことだよな。けど影武者ってのがバレたら……」

「奴らは当主の遺体を差し出せと言った。けれど実際は白眼が欲しかったとは後から言えない……奴らの手元に残ったのは、能力の封じられた白眼だけ。……そういう事よ」

「何だかなぁ……胸くそ悪い話だってばさ」

「そうね、今でこそ里同士の仲は良好だけど昔の話とはいえ日向家にとって雲隠れには良い印象は無いわ。父上が腕比べを断るのも無理ないのよ」

「けどあの腕比べを申し込んで来た奴、日向は名ばかりの一族だって……」

「言わせておけばいいの。実際日向は木ノ葉で本当に最強なわけじゃないし……“日向は木ノ葉にて最強”というのは、父上なりの一族としての誇りで言っていたと思うのよ。寧ろ父上は、大戦後その言葉を口にしなくなったのに、一体どこで尾ひれが付いたのかしらねぇ」


「そういや前にシカダイに、お前んとこの母ちゃん日向のお姫様だろ?って言われたことあるんだけどさ」

「え? 何それ、……姉様が日向のお姫様なら、私は何なのよ」

 自嘲気味に聞いてくるハナビに、ボルトは首を傾げながら言う。

「日向の……お姫様姉妹??」

「あははっ、やめてよ恥ずかしいわね。そういうの柄じゃないわよ姉様も私も。そもそも日向の次期当主は私なのに、全くどこでそんな身も蓋もない尾ひれ付いたのかしら。正直、くだらないわよそんなの」

 ハナビは深い溜め息をつき、ふと縁側から虚空を見つめる。


「……本当に日向が木ノ葉にて最強だったら、ネジ兄様が死ぬはずないでしょうに」

「じゃあ……ネジのおじさんが生きてたら、日向は木ノ葉にて最強だって胸張って言えたわけか?」

「一族の誇りとしてならね、成り立つと思うわよ。……分家のネジ兄様が日向一族の当主となる事に、大きな意味があっただろうから。一族の誰よりも日向の才に愛された人だもの、ネジ兄様は」

「ふーん……。おじさんとハナビ姉ちゃんは確か六歳離れてたんだよな、どんなこと話したりした?」

「うーん、そうねぇ……始めのうちは近寄り難い雰囲気だったけど、暫くしてから快く稽古をつけてくれるようになったかな。中忍試験本戦のナルトさんと戦っているのを観戦していた時から憧れていたのよね、ネジ兄様の強さに」

 その頃を懐かしむように目を細め蒼空を見上げるハナビ。

「兄様が下忍から飛び級で上忍になってからは、忙しいらしくてそんなに話せる機会はなかったんだけど……日向一族の将来については、時々話し合ってはいたかしらね」

「日向一族の、将来?」

「えぇ……、次期当主は私じゃなくて、ネジ兄様が相応しいって話したりしたんだけれど、当の兄様は宗家の跡目の私に遠慮していたわね……。幼い頃から跡目として厳しい修行を受けて来たのに、その私を差し置いて分家の自分が当主となるなど烏滸がましいって……本当に頑固なんだから。──四歳の頃に父親のヒザシ様を亡くして、それからは宗家にしか伝授されないはずの回天を自力で会得してしまうほど努力して厳しい修行をしてきたのは、ネジ兄様の方なのに」

 一旦言葉を切ったハナビは俯き、呟くように言う。


「日向は確かに変わった。──変わらなければならなかったのよ、大きな犠牲と共に」

「大きな、犠牲……。ネジおじさんは、オレの父ちゃんと母ちゃんを身体を張って守ってくれたんだってな」

「そうよ、……それがネジ兄様の意思だったにしても、余りに惜しい人を亡くしてしまったわ」

「ネジおじさんが生きてくれてたら、修行をつけてもらいたかったな……」

 独りごちのように言うボルトに、ハナビはある提案をする。

「出来なくもないわよ? 私がネジ兄様に変化すればいいの。流石に本人にはなりきれないと思うけど……上忍当時の兄様には引けを取らないはずよ。回天だってちゃんと使いこなせるからね。……どうボルト、やってみる?」

「おう、それならお願いするってばさ!」

 縁側から広い場所へ移り、ハナビは上忍当時の従兄のネジの姿を鮮明に思い浮かべて変化し、白眼を発動させ柔拳の構えをとって強気な笑みを見せる。


『──さぁ、掛かって来いボルト。俺がお前を一から鍛え直してやる』




《終》



 
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