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戦国異伝供書

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第七十一話 黄色から紺色へその十二

「足元にも及ばぬ位にじゃ」
「織田家を大きくされますか」
「あの御仁が」
「そう言われますか」
「間違いなくな、わしもあの御仁と戦えば」
 その時はというと。
「敗れるわ」
「まさかと思いますが」
「そうなるのですか」
「宗滴様でも」
「二倍三倍の兵なら戦える」
 それ位ならというのだ。
「如何なる相手でもな」
「三十倍の一向宗を相手にした時に比べれば」
「二倍三倍ならですな」
「戦えますな」
「それが武田殿や長尾殿であってもな」
 強さで天下に知られる彼等でもというのだ。
「流石に攻められぬが」
「それでもですな」
「宗滴様ならですな」
「それならですな」
「戦えますな」
「それが出来る、だがおそらく当家が織田家と戦う時になれば」
 その時はというと。
「二倍三倍どころではない」
「遥かに多くの敵と戦う」
「兵の数はそうなっておりますか」
「その時の織田家は」
「天下に覇を唱えてな」
 そこまでの家になってというのだ。
「そして当家との戦になって将帥もじゃ」
「兵だけでなく」
「そちらでもですか」
「織田家はよくなっていると」
「どうも今の時点で優れた将帥が揃っておる」
 宗滴は織田家、吉法師の下のそのことも聞いていた。
「戦も政も出来るな、その戦においてもな」
「揃っていて」
「それで、ですか」
「宗滴様でもですか」
「敵いませぬか」
「そうなってな」
 そしてというのだ。
「勝てぬであろう、だから織田家とはな」
「結ぶ」
「そうすべきですか」
「そう思う、今でこそ家の格が上でじゃ」
 朝倉家も織田家も元々は斯波家の被官の立場だ、だが家の格は織田家よりも元々朝倉家の方が上であるのだ。
「石高もな」
「我等越前は八十万石です」
「織田家は尾張六十万石」
「二十万石の違いです」
「この差もありますな」
「しかしそれもな」
 石高のこともというのだ。
「やはりじゃ」
「織田家にですか」
「上にいかれますか」
「やがては」
「あの御仁が家督を継がれれば数年のうちにじゃ」
 まさにそれだけの歳月でというのだ。
「それから七年もすればじゃ」
「七年、それだけで」
「それだけの歳月で、ですか」
「織田家は当家を遥かに凌駕する家になり」
「宗滴様でもですか」
「勝てぬ様になる、当家はこれ以上に大きくなることは望まぬし」
 これは家全体の考えだ、この度当主となった義景も同じだ。 
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